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[寄稿]日本・米国で梅毒患者急増…この菌はいったいどこから来たのだろうか

登録:2024-02-14 06:42 修正:2024-02-14 07:11
約1600年前にブラジル東部海岸に住んでいた人類のDNAから分析した梅毒菌のゲノムとデータベースに登録の梅毒菌のゲノム98種類を比較分析した結果、梅毒菌の3亜種は約1万年前に共通の祖先から分化したことが判明した=ネイチャー提供//ハンギョレ新聞社

 音楽家のシューベルト、画家のマネ、哲学者のニーチェ…

 各分野で偉大な業績を残した彼らの共通点は何だろうか。梅毒にかかり、苦しんだ末に死を迎えたという点だ。シューベルトは梅毒の治療中に水銀中毒によってわずか31歳で死に、マネは51歳で合併症で脚を切断する手術を受けた後、死亡した。ニーチェは神経系が損傷し、精神錯乱によって10年あまりを精神病院で過ごし、56歳で死去した(梅毒ではなく脳腫瘍という主張もある)。

 梅毒は梅毒菌というバクテリアが引き起こす感染病で、彼らが生きた時代にはしばしば致命的だったが、20世紀中頃に抗生物質が登場すると、急激に減少した。しかし最近、梅毒が再流行しているというニュースが各地から聞こえる。昨年末に日本当局は、梅毒患者が2021年の7978人から2023年には約1万7000人と2倍以上増えると予想した。米国では、先天性梅毒(妊婦から胎児に感染する)の新生児がわずか10年で11倍以上増加した。

 韓国も今年から梅毒を4級法定感染病から3級に引き上げ、全数監視体制に入った。3級に格上げされたことによって、医療機関は梅毒を診断した場合は疾病管理庁に申告し、梅毒患者に対する疫学調査がなされる。この1カ月間で200件ほどの梅毒診断が報告された。

 人類史の観点からは、梅毒は15世紀末に旧大陸の人々に踏みにじられた新大陸の人々の唯一の復讐(もちろん意図したことではなかったが)とみなすこともできる。インカ帝国の風土病だった梅毒が、コロンブス探検隊を通じて欧州に渡り、わずか数十年間でアジアとアフリカにまで広がり、数百年の間に多くの人が犠牲となった。ならば、梅毒はいつから人類を苦しめ始めたのだろうか。

 先月、学術誌「ネイチャー」は、約1600年前の人骨から梅毒菌のゲノムを解読して分析した論文をサイトに公開した。ブラジルのサンタカタリーナ州の海岸遺跡であるジャブティカベイラIIで発掘された人骨の中から、かなりの数の骨膜炎などの梅毒の症状の跡がみられた。スイスのチューリッヒ大学をはじめとする多国籍の共同研究者は、骨の試料からDNAを抽出して梅毒菌を分析した結果、4つの試料で存在を確認した。これらすべては、非性病性の梅毒であるベジェル(bejel)を引き起こす梅毒菌の亜種であるエンデミクム(endemicum)だった。ちなみに、私たちがよく知っている性病性の梅毒を起こす亜種はパリドゥム(Pallidum)だ。

 このうちの1つの試料からは、エンデミクムのゲノムの99%を解読し、研究者は既知の98種類のゲノムのDNA塩基配列データと比較した。その結果、現在存在する梅毒菌の亜種の3種は、約1万年前に共通の祖先から分化したことが分かった。つまり、すでに数千年前に新大陸の人々は地域によって異なるタイプの梅毒にかかっており、それぞれ別の経路で旧大陸に伝播したことを意味する。

 ただし、今回の研究だけでは、そもそも梅毒菌がどのようにして人に伝わったのかは分からない。1万5000~2万3000年前に新大陸に進出した人々が、現地の動物から梅毒菌の共通の祖先に感染した後に分散して生活し、梅毒菌の亜種に分化したというシナリオと、すでに亜種に分化した状態の梅毒菌を各地域で個別に動物から感染したというシナリオがある。後続のゲノム研究が、梅毒菌の進化の歴史を明快に再構成することを期待する。

//ハンギョレ新聞社

カン・ソッキ|科学コラムニスト (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1128168.html韓国語原文入力:2024-02-13 18:53
訳M.S

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