韓国の裁判所が、事実婚の同性カップルの配偶者を国民健康保険法上の被扶養者に認定し、同性カップルの社会保障制度上の権利を初めて認めたことについて、性的マイノリティの人々は「人生が変わるかもしれないという期待を持てた」と口をそろえた。
これらの人々が今回の判決で特に注目した点は、事実婚の同性カップルに社会保険の恩恵を提供しないことを、裁判所が「差別」と判断したことだ。これまで裁判を傍聴して今回の訴訟に関心を持って見守ってきたレズビアンのAさん(29)は22日、「2回目の弁論期日に『事実婚の異性カップルと同性カップルは本質が違う』という国民健康保険公団側の関係者の話を聞いて悲しくなり腹が立ったが、これを差別だとみなした裁判所の判決を聞いて、社会が本当に暖かく感じられた」と語った。また、別の性的マイノリティのBさん(29)さんも「性的マイノリティの活動家として働いてきて、これ以上闘う力がないと感じて活動をやめたが、このように誰かが闘って世の中が変わる場面をみるとまた闘う力が出てくる」と語った。
パートナーのいる性的マイノリティの期待はさらに大きかった。同性パートナーと恋愛中で8年目となるCさん(38)は、「パートナーは演劇をしているが、事実上給与がない。(同性カップルの被扶養者登録が可能になれば)今回の判決が私たち(カップル)をさらに結びつけてくれると思う」と明らかにした。
性的マイノリティの人々は、同性カップルの権利保障が別の領域にも拡大することを願った。Cさんは「現時点では同性婚は法制化されていないが、社会が少しずつ変わっているという希望を持てるようになった」として、「性的マイノリティのカップルが家族と認定されず、病院で保護者としての署名ができないことも改善されるよう望んでいる」とした。レズビアンのDさん(24)も「異性夫婦が受けられる社内福祉を(事実婚の)同性カップルも要請できるかもしれないと考えた。年末精算の人的控除などの税金の恩恵や、(不動産の新規分譲の)請約など、国が異性夫婦を対象とするその他の支援事業も同性カップルに適用してほしい」と語った。
裁判所が「同性結合」という表現を使うなど、同性カップルの事実婚関係は認めなかったことについては残念だという声も出てきた。Bさんは「性的マイノリティの友人たちや私のパートナーはほとんどが(判決を)喜んで歓迎したが、制度的に同性婚が認められない状況なのに、記事では『同性夫婦』と表現されるのはむしろ希望拷問だと考える友人もいた」と伝えた。
一方、国家人権委員会はこの日声明を出し、「今回の判決を通じて、韓国社会が性的マイノリティに対する偏見と差別があってはならないことを再度確認することになったことを、喜ばしい気持ちで歓迎する」と明らかにした。ただし人権委員会は「2021年12月に、性的マイノリティに対する偏見と差別を乗り越え、多様な家族の形態と家族に対する認識の変化を受け入れ、『健康家庭基本法』の改正などを行うことを国会議長に勧告したが、本格的な議論に至っておらず遺憾に思う」とも明らかにした。