本文に移動

「男が育児休職取るのか」非難、人事の不利益…父親の育児休職を妨げる社会=韓国

登録:2024-03-07 11:20 修正:2024-03-07 11:31
ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 「男が育児休暇とは何事だ」

 慶尚南道地域のある製造業会社に勤めるCさん(41)は、入社11年目だった2019年に育児休職を申請したところ、会社の役員からこう叱責された。いきなり罵倒する役員もいた。Cさんが通う会社は全役員10人中9人が男性で、「女は子どもを産んだら家にいるもんだ」という言葉が何のとがめもなく飛び交う職場だった。

 Cさんの育児休職の申請は「退職まで覚悟」してのことだった。「娘が小学校に入学したばかりの頃でした。子どもが一日中トイレにも行けずに帰ってきたんです。学校という慣れない環境で、心理的に萎縮してうまく適応できないようでした」。 妻は職場で代替人員を探すのが難しく、比較的ましな状況だったCさんが休職することにした。

 Cさんは、適当に3カ月くらい病気休暇を使えという会社側の要求を拒否し、“幸いにも”4カ月半ほどの育児休職を使うことができた。内心「6カ月はほしい」と思ったが、復帰後の業務に支障が生じるのではないかと思い、この程度で自ら妥協した。Cさんは「長い期間ではなかったけれど、父親と一緒に毎日学校に登校することで、子どもも安定を取り戻した」と話した。

 軽くなった気持ちで会社に復帰したが、Cさんに向けられた視線は厳しかった。Cさんがようやく最初の育児休職を使って以降、3人がその後に続いたが、そのたびにCさんの名前が挙がった。「解雇すべきだ」「人事上の不利益を与えるべきだ」という言葉が育児休職者に向けて直接・間接的に浴びせられた。

 Cさんの事例に見られるように、「育児休職の使用自体に対する否定的な認識」は男性の育児休職使用を妨げる主な要因の一つだ。「国際女性デー」を迎え、ハンギョレと全国民主労働組合総連盟(民主労総)女性委員会が、育児休職を使った男性労働者1720人を対象に1月16日から2月3日にかけて行ったアンケート調査で、「(自分の会社は)男性であれ女性であれ、いつでも自由に育児休職を申請できる雰囲気だ」と答えた人は29.0%のみ。残りの回答者は「育児休職の使用自体に対する否定的な認識」(22.5%)と、このような認識に起因する「人事考課、昇進など職場で発生する不利益に対する懸念」(27.4%)のせいで「育児休職申請が可能だとしても、負担を感じたり顔色を伺ったりする」と答えた。

 幼稚園児の息子を育てるPさん(37)は、このような不利益を心配して育児休職をあきらめた。Pさんは病院の事務職として働いているが、この病院は露骨に「育児休職を使えなくする」雰囲気だという。「飲み会が多い職場なんですが、仕事が終わった後に子どもの面倒を見なきゃならないからといって4年間飲み会に行かなかったところ、職場の人たちに『お前だけが子育てしてると思ってるのか』と非難されたんです。女性たちも復帰しにくいのに、男性である私が育児休職を申請して攻撃の的になることはできませんでした」。Pさんは「万が一、育児休職を使わせてくれないといって地方雇用労働庁に申告でもしたら、すぐに業界でアウトになって就職も阻まれる」と話した。

 実際、今回の調査に回答した男性の10人中6人は育児休職後の復帰でもっとも大変なこととして「不利益」を挙げた。最も多い33.3%が「考課・昇進など職場内の競争力が弱まること」を挙げ、続いて「ポスト維持および異動配置の心配」(20.9%)という回答が多かった。「辞職勧告および構造調整の優先順位(に対する懸念)」(4.9%)という回答まで含めれば59%にのぼる。

 回答者たちは、男性の育児休職を活性化するための優先課題(複数回答)として「男女が共に育児を分担するという職場構成員の認識の変化」(71.2%)がなされるべきだという点と共に、「昇進、解雇など人事上の不利益と差別の禁止」(70.5%)がなされるべきという点を最も多く挙げた。

 アンケートを分析した民主労働研究院のチョン・ギョンユン研究委員は「このような結果は、育児休職を理由とする解雇および不利な処遇の禁止を規定した男女雇用平等法が作動していないことを意味する」とし、「普遍的権利として育児休職制度が施行されるには、雇用保護や差別禁止などが必須」だと述べた。

オ・セジン、チャン・スギョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1131233.html韓国語原文入力:2024-03-07 09:41
訳C.M

関連記事