口座に数百億ウォンがあるかのように銀行の残高証明書を偽造した疑いで起訴された尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の義母、チェ・ウンスン氏(76)が、最高裁で上告を棄却され、懲役1年が確定した。尹大統領はかつてこの事件の捜査について「義母は詐欺にあったことはあっても、誰かを10ウォンたりとも被害にあわせたことはない」として、「悔しい」との趣旨の主張をしていた。野党「共に民主党」は尹大統領の謝罪を要求した。
最高裁3部(主審:イ・ホング判事)は16日、通帳残高証明書偽造など(私文書偽造など)で懲役1年を言い渡され拘束されていた尹大統領の義母のチェ氏の上告を棄却し、懲役1年を言い渡した原判決を確定した。チェ氏は京畿道城南市中院区島村洞(ソンナムシ・チュンウォング・トチョンドン)の土地の購入を考えていた2013年4月から10月にかけて、4回にわたって計349億ウォン(約40億円)ほどが貯蓄銀行に預けられているかのように残高証明書を偽造した疑いで起訴された。チェ氏は2013年8月に起こした島村洞の土地に関する契約金の返還請求訴訟で、計349億ウォンの偽造残高証明書のうち、4月1日に偽造した「100億ウォンの残高証明書」を同業者のA氏と共に裁判所に提出した偽造私文書行使の容疑も受けている。
また、2013年10月に島村洞の不動産を買った際に、持分の半分は会社名義で、残りの半分はA氏の婿名義で所有権移転登記をおこなった不動産実名法違反容疑も受けている。
一・二審はいずれもチェ氏を有罪と認め、懲役1年を宣告している。下級審は、チェ氏が借名取引で40億ウォンで購入した島村洞の不動産が130億ウォンで売却されたことを指摘しつつ、「相当な差益」を得たと判断している。
二審は「チェ氏はこれまで事業を営む過程で、この事件のように自らの利益を追求することに傾倒するあまり、法と制度、人をすべて手段化し、軽視してきたのではないかと非常に憂慮される」とし、「犯行を正当化するには、犯した違法行為の程度や、それによって得た利益の規模が大きすぎる」と指摘してもいる。
一審で拘束を免れたチェ氏は、7月の二審で「罪が非常に悪質で、逃走の恐れもある」との理由で、法廷で拘束された。チェ氏は先月15日に最高裁に保釈を請求したが、刑が確定したことで収監生活を続けることとなった。
最高裁は「原審の判断には、自由心証主義の限界を逸脱する、あるいは法理を誤解するなどによって判決に影響を及ぼした誤りはない」と述べた。
検察がチェ氏を「縮小起訴」したという疑惑も依然として残っている。チェ氏は残高証明書を4回偽造した疑いで起訴されたが、偽造私文書行使容疑は4枚の偽造証明書のうち裁判所に提出された1枚に対してのみ適用された。いっぽう同業者のA氏には、裁判所に提出された1枚以外の偽造証明書を個人事業者に2回行使したという容疑がさらに適用された。A氏を審理した一審の法廷も昨年2月の公判で、偽造私文書行使容疑について「チェ氏を起訴対象から除外したことには多少疑問がある」と述べている。
尹大統領は先の大統領選挙の際、複数の対立候補にこれらの疑惑を指摘され、「義母はむしろ50億ウォンほど詐欺にあった。事前に検事である婿に相談していたら詐欺にあうことはなかった」と述べてチェ氏をかばっている。
共に民主党はこの日発表した論評で、「候補時代に尹大統領は義母のチェ氏について『10ウォンたりとも被害にあわせたことがない方』であり、『詐欺にあった被害者』だと叫んで回っていた」、「今も義母には一点の誤りもないと考えるのか。義母の有罪判決確定について、国民の前で謝罪せよ」と述べた。