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ワシントン宣言は韓米同盟ではなく韓米不信の産物

登録:2023-05-03 04:17 修正:2023-05-08 00:51
尹錫悦大統領と米国のバイデン大統領が4月26日午後(現地時間)、ホワイトハウスで共同記者会見に先立ち握手を交わしている=ワシントン/ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 「ワシントン宣言は1953年の通常兵器を基盤とした相互防衛条約から、核を含む韓米相互防衛条約へとアップグレードされたもの」

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は4月28日(現地時間)、ハーバード・ケネディ・スクールでこう語った。尹大統領は2日の国務会議で「同盟は核を基盤とする新たなパラダイムへとアップグレードされた」と重ねて強調し、イ・ジョンソプ国防長官らは「ワシントン宣言は第2の韓米相互防衛条約」だと自賛した。

 しかしこのような主張は、誇大広告どころか虚偽広告に近い。

 まずワシントン宣言は「第2の韓米相互防衛条約」ではない。法的拘束力のないワシントン宣言を、韓米両国において国内法と同じ効力と国際法的拘束力を持つ相互防衛条約と比べるのは、ひいき目に見ても政治的レトリックに過ぎない。

 しかも韓米同盟は、昔から米国の拡大抑止公約という「核抑止」を含む同盟だ。最近の例では、2021年と2022年の5月の韓米首脳会談の共同声明だけを見ても、「バイデン大統領は米国の拡大抑止公約を確認した」という文言が繰り返し明示されている。

 実は、ワシントン宣言は韓米の公式の説明とは異なり、「同盟の信頼」ではなく「同盟の不信」を動力とした文書だ。米国の拡大抑止公約に対する尹錫悦政権の疑念、「独自の核も保有しうる」と述べる尹大統領(1月11日の外交・国防部の業務報告での締めの発言)に対する米国の不信がそれだ。

 政府がワシントン宣言の肝としてあげたのは、核協議グループ(NCG)の設立▽米国の戦略原子力潜水艦の韓国「寄港」(目的地ではなく港にしばらく立ち寄る)だ。会談前に政府が期待水準を目いっぱい引き上げた「核共有」ではないだけでなく、既存の「拡大抑止」と質的に変わらない。対して米国は、尹大統領から核拡散防止条約(NPT)と韓米原子力協定上の義務の順守という「独自の核武装の放棄」および「原子力の平和利用の範囲の制限」公約を取り付けた。NPTの順守は、再確認する必要すらない国際社会に対する大韓民国の約束だ。

 要するにワシントン宣言は「同盟不信」が生んだ同語反復宣言だ。韓米同盟に長きにわたり深くかかわってきたあるベテラン政治家は「当然のことを文書で明示するほど、最近の韓米は相手に対する不信が深いという証拠」だと指摘した。

 ならば「不信」が深い方が先に動いたはずだ。「(ワシントン宣言という)特別な文書を作ろうというのは米国側のアイデア」とのチョ・テヨン国家安保室長の1日の発言は、示唆するところが大きい。複数の元政府関係者が「バイデン大統領が尹大統領から『核武装の放棄』の確約を取り付けたというのが、ワシントン宣言の隠された本質」だと指摘した理由がここにある。

//ハンギョレ新聞社

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1090246.html韓国語原文入力:2023-05-02 16:21
訳D.K

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