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「カリスマをまとった韓国の財閥3・4世…経営実績もなく血筋だけ」

登録:2024-03-22 06:46 修正:2024-03-22 08:45
昨年末「ミーム」になったサムスン電子のイ・ジェヨン会長の表情=オンラインコミュニティより//ハンギョレ新聞社

 米テスラ社の最高経営者(CEO)イーロン・マスク氏に対する評価は両極端に分かれる。彼に熱狂する人たちは、彼が現実世界へのトニー・スターク(映画『アイアンマン』の主人公)だと称える。先端技術を開発するスーパーヒーローを越えて、世界を救ってくれるという信念までにじませる。一方、マスク氏を嫌う人たちは、自分勝手で、ぶっきらぼうなナルシストだと、彼を酷評する。

 政治学や心理学において、カリスマとは不思議と人の心をつかんで従わせる能力を指す。「カリスマCEO」に対する分析と研究の中で、興味深い結論を要約すれば、大体次のようなものだ。「人々はカリスマCEOが好きだ。だが、カリスマCEOは意外と短所が多い」。カリスマ溢れる財閥のトップが企業と経済に相当な影響を及ぼす韓国の現実を考えると、「カリスマCEO」に対する議論は必要だ。

■ 彼らには人とは違うオーラがある?

 好きか嫌いかにかかわらず、財閥グループは韓国経済で占める割合が非常に高く、その財閥グループを牛耳る存在がまさにトップだ。現在は創業主の3~4世たちがCEOになっている。彼らは会社を設立しておらず、起業家精神があるわけでもなく、経験が豊富でもない。しかも、激しい競争を経てCEOの座に伸し上がったわけではない。彼らが最高の地位に就くためには、厳格な評価などの手続きは別にしても、正当化できる論理は必要だ。

 ここで登場するのがカリスマだ。お世辞ではない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が財閥トップたちと釜山(プサン)でトッポッキを食べたエピソードを見てみよう。尹大統領は忙しい会長たちを政治的行事に動員したと激しく批判されたが、サムスンのイ・ジェヨン会長は「しっ」という滑稽な表情のミームが拡散し、おでん屋の前には「イ・ジェヨン会長が立っていたところ」という表示も登場した。この些細なこのエピソードから、イ会長に人とは違うカリスマがあると考える大衆の心理がうかがえる。サムスン関係者たちが「わが会長」に対する評価をする時、他のことはともかく、「オーラ」は確実にあるという話をたびたび聞く。すなわち財閥3~4世の(地位を)正当化する根底にはカリスマがあるというのが関係者たちの言葉だ。

 カリスマCEOは果たして企業の業績を改善するだろうか。「当たり前だろう」と考える人が多いかもしれないが、様々な研究の結論は「断定するのは難しい」だ。このような結論について様々な解釈があるが、その中で代表的なのはカリスマのタイプによって実績改善の可能性が影響を受けるという解釈だ。過去の経営実績と華やかなキャリアなど客観的に観察できる事実に基づいて形成されたカリスマと、客観化されず漠然とした心理や期待を背景にしたカリスマはその結果も異なる可能性がある。

 漠然とした心理や期待に基づいたカリスマとは何だろうか。代表的なのが、自分が考えているカリスマの典型と相手が似ていれば、その相手にカリスマがあると信じてしまう場合だ。財閥のオーナー一家がメディアへの登場を極度に避けるなど神秘主義を貫けば、なぜか貴族のように見えてカリスマがあると思うのがこのような場合に当たる。財閥の3~4世トップたちのカリスマには客観的実体があるだろうか。過去の経営実績はない。実績があっても失敗が多く、創業者の故チョン・ジュヨン現代グループ会長の苦難、逆境、失敗とは比べ物にならない。高速昇進をしても、それを3~4世の能力だと考える人はほとんどいない。結局、カリスマの根源は財閥家という血筋に基づいたレガシーだけだ。創業者のカリスマと3~4世のカリスマはその種類が違う。後者のカリスマが実績改善に肯定的な影響を及ぼすとは期待し難いだろう。

創業期を過ぎて成熟段階に入った財閥グループのほとんどは創業主の3~4世が率いている。写真は昨年末、尹大統領が釜山訪問の際、財閥トップらと一緒にトッポッキを食べる姿。右下は新世界グループのチョン・ヨンジン会長がインスタグラムに載せた写真//ハンギョレ新聞社

■ 創業者とは異なる3~4世のカリスマ・リーダーシップの危険性

 問題はここにとどまらない。まず、会社の経営が危機に陥れば、間違いなくカリスマCEOを求める声が高まる。財閥でいえば、カリスマ3~4世が会長の座に就くチャンスが生まれる。危機の時に現れた最高経営者は、組織を揺さぶるものだ。最近会長に就任した新世界グループのチョン・ヨンジン会長を見てみよう。本人が副会長だった5年間と10年間、イーマートの株価はそれぞれ59%、70%も下落した。会長の資質が疑われる人が流通産業の危機を機に会長に押し上げられたわけだが、彼の第一声は役員らに対する「信賞必罰」(功績があれば必ず賞を与え、罪があれば必ず罰すること)だった。自分には寛大で他人には厳しい態度であり、権限と責任の不一致でもある。

 二番目の問題点として、カリスマCEOは実績と関係なく莫大な報酬を受け取る。先日、元株主との訴訟で敗訴し、約560億ドル規模の株式補償をする危機に瀕したイーロン・マスク氏の事例が興味深い。株主が彼の報酬があまりにも多いと主張したことに対し、マスク側は莫大な規模の補償を論拠の一つとしてマスク氏がスーパースターであるためだと反論した。露骨にカリスマに対する補償を求めたのだ。

 財閥の3~4世たちは典型的にカリスマに対する補償を受ける人たちだ。カリスマのある人がCEOを務めるべきだとし、超高速で会長の座までたどり着き、職級ごとに報酬を押し上げる。全知全能のスーパーマンであるかのように、複数の系列会社で役員を兼職し、報酬を重複受領する人もいる。

 三番目の問題として、カリスマCEOには大衆の関心を追い求め、会社内部に留まらない傾向がある。他の組織の仕事を受け持ったり、どこかで講演をしたりもする。最近は職務以外のことといえば、断然ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)だ。SNSを通じてあらゆることに口を出すのがイーロン・マスク氏だ。韓国ではチョン・ヨンジン会長がこのようなタイプに当てはまる。もちろん個人的あるいは社会的活動そのものが問題であるわけではない。それが行き過ぎて本業がおろそかになる時に問題が生じる。

 四番目の問題は、カリスマCEOに対する外部の評価は概して肯定的だが、問題は評価の正確性が劣るという点だ。アナリストがカリスマCEOに注目し、会社の成長可能性を肯定的に評価して投資を勧誘したものの、会社の実績が期待に及ばなかった事例は少なくない。

 カリスマに対して情報と解釈能力が足りない非専門家はもちろん、資本市場の専門家までカリスマを過大評価し、このような評価に期待して誤った予測を出したりするという意味だ。このようなカリスマCEOに対する外部の評価とこれに基づいた生半可な予測が、財閥問題を深刻にさせる主なチャンネルの一つだ。専門家集団のほう一般国民よりむしろ財閥トップのカリスマを称賛する場合が多い。実際にそう考えているのか、それとも隠された事業的利害関係のためなのかは明らかでないが。

 研究結果ではないが、私が懸念する2つのことに触れることで、この文を締めくくりたいと思う。財閥の3~4世たちはそれなりに自分のロールモデルを作ろうと努力する。それはスティーブ・ジョブズ氏かもしれないし、イーロン・マスク氏かもしれない。どちらも個性的な性格で有名だが、いずれにせよ、彼らは技術で世の中に大きな変化をもたらした。カリスマの実体がそれなりにはっきりしている。何かを成し遂げたことがあるため、同僚や役員、社員に苛酷でも、SNSで自己顕示欲を満たしても、喧嘩を売ると騒いでも、大目に見てもらえるところはある。一方、成し遂げたものもなくCEOの座に座ってしまった財閥の3~4世が、役員や社員に苛酷で、自己顕示欲の塊で、喧嘩を売ったりすると、問題が複雑になる。会社に危険を高めるだけだ。

 備わっていないカリスマを無理に作り出す過程でも副作用が生じる。彼らがカリスマを作り出すためには、内部を引き締めるしかない。強力な人事権と報酬の統制権は彼らの武器だ。これは不思議と人の心をつかむカリスマではなく、ただの鉄拳統治に過ぎない。退歩的な支配構造の典型でもある。これを破る財閥の3~4世がいれば、私は彼をカリスマCEOとして認める。その人は会社の戦略と文化を変えたリーダーだからだ。

※ 参考文献

Tosi, Henry L., et al.「カリスマCEO、補償と会社実績」The Leadership Quarterly 15.3 (2004)。

Malmendier, Ulrike, and Geoffrey Tate. 「スーパースターCEO」 The Quarterly Journal of Economics 124.4 (2009):

Khurana, Rakesh.「スーパースターCEOの呪い」Harvard business review 80.9 (2002): 60-6.

Jacquart, Philippe, and John Antonakis. 「カリスマはいつ重要か?」 Academy of Management Journal 58.4 (2015)

イ・チャンミン|漢陽大学教授(経営学)(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/1133201.html韓国語原文入力:2024-03-21 10:36
訳H.J

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