「(尹錫悦大統領の発言は)到底受け入れられない。厳重な憂慮と強烈な不満を提起する」
米中戦略競争の「最前線」である台湾問題について、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が19日のロイター通信とのインタビューで、「力による現状変更に反対する」、「(この問題は)北朝鮮問題のように地域の次元を越えた世界的な問題だ」と述べた発言に対し、中国は4日間にわたって強い反発を示している。
中国官営メディア「韓国外交の国格は粉々に」
中国外務省は23日午前1時27分ごろ、ウェブサイトに資料を発表し、韓国の指導者の台湾問題についての誤った発言に対して、孫衛東外務次官が「命令を受けて」20日にチョン・ジェホ在中韓国大使に厳重に抗議したと明らかにした。「命令を受けて(奉命)」という表現によって、この抗議が中国共産党上層部の指示によるものであることを明確にした。
中国は、尹大統領の発言が公開された当日の20日には、「他人の口出しは許さない。一つの中国の原則を順守し、台湾問題を慎重に処理してほしい」(汪文斌外務省報道官)と不満をあらわにしており、21日には尹大統領や韓国を名指ししてはいないものの、「火遊びをする者は必ず焼け死ぬだろう」(秦剛外相)と、より強硬な発言を行っている。これに加えて異例の時間帯にさらに資料を発表し、重ねて不満を表明したのだ。
「グローバル・タイムズ」などの中国官営メディアも「韓国外交の国格が粉々になった」という社説をウェブサイトの最上段に載せ、「台湾問題に対する韓国の誤った認識がこれほどだったとは知らなかった」と指摘した。
中国が韓国に対して鋭い批判を繰り返すのは、26日の韓米首脳会談を控えた敏感な状況で飛び出した尹大統領の発言が、台湾問題について中国の引いた「レッドライン」を越えたと判断したためとみられる。大きく2つの問題が指摘できる。
尹大統領の「台湾発言」、禁止線を越える挑発と判断
まず、「外交の門外漢」である尹大統領の発言そのものが極めて乱暴なものだったということ。中国が極めて敏感に反応する台湾について、韓国が公式文書で初めて言及したのは、2021年5月の韓米首脳会談の時だった。当時の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は米国のジョー・バイデン大統領との共同声明で「台湾海峡における平和と安定の維持の重要性を強調した」と述べた。台湾問題を重視する米国に配慮した選択だったが、直ちにチェ・ジョンゴン外交部第1次官(当時)らが「一般論的な文章を盛り込んだもの」とし、中国の不満をあらかじめ封じこめようと努めた。しかし、今回は尹大統領が自ら、当時よりはるかに強い「力による現状変更に反対する」という表現を初めて使った。
中国の神経をさらに逆なでしたのは、中国にとって絶対に譲歩しえない「最重要利益」だと考えている台湾問題を北朝鮮に例えたことだ。尹大統領は1992年の韓中国交正常化の基本前提である「一つの中国」原則を否定しているという誤解を招きうる、危険千万な発言だった。米日首脳は台湾問題について中国を強くけん制しはするものの、余計な誤解を避けるために、自分たちが「一つの中国」原則を尊重していることをまず初めに表明する。中国外務省は23日の資料でこの問題に直に触れ、「韓国の指導者は一つの中国原則について何一つ言及していない」と批判した。
しかし、中国が異例の怒りを相次いで表明している根本的な原因は、尹錫悦政権発足後、ますます明らかになりつつある米国偏向外交のせいだとみられる。文在寅政権時代に韓中関係を安定させた対中「3不政策」(THAAD追加配備を行わない、米国のミサイル防衛システムに参加しない、韓米日軍事同盟は結ばない)はすでに形骸化して久しい。韓米日は14日、米ワシントンで防衛実務者協議(DTT)を開催し、ミサイル防衛訓練と対潜水艦戦訓練を定例化した。韓国政府はさらに、今回の韓米首脳会談を通じて、韓米日の情報共有システムの拡大・強化あるいは新たな体系を作るとの構想を示唆している。
尹政権のこのような動きがどこへ向かうかは明らかだ。冷戦解体からのこの30年あまりの間、韓国が享受してきた繁栄の土台となった「米中バランス外交」の廃棄と「韓米日3カ国同盟」による中国封鎖だ。北京のある中国人消息筋は「中国はこの発言を見て、韓国がさらに米国側に立ったものと受け止めている」とし「まもなく行われる韓米首脳会談の結果を見守ったうえで、具体的な対応を取るだろう」と述べた。