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[朴露子の韓国、内と外]韓国の強硬右派が敗北するしかない理由

登録:2024-03-27 19:40 修正:2024-03-28 08:13
イラストレーション:キム・デジュン//ハンギョレ新聞社

 ドイツとフランスの最近の政党支持率を見ると、歴史を勉強する人間として驚愕を禁じ得ない。ドイツの社民党は1863年に創立されたという長い歴史を持ち、1969年には政権を握り東方政策を展開して冷戦終息に大きな役割を果たしたまさにその政党だ。しかし輝かしい過去を持つこの社民党の現在の支持率は約15~16%で、極右「ドイツのための選択肢」(AfD)の支持率(19~20%)にも及ばない。フランスの場合、極右の国民連合の現在の支持率(29%)は、やはり長い歴史を誇るフランスの社会党(10%)と共産党(3%)の支持率を合わせた数の2倍にもなる。極右がこの両国でこれほど左派を抑えたのは戦後の歴史で初めてだ。

 2008年の世界恐慌以後の時期は「強硬保守の時代」と呼べるほどに各種の極右政党、運動、団体の躍進が目立つ。世界体制の準周辺部も同様だ。強硬右派のインドのモディ、ロシアのプーチン、トルコのエルドアンなどが長期政権体制を構築した。世界体制の中心でも極右の躍進傾向は例外ではない。米国の「トランプ現象」は最も悪名高いが、欧州の多くの国でも極右の人気は爆発的だ。私たちにとって「スウェーデンモデル」は社民主義政治と福祉などを意味するが、保守層連立内閣が治める現在のスウェーデンでは、ネオナチ系列の「最悪の極右」であるスウェーデン民主党が20~21%の支持を得ている。欧州では珍しくいまも中立を守るオーストリアでは、本来ナチス親衛隊出身が建てたオーストリア自由党が現在約28~30%の支持を得ている。米国のみならず欧州の各国で大小のトランプが次第に頭角を現しているのだ。

 ところが、欧米圏の左派にとって大きな問題になるのは極右派の躍進そのものだけではない。さらに大きな問題は、大概の極右派政党が他でもないかつて左派の基盤、すなわち労働者の支持を、ますます多く得ているという事実だ。フランス国民連合は新しい労働者政党として知られるほどに労働者が最も多く投票する党だ。ドイツの場合、すでに4年前にブランデンブルク州議会選挙で44%もの労働者の有権者が「ドイツのための選択肢」に投票した。大企業の高熟練、高賃金、正規職労働者は依然として伝統的穏健左派政党に投票しているが、小企業であるほど、低賃金であるほど、非正規職であるほど、労働者が極右政党を支持しているということだ。

 極右政党が「新しい労働党」の役割を担うことになるこの悲劇的で憂慮すべき現象は、最近の世界体制の歴史をその基盤としている。2008年まで続いた新自由主義的グローバル化の流れの中で、大概の穏健左派政党は非正規職の量産や工場移転による産業空洞化のような一連の新自由主義政策を支持したり、少なくとも積極的に阻止しはしなかった。新自由主義的グローバル化は、安定した職場と持ち家住宅を保有する一部の公共部門ないし大企業の正規職にとっては安い輸入品など一定の恩恵を意味することができたが、労働階級の弱者層にとっては不安増大と家賃の高騰、生計困難などを意味した。

 2008年以後、グローバル化がその終焉を迎え「国家主権の回復」が再び時代的な話題に浮上した時は、労働界の多くのグローバル化被害者は「移民制限」と共にダイレクトに「主権」と「国民経済」、「国民共同体」を強調する極右に簡単に転じた。さらにこの極右が、少なくとも欧州では、もはや福祉費用の削減を主張せず、むしろ「国民共同体のための適正水準の福祉」を掲げるに至ったため、労働階級の弱者層を十分に吸収できた。結局、新自由主義的グローバル化の流れにその運命を任せた既存の穏健左派の相当部分は、グローバル化とともに致命的な危機を迎えることになったのだ。

 しかし一つ注目に値する事実は、まさに韓国の強硬右派と欧米圏の強硬右派の間には、きわめて可視的な「違い」があるということだ。後者の場合には反移民感情の訴え以外に非常に大きな役割をするのがまさに「主権」の強調だ。例えば「ドイツのための選択肢」は、4年前にトランプ大統領の在独米軍の部分撤収決定を両手を挙げて歓迎した。米軍基地のないドイツこそ主権あるドイツという論理だった。現実的に実現可能な公約なのかは疑問だが、フランスの国民連合はフランスをNATO(北大西洋条約機構)の統合指揮体制から撤収させることを望むと主張している。欧州の状況と分断国家である韓国の状況とは根本的に異なり、単純比較はできないが、こうした欧州強硬右派の指向を現在政権を握っている韓国の強硬右派からは全く見いだせない。韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、その逆に韓国の主権行使の幅を縮小させている。

 社会・経済的次元でも同じだ。欧州の極右ポピュリストたちは移民者を排除した「国民共同体」を前面に掲げるが、この共同体の内部結束のためには公共部門と再分配が必要だという点を十分に認知している。代表的なものとして、フランスで「最高人気政党」になった国民連合は福祉支出の増額を主張している。ノルウェーのような場合には、2013~2021年に極右進歩党が参加した連立右派内閣が統治したが、その間に国民総生産に対する福祉支出はむしろ23%から30%に跳ね上がった。これとは対照的に、尹錫悦政権はその出発から高齢者療養施設の拡充事業、子どもリハビリ病院建設、保育園拡充、青少年学校暴力予防などの福祉予算を大幅に削減した。「躍進する」欧州の強硬保守とは全く違う方向に向かっているのだ。

 「国民共同体」や「主権回復」を目指す強硬右派に向かう熱気は、欧州では今後もしばらく冷めそうにないが、主権や共同体に関心がなく、もっぱら金持ち減税だけに血眼になっている尹錫悦政権は果たして有権者の支持を得られるだろうか。上流層と中上位層以外は眼中に置かない韓国的な「エリート型強硬右派」の今後の政治的未来は、それほど明るくないというのが私の予想だ。ごく少数のための政治は結局必然的に破産するということが、これまで私たちが世界史から得た教訓だ。

//ハンギョレ新聞社
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov)オスロ国立大教授・韓国学 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1133997.html韓国語原文入力:2024-03-27 16:07
訳J.S

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