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韓米「核の傘」の強化進める…核共有の前例なく「美辞麗句」で終わる見通し

登録:2023-04-25 05:26 修正:2023-04-25 07:47
米国を国賓訪問する尹錫悦大統領が24日、城南ソウル空港に到着し、空軍1号機に向かっている。尹大統領はジョー・バイデン米大統領の招待で同日から5泊7日の日程で米国を国賓訪問する/聯合ニュース

 24日出国した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の5泊7日間の訪米の焦点は、北朝鮮の核・ミサイル脅威に対抗した韓米の拡大抑止の強化だと大統領室は説明している。特に両国は、拡大抑止の実行力を高める案を共同文書に盛り込む見通しだが、韓国が米国の核運用過程にどれだけ関与できるかがカギとなる。しかし、核兵器の使用に関する最終決定権は米国の大統領が独占しており、同盟国と共有した事例がないため、「美辞麗句」で終わる可能性もあるとみられている。

 韓国政府と政界の説明によると、韓米は26日(現地時間)の首脳会談において北朝鮮の核の脅威に対応した拡大抑止強化案に関し実質的な対策が盛り込まれた特別文書を採択する案について議論している。特に両国は、韓国領土が北朝鮮から核攻撃を受けた場合、米国が核で対応する「韓国型核の傘」を文書に明示するという。ある与党関係者は「北朝鮮が核攻撃を行った場合、企画段階から韓米が共に判断して共同対応するという特別文書を発表する」とし、「NATO(北大西洋条約機構)よりさらに強いレベルになるだろう」と述べた。

 核の傘は、韓国が核攻撃を受けた場合、米国が核兵器で北朝鮮を焦土化するという概念だが、このような内容は朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代の1978年7月に開かれた第11回定例安保協議会(韓米国防相会議)の共同声明で初めて示された。米国はその後、2005年まで毎年開催された安保協議会で、核の傘の確約を繰り返した。

 2006年10月、北朝鮮の1回目の核実験後に開かれた定例安保協議会で、韓国がより強力な米国のコミットメントを要求し、「拡大抑止」という用語が初めて登場した。包括的かつ政治的概念である核の傘を軍事戦略的側面から具体化した拡大抑止は、核兵器(核の傘)だけでなく、通常兵器、ミサイル防衛能力などあらゆるカテゴリーの軍事能力を含む。延世大学統一研究院のキム・ジョンデ客員教授(元正義党議員)は「韓国領土が攻撃されれば核で報復するという内容、すなわち核の傘は、朴正煕政権時代からあった内容」だとし、「新たに合意したかのように見えるかもしれないが、実は同じ内容を違う言葉でを語っているだけ」だと指摘した。

 米国の度重なる確約にもかかわらず、韓国国内で「核の傘や拡大抑止はリップサービスに過ぎないのでは」という疑問の声が上がっているのは、米国が言葉ではなく行動で示した前例がないからだ。また、朝鮮半島有事の際、核兵器を使用する決定を下す場合、韓国政府と協議する公式的な手続きと制度もない。制度化された拡大抑止に進むためには、核関連情報を韓米が共有し、米国の核使用の企画と実行段階から韓国が参加しなければならないという要求が続いたのもそのためだ。

 共同企画は北朝鮮の核使用状況に備えた抑止戦略と作戦計画の発展に両国が共に参加するという意味だ。ただし、その参加のレベルは韓米首脳会談の結果を見守らなければならない。参加のレベルが「単なる意見の提出」から「制度的協議の枠組み」づくりまでさまざまであるうえ、米国がこれまで核兵器使用の最終決定権を同盟国と共有した事例がないためだ。

 米国の核兵器を共有する事例としてよく言及されるNATOの核共有方式も、米国がNATO同盟国に戦術核に対する所有権、決定権、拒否権を与えているわけではない。米国が欧州に配備した核兵器の統制、運営とメンテナンスのすべてを担当し、 NATO空軍機は目標地点に核を投下するといった内容だ。NATO式の核共有は核兵器を共有するのではなく、核抑止の任務とそれに伴う政治的責任などを共有することだ。

 韓米首脳会談で論議される拡大抑止に関する内容は、独自の核兵器開発、戦術核再配備の要求のような韓国内世論をなだめるためのものといえる。米国は独自の核兵器開発、戦術核再配備には反対しているが、韓国の国民感情と韓国政府の立場を考慮し、これを公の場では表明していない。

シン・ヒョンチョル、ソ・ヨンジ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1089214.html韓国語原文入力:2023-04-25 02:43
訳H.J

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