政府は医師団体の関係者を告発しつつも、医療界が要求してきた「医療事故処理特例法」の制定を急いでいる。政府は、自ら提示した専攻医復帰の最終ラインである29日を前に、強硬策と懐柔策を同時に駆使している。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は27日に行われた「中央地方協力会議」で、「医学部定員2千人増員は国の憲法的責務を果たすための最小限の必須措置」だとし、「交渉や妥協の対象とはなり得ない」と述べた。従来の方針を再確認するとともに、政府は専攻医の復帰を求めた。チョ・ギュホン保健福祉部長官はこの日、「3月からは未復帰者に対する免許停止処分と、それに関する司法手続きを進めることが不可避」だとし、「29日までに復帰することを改めて要請する」と述べた。
福祉部はこの日、大韓医師協会の関係者を警察に告発した。政府の業務開始命令に対する違反(医療法違反)または刑法上の業務妨害罪に当たる専攻医の集団行動を教唆・ほう助したとの理由によるもの。また、レジデント課程に合格しても病院との契約を放棄している4700人あまりの専攻医に対して「診療維持命令」を下した。インターン終了後、レジデント課程に合格して病院と労働契約を結ぼうとしていた専攻医らが対象だ。従わなかった場合は、既存の「業務開始命令」と同様に最大1年の医師免許停止処分が科されうる。
前日の午後7時現在、辞表を提出した専攻医は99の研修病院の9909人で、このうち8939人が医療現場を離脱している。福祉部のパク・ミンス第2次官は「一部の病院ではかなり復帰している」と述べた。一方、ある大学病院の関係者は「復帰したとは聞いたことがない」とし、「残りの医療スタッフは業務過重で苦しんでいる」と語った。政府の度重なる警告にもかかわらず、専攻医の集団行動に大きな変化はない。
またチョ長官は「特例法を制定して責任・総合保険と控除に加入した医療スタッフに対して刑事処罰特例を適用する」と述べた。医師団体が要求してきた一部の事項を受け入れることで、専攻医の復帰のための大義名分づくりをしていると解釈される。一方、患者諸団体は「医療事故の立証責任を被害者・遺族が負わなければならない制度の改善が先」だとして反発した。
医療の空白は拡大している。がんや移植の手術などの難しい医療行為が可能な上級総合病院(15病院)は、集団行動以降、新規患者の入院は24%、手術は約50%減少している。ただし福祉部は「減少はすべて中等症(重症と軽症の中間)または軽症の患者」だと述べた。
いっぽう福祉部は、医師の集団行動の過程で患者が救急室を見つけられずにさまよう「救急室たらい回し」事故などに直ちに対応できるよう、27日に「即時対応チーム」を設置した。被害が発生した場合は、地方自治体が中心となって健康保険審査評価院、健康保険公団、消防庁、救急医療センター、警察などと事実関係を確認する計画だ。