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「ロンドン・アイ」夢見て…韓国全土が「大観覧車の墓場」に?

登録:2023-12-01 08:34 修正:2023-12-01 09:39
忠清南道唐津にある挿橋湖大観覧車。最近のレトロブームで、ここで「人生ショット」を撮るのがMZ世代の間ではやり、人気の観光地となっている=唐津市提供//ハンギョレ新聞社

 韓国の全国各地で大観覧車の設置ブームが起きている。江原道束草(ソクチョ)、慶尚南道泗川(サチョン)などの一部地域の大観覧車がレトロブームの中で大きな人気を集めたことで、「商売になる」という認識が地方自治体の間に広がったからだ。だが、2010年代に突然の人気に便乗して全国各地にかけられた「つり橋」のように、時間がたつと訪れる人が減って収益が悪化し、厄介者へと転落してしまう恐れがあると懸念されてもいる。

■忠清、嶺南、江原に続き首都圏でも「ブーム」

 最近の大観覧車ブームをさらに熱くしたのは忠清南道唐津(タンジン)の挿橋湖(サプキョホ)大観覧車だ。1993年の大田(テジョン)万博の際に設置されたもので、8年前に「くず鉄価格」で売られ、挿橋湖に移設されたこの大観覧車は最近、「人生ショット(人生で最高の写真)」を撮りたいMZ世代の間で「田んぼビュー大観覧車」、「インスタホットプレイス」として話題になり、人気の観光地となった。昨年の忠清南道地域のナビゲーション検索データ1位となるなど、年間500万人が訪れている。

 このように大観覧車が人気を集めたことで、追随する自治体も増えている。忠清南道保寧市(ポリョンシ)は、元山島(ウォンサンド)への大観覧車の設置を推進している。205億ウォン(約23億4000万円)の民間資本を誘致し、高さ84メートルもの大観覧車を設置する計画だ。忠清北道堤川市(チェチョンシ)は200億ウォン(約22億8000万円)をかけて清風湖(チョンプンホ)を望む高さ65メートルの大観覧車を、世宗市(セジョンシ)はチェ・ミンホ市長の公約である錦江(クムガン)の河原への大観覧車設置を推進している。

忠清南道唐津にある挿橋湖大観覧車。最近のレトロブームで、ここで「人生ショット」を撮るのがMZ世代の間ではやり、人気の観光地となっている=唐津市提供//ハンギョレ新聞社

 嶺南(ヨンナム・慶尚道)と江原地域でも急速な動きが見られる。大邱市達城郡(テグシ・タルソングン)は花園(ファウォン)観光地内に100億ウォン(約11億4000万円)ほどをかけて高さ100メートル規模の大観覧車の建設を推進している。年間利用客は18万人ほどで、年間19億ウォン(約2億1700万円)の収益を見込んでいる。慶尚北道盈徳郡(ヨンドックン)も500億ウォン(約57億円)の民間資本の投入により、高さ140メートル規模の大観覧車の設置を目指している。盈徳郡の関係者は「年間75万人を超える観光客の流入により、1304億ウォン(約149億円)の経済的波及効果、515人の雇用誘発効果が見込める」と述べる。江原道春川市(チュンチョンシ)も衣岩湖(ウィアムホ)の湖畔に200億ウォン以上の民間資本を投入し、高さ110メートル規模の大観覧車を設置する計画がある。

 首都圏も例外ではない。ソウル麻浦区上岩洞(マポグ・サンアムドン)に大観覧車「ソウルリング」を設置する事業は、今年9月に企画財政部の民間投資事業審議委員会を通過するなど、急ピッチで進んでいる。「ソウルリング」はハヌル公園の2万平方メートルの敷地に4000億ウォン(約456億円)の事業費を投入する民間投資事業で、2025年の着工、2027年末の完成を目標としている。ソウル市は年間350万人以上の利用を期待している。仁川(インチョン)経済自由区域庁も昨年1月、松島(ソンド)6・8工区開発の青写真を公開した際に、仁川大橋が望める海辺に大観覧車などを備えた都心型テーマパークを建設する計画を発表している。

ソウル市が進めている大観覧車「ソウルリング」のイメージ=ソウル市提供//ハンギョレ新聞社

■撤去の危機に直面する「束草アイ」

 しかし、多くの自治体が急速に大観覧車の設置に動いていることは、後遺症も大きい。束草市(ソクチョシ)は、地域の名物となっていた大観覧車「束草アイ」を撤去しなければならなくなっている。行政安全部が実施した特別監察で違法事項が摘発されたことを受け、束草市が11月16日に束草アイに対する許可を取り消すと共に、大観覧車解体命令などの原状回復措置を取ると発表したのだ。行安部は監察で、レクリエーション施設を設置できない自然緑地地域に束草アイが設置されているなど、多数の違法行為があると指摘した。しかし束草アイ設置に92億ウォン(約10億5000万円)を投じた民間事業者が適法な手続きを経て推進したとして法的対応を予告するなど、紛争が続いている。

 ソウル市が推進するソウルリングをめぐっては、市議会で税の無駄使いなどを懸念する声が強い。ソウル市議会のチェ・ジェラン議員は「民間資本4000億ウォンを誘致して建てると言っていたソウルリングに、ソウル住宅都市公社が1000億ウォン(約114億円)以上を投資することが明らかになった。公社はソウル市民の税金で設立された公企業だが、民間資本だけが投入されるかのように市民をだまそうとしている」と批判している。

 全羅南道麗水市(ヨスシ)でも、小美山(ソミサン)の頂上に540億ウォン(約61億6000万円)をかけて高さ82メートルの大観覧車を設置する事業が推進されたが、地域住民らが小美山の破壊と景観の私有化などを理由として強く反対したため、中断されている。

慶尚北道と盈徳郡、民間業者が2021年1月、盈徳郡庁で「盈徳大観覧車(盈徳アイ)投資誘致業務協約」を結んでいる=盈徳郡提供//ハンギョレ新聞社

■資金の回収だけで数十年…「地域の負の遺産」になる恐れも

 雨後のたけのこのように建てられようとしている大観覧車の経済性を懸念する声も高まっている。匿名の大観覧車業界の関係者は「今も全国で30基ほどの大小の大観覧車が営業中だが、まともに収益を上げているところはあまりない。大観覧車そのものが、短期間では収益を上げられない構造だ。投資を回収するには数十年かかる。各自治体は『キラーコンテンツ』だとして流行のように作っているが、果たして冷徹に経済性分析をおこなったのかは疑問」と指摘した。

 春川市民社会団体ネットワークのオ・ドンチョル運営委員長は「以前は城南(ソンナム)の希望大公園、仁川の松島遊園地などにも大観覧車があったが、今はすべてなくなっている。春川のある遊園地にも大観覧車が設置されているが、今は運行しておらず止まっている。むやみな大観覧車設置は第2のつり橋やロープウェイとなりうる。地域のランドマークになるほど巨大な施設だが、人気が衰えて廃業すればむしろ負の遺産となりうる」との懸念を示した。

パク・スヒョク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/area_general/1118468.html韓国語原文入力:2023-11-30 06:00
訳D.K

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