18日、国家保安法違反の疑いで民主労総本部を国家情報院とともに家宅捜索した警察が、その翌日、労働組合の建設現場の違法行為を捜査するとして、民主労総と韓国労総の建設労組事務室など34カ所に対する同時多発的な家宅捜査を行った。労働界は、政府が昨年の貨物連帯ストライキに続き建設労組を狙うなど本格的な「労組叩き」に乗り出したと反発した。
ソウル警察庁の強力犯罪捜査隊は、19日午前8時10分から9時間にわたり、民主労総全国建設労組ソウル京畿北部建設支部と傘下の西南・西北・東南東北地域の事務室5カ所と、昨年韓国労総から除名された建設産業労組地域支部事務室3カ所、そして韓国労総傘下の韓国連合建設産業労働組合事務室に捜査官を送り、家宅捜索を行った。
この他に建設連帯、民主連合、産業人労組、全国連合現場、全国建設労組連合など5つの群小労働組合の事務室5カ所と、労組関係者の自宅など計34カ所が家宅捜索対象になった。個人の携帯電話から労組の交渉・会議・採用関連文書、上級団体とやりとりした文書など、労組活動と関連したすべての資料が押収の対象になった。警察は「携帯電話22点を含む電子情報約1万7千点などを押収した」と明らかにした。
被疑者として立件された20人余りの労組前・現職幹部らは、2020年末から2022年初めまで新築アパートなどの建設現場で所属組合員の採用を強要し、それに応じない場合は金品を要求した容疑(暴力行為等処罰に関する法律上共同強要・共同恐喝)などがかけられている。警察は現場で建設労組が組合員の採用を要求し、これを受け入れない場合、現場で集会を開くなど実力行使をしたとみている。採用に応じない場合、会社に労組専任費を要求した行為も捜査対象だ。警察関係者は「個人の逸脱ではなく、労組レベルの違法行為なのかを調査する方針だ」と述べた。
2日連続で労組が家宅捜索を受けたことについて、労働界は激しく反発している。単純に犯罪を捜査するためではなく、労働弾圧を基調とした現政権のもとで行われた標的捜査という声もあがっている。実際、1日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が新年の辞で「労働改革」を掲げたことを受け、ハン・ドクス首相主宰で5日に開かれた国政懸案関係長官会議で建設現場の違法行為を根絶する案が議論された。
韓国労総は報道担当の記者会見で「建設労組に対する家宅捜索は、労働組合を不正を働く集団に仕立て上げ、国民的公憤を引き起こすことで、政府に向けた非難の矛先を労組に向けさせて反射利益を得ようとする意図的な行為とみられる」としたうえで、「建設現場で起きる大型再開発・再建築不正、数億ウォン台の不正請託と不法再下請けなど土着不正には目をつぶり、力の弱い労働者叩きに乗り出す政府の態度が見苦しい」と述べた。民主労総建設労組も同日、記者会見を行い、「建設労働者の雇用安定活動は労組の基本的責務であり、労組にとって必要不可欠な活動」だとし、「これを違法行為と規定して責め立てるのは、労組に対する公安弾圧」だと主張した。