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「加害者に殺されるくらいなら闘い続ける」犯罪被害者が国家賠償請求訴訟=韓国

登録:2024-03-22 07:25 修正:2024-03-22 10:05
「釜山西面回し蹴り殺人未遂」事件の被害者Aさんが昨年3月3日午後、ソウル江南区駅三洞のカフェで、事件当時の状況などを説明している=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 「犯罪の被害者が少なくとも国から保護されていると少しでも感じられるように、犯罪被害者の権利が保障されればと思います。加害者に殺されるくらいなら後悔しないように闘います。まだ死んでいないんだから」

 帰宅途中の20代の女性に性的暴行を加えるために無差別に暴行し殺害しようとした、いわゆる「釜山(プサン)回し蹴り事件」の被害者Aさんが21日、国を相手取って損害賠償請求訴訟を起こした。ずさんな捜査などに対する国の責任を問うものだ。

被害者の権利を強めるための訴訟

 21日午後、民主社会のための弁護士会(民弁)女性人権委員会の「釜山回し蹴り事件国家賠償代理人団」は、ソウル瑞草区(ソチョグ)に位置する民弁の大会議室で記者会見を行い、「Aさんが犯罪被害者の権利強化のために国家賠償請求訴訟を起こす」と明らかにした。

 Aさんは昨年5月22日未明、帰宅途中、性的暴行を目的に10分あまり自分を追いかけてきた犯人から、釜山鎮区西面(プサンジング・ソミョン)のオフィステルの共同玄関で無差別暴行を受けた。Aさんは事件のショックで解離性健忘、16週間以上の治療が必要な外傷性頭蓋内出血を起こすとともに、足首より下のまひという障害が残った。

 Aさんはこの日、「手抜き捜査、裁判からの排除など、司法システムから被害を受けた」と提訴理由を語った。この日、映像でメッセージを寄せたAさんは「(警察が)現場の写真をきちんと撮らなかったこと、目撃者の陳述を黙殺したこと、(性犯罪を示す)加害者の携帯電話のフォレンジック結果を確認しながら軽くやりごしたことなど」について問題提起しつつ、「私が記憶を失ったものだから加害者の言ったことがすべて真実になった」と述べた。そして「性暴力事件の裁判ではなかったので非公開で裁判を受ける権利もなく、傍聴者として加害者の顔を目の前で見なければならなかった」と付け加えた。

 当初、殺人未遂容疑でのみ起訴され一審で懲役12年を言い渡されたL容疑者は、Aさんが着ていたズボンからL容疑者のDNAが検出されるなど、後になって証拠が明らかになり、昨年9月に強姦・殺人未遂で最高裁で懲役20年が確定している。

「加害者の報復の脅しを国があおった」

 代理人団は「この事件で捜査機関は法律上、客観的な証拠を収集する権限と責任を持っているにもかかわらず、性的暴行の疑われる情況をすべて無視し、きちんと調査しなかった」とし、「捜査の密行性ばかりを強調し、被害者と情報も何ら共有せず、証拠確保も放棄した」と指摘した。

 被害者の裁判参加の機会と知る権利が奪われたとも指摘された。民弁女性人権委員会のオ・ヒョンヒ委員長は「被害者は事件の捜査記録を見たいとして閲覧・謄写を3回も申請したがすべて拒絶され、結局は民事訴訟を通じて迂回的に証拠を見なければならなかった」とし、「その過程で被害者の個人情報が明らかになった。これは加害者による報復をちらつかせた脅威へとつながった」と指摘した。

 代理人団は、被害者が事件記録を確認できるようにするために事件記録の閲覧謄写請求権を法律に明記するよう求めるとともに、被害者を募って憲法訴願を起こすことも検討中だと明かした。

チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1133299.html韓国語原文入力:2024-03-21 16:20
訳D.K

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