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[レビュー]韓国社会に関する総合健康診断

登録:2023-01-28 04:16 修正:2023-01-28 09:16
//ハンギョレ新聞社

 一時期「目覚めてみれば先進国」という言葉がはやった。驚くべき経済成長と韓流ブームに寄りかかって今日の韓国社会を自己診断した結果だった。実際に、数値だけを見れば先進国だと大言壮語しても大きな問題はないはずだ。だが一皮むいて韓国社会の中身を見れば、「韓国スゴイ」とはやり言葉で言っていて満足できるわけではないということに、すぐに同意することになる。チョ・ヒョングンの『キーワードで読み解く不平等社会』は、韓国社会を精密に健康診断してみたら、世評とは違って非常に懸念すべき状況だという診断を下す。

 7つの章からなる本書の1章のタイトルは「不平等が広がる社会」だ。両極化現象は世界レベルで起きている。「公正な機会の下で誠実に労働した対価として階層上昇が実現し、ぶ厚い中産層中心の社会が形成された」体制は、保守革命で崩壊した。公共資産の民営化、資産価格の上昇、税制改編などで資本家階級の富は急速に増えた。労働者階層を象徴するキーワードは「プレカリアート」だ。これは「職業の安定性がほとんど、または全くないため生活が不安定な人々の階級」を意味する。

 トマ・ピケティのおかげで広く知られるようになったが、いま世界は資産の不平等が深刻化している。ピケティの指数であるβ値(資本/所得)が大きいほど、相続の価値の方が現在の労働のそれより強いことを意味する。韓国銀行が推定した2019年のβ値は8.6だった。ある研究によると、2020年には11.4だ。1995年が5.8、2010年が7.5だったので、韓国社会の資産の不平等は悪化し続けていることが分かる。著者は政府の純資産が多いこと、国民所得に比べて土地資産の価格の比率が高いことがその原因だと指摘する。国は裕福で、不動産の不平等は激しいということだ。

 解決方法はどのようなものがあるだろうか。著者は一言で政治だと言う。米国でβ値が下がったのは、1935年に社会保障法を制定し、1944年に20万ドルを超える所得に94%の税を課したおかげだ。以後、米国をはじめとする西欧が資本主義の黄金期を迎えたことは周知の事実だ。政治の介入によって資産の不平等が緩和されるとすれば、経済成長が実現するもう一つの例として著者は農地改革をあげる。北朝鮮が1946年に無償没収・無償分配の農地改革を断行したことで、韓国も取り組まざるを得なくなった。有償没収・有償分配方式で実施され、朝鮮戦争直前に完了した。この措置は戦争中に占領地で北朝鮮軍が基層農民の支持を得られなかった決定的な理由となり、インフレが深刻化したことで地主の土地買い戻しが不可能になった。農民に資産が形成されると「安定感と希望、意欲」が生じ、農業の生産性が向上し教育熱が高まった。その結果として、農地改革に成功した台湾や日本と共に、韓国は急速な経済成長を遂げた。一方、失敗した南ベトナムとフィリピンはアジアの龍にはなれなかった。

 「不平等な先進国」である韓国の社会が解決すべき難題として、著者は非正規労働、労災、賃貸住宅、最低賃金、差別禁止法、難民問題などをあげる。「不平等を拡大する利潤の論理、弱肉強食の欲望」が生んだこの地獄道から抜け出す道はあるのだろうか。著者は、弱者同士の争いから抜け出し、連帯し協力する時にのみそれが可能になると力を込めて語りかける。

イ・グォヌ/図書評論家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1077163.html韓国語原文入力:2023-01-27 05:00
訳D.K

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