米国の電気自動車(EV)メーカーであるテスラの今年第1四半期(1~3月)の車両引渡し台数が前年比8.5%減少したと集計された。2020年の新型コロナウイルスの開始時に小幅に減少したことを除けば、引き渡し量が減少したのは今回が初めてで、EV市場の大衆化を牽引したテスラの市場主導権が弱まったシグナルという解釈が出ている。
テスラは2日に発表した報告書で、今年第1四半期の1~3月にテスラの車が38万7千台引き渡されたと明らかにした。これは昨年同期(42万3千台)より8.5%減少した数値で、2022年第3四半期以降最も少ない引き渡し規模だった。テスラは主力の「モデル3」の一部変更により、カリフォルニア州フリーモント工場の稼動速度が遅くなったことが部分的に影響を及ぼしたと明らかにした。また、紅海で起きたイエメンの反政府武装組織フーシ派による船舶攻撃で迂回航路を利用することになり、部品が不足したうえに、今月初めにドイツ・ベルリンのギガファクトリー付近で送電塔火災が発生し、工場を稼動させられなかった点にも言及した。
しかしニューヨークタイムズは、テスラの製品群が多様性に欠け、2020年以降に発売した唯一の新モデルである「サイバートラック」の場合も最低8万ドルからの価格であり、消費者が気軽に購入することは難しいという点を指摘した。テスラは早ければ2025年末頃に低価格型自動車の新モデル(コード名レッドウッド)を発売する計画だ。また、ウォール・ストリート・ジャーナルは昨年第4四半期(10~12月)に世界のEV販売1位を記録した中国のEVメーカー比亜迪(BYD)も、今年第1四半期の車両引渡し台数が直前四半期に比べ42%も急減した点に言及し、「EV業界の成長が鈍化し、消費者のEV選好が予想より少ないことが確認され、企業の投資計画も再調整されている」と指摘した。
一方、テスラの最高経営者(CEO)であるイーロン・マスク氏の発する極端な発言と陰謀論が、EV購入の可能性が高い進歩性向の顧客まで遠ざけているという指摘もある。米国カリフォルニア州に住むラファエル・カーセンスさんはニューヨークタイムズに、最近テスラの「モデルY」からBMWの「i4」に自家用車を替えた理由の一つは「マスク氏だ」と指摘し、テスラのサービスの貧弱さに言及し、「会社の態度は確実にオーナーを反映している」と述べた。