韓ロ関係が1990年の国交正常化以来最悪の悪循環に陥った。国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁専門家パネルの任務延長決議案にロシアが拒否権を行使して対北朝鮮制裁に大きな穴を開けたことを受け、韓国政府がロシアの機関と船舶に対する独自制裁に踏み切ると、今度はロシア政府が反発した。
タス通信の報道によると、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は3日(現地時間)の記者会見で、「韓国政府がロシア市民と船舶、機関を一方的に制裁したことは非友好的な措置」だとしたうえで、「非常に遺憾だ」と述べた。ザハロワ報道官はさらに「今回の措置は韓国とロシアの両国関係に否定的な影響を及ぼすだろう」とし、ロシアもこれに相応する対応を取ると警告した。
韓ロ関係は2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻後、米国が主導する対ロシア国際制裁に韓国が参加したことを受け、ロシアが韓国を「非友好国」に指定したことで悪化し始めた。韓国はウクライナに砲弾を迂回的に供与しているという疑惑を持たれており、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は昨年7月、直接ウクライナを訪問し「必生即死、必死即生(死ぬ気になれば必ず生き残るという意味で、戦争などにおいて決然とした意志を示す)の精神で連帯して戦う」と公言した。韓米日が昨年8月の3カ国首脳会談で、共同声明「キャンプデービッドの精神」を発表し、戦略的連携を強化したことを受け、9月には北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長がロシアを訪問してウラジーミル・プーチン大統領と首脳会談を行い、ロシアとの軍事協力と全面的な密着を進めている。
昨年12月、韓国政府が米国の対ロシア輸出統制措置に歩調を合わせ、「第33次戦略物資輸出入告示」の改正案を行政予告したことに対し、ロシアは「韓国が西側の違法な反ロ制裁に参加した」として強く反発した。その後、ロシアは今年1月初め、ウラジオストクで韓国人宣教師のP氏をスパイ容疑で逮捕し拘禁した。
先月28日、国連安保理の対北朝鮮制裁専門家パネルの任期延長決議案の表決で、ロシアが拒否権を行使したのは、北朝鮮とロシアの軍事協力に対する監視を弱めると同時に、北朝鮮の核保有を事実上黙認する方向に進もうとする動きとみられている。韓ロ関係にとっては大きな悪材料にならざるを得ない。
2日、韓国政府は情報技術(IT)関連の人材など北朝鮮労働者のロシアへの送出に関与したと疑われるロシア機関2カ所と個人2人、また北朝鮮とロシア間の軍需物資の運送に関与したと疑われるロシア船舶2隻を独自制裁すると発表した。韓国がロシアの船舶や機関、個人を相手に独自制裁に乗り出したのは初めて。
韓国外交部は、この制裁がロシアの違法な武器取引に対する対北朝鮮制裁の一環として行われたもので、「ロシアに対する制裁ではない」と強調している。外交部のイム・スソク報道官は4日、「われわれは北朝鮮とロシアの違法な協力に厳しく対処する中で、韓ロ関係の管理のためにも積極的に努力している」とし、「ロシアも適切な努力を傾けるよう求める」と述べた。
一方、安保理の対北朝鮮制裁決議に違反したと疑われる無国籍船舶を韓国の海洋警察が拿捕し、「韓米協力で」調査中であることが分かった。先月30日、全羅南道麗水(ヨス)付近の海上で、海洋警察が対北朝鮮制裁違反に関与したと疑われる3000トン級の貨物船を拿捕した。同貨物船は先月末、北朝鮮の南浦(ナムポ)港を出発し、中国山東省石島を経て、ロシアのウラジオストクに向かう途中だったという。韓国政府は、同貨物船が制裁違反に関与した疑いがあるという情報を米国から提供されたという。現在釜山(プサン)港に停泊中の同貨物船に対する調査も「韓米協力のもと」で進められているという。同船舶の調査の結果、北朝鮮とロシアの間に国連安保理の対北朝鮮制裁に違反する取引があったという情況が出れば、韓ロ関係にさらなる悪材料が加わる可能性がある。