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医師保険に入ると患者に重傷負わせても処罰免れる?…議論呼ぶ韓国政府の「宥和策」

登録:2024-02-28 06:44 修正:2024-02-28 07:04
27日午後、釜山のある大型病院の様子/聯合ニュース

 韓国政府が「医療事故処理特例法」の制定を急ぐとして、29日に関連公聴会を開くことを予告した。同法は、医療事故に対する医療関係者の法的負担を減らすため医師団体がこれまで粘り強く要求してきた。集団行動中の専攻医や医師団体のための「アメ」といえる。一方、患者団体は、患者が死亡した医療事故まで刑を減免する可能性があるとして反発している。

 27日、保健福祉部によると、医療事故処理特例法は責任保険、控除や総合保険・控除に加入した医療スタッフが医療行為の過程で過失によって患者に傷害を与えた場合、刑事処罰の負担を減らすことを主な内容としている。交通事故の際、運転者が被害を補償できる保険に加入すれば、死亡事故・ひき逃げのような重過失事故を除き刑事処罰を免れる交通事故処理特例法と似ている。

 これまで大韓医師協会(医協)などの医師団体は、必須医療の回復のために特例法の制定が必要だと主張してきた。2017年12月、ソウルの梨大木洞病院で新生児4人が菌感染で死亡し、医療スタッフ7人が業務上過失致死の疑いで起訴されたが後に無罪判決を受けるなど、必須医療分野の医師に対する告訴・告発が多く、彼らが必須医療を放棄する原因になっているということだ。福祉部のパク・ミンス第2次官は「政策的に(医療スタッフに対する)セーフティネットを設定しなければ、必須医療分野に医療スタッフが残らないだろう」と同意を示した。

 医師団体が提起し続けてきた主張を政府が速やかに受け入れるということは、医師団体に差し出す「宥和策」ともいえる。望む政策を現実化することで、専攻医が医療現場に戻ってくる名目を立てるということだ。

 政府の意志通り特例法が制定された場合、責任保険・控除に加入した医療関係者が医療過失で患者に傷害を負わせても、患者が処罰を望まなければ、捜査機関が業務上過失致傷、重過失致傷の疑いで公訴できないようになる。また、医療関係者が責任保険・控除と総合保険・控除の両方に加入していた場合、患者が医療過失で傷害を負ったと主張しても公訴を提起できなくなる。特に、救急患者に対する医療行為や重症疾患、分娩のような必須医療行為の場合、重傷を負っても公訴が不可能になる。ただし、患者の死亡時には公訴が可能だが、刑は減免される。

 医療関係者がこのような特例を受けるためには、韓国医療紛争調停仲裁院(仲裁院)の調停・仲裁手続きを経なければならない。仲裁院は被害者の被害規模を鑑定して医療スタッフの賠償額を提示し、責任保険が事故類型ごとに定められた限度分の賠償額を負担する。政府は必須医療分野の医療スタッフや専攻医に対して責任保険の保険料を支援する計画だ。

 しかし、医協非常対策委員会が特例法の一部内容に対して反発しており、対立局面を打開する突破口になりうるかは不透明だ。大韓医師協会のチュ・スホ非常対策委広報委員長はハンギョレに「必須医療分野での故意・重過失を除いた医療事故は、民事賠償の主体が医師個人ではなく国家、国民健康保険公団にならなければならない」と述べた。

 患者団体は、医療事故に遭った患者が今よりさらに不利な状況に置かれる可能性があると懸念を示した。韓国がん患者権益協議会のキム・ソンジュ代表は「現在も患者が犠牲になっているのに、政府が患者をまた犠牲にして医師に『アメと鞭』のような取引をしようとする行動は納得できない」と語った。さらに「医療事故で今も医療スタッフの責任を立証するのが難しいのに、これを緩和すれば立証問題、補償体系などが患者にとって望まない方向に進む可能性が高い」とも話した。

チョン・ホソン、キム・ユンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1130124.html韓国語原文入力:2024-02-27 22:56
訳H.J

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