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韓国政府、徴兵拒否のロシア人を「難民不認定」…「動員令が不明確な脅威?」

登録:2023-01-16 02:02 修正:2023-01-16 06:41
仁川出入国・外国人庁での難民審査を待っているロシア人のチンギスさん(24)がSNSに投稿した写真=チンギスさん提供//ハンギョレ新聞社

 「好きだった韓国にこんなふうに裏切られるとは思わなかった。強制徴集は明らかな危険ではないのか。希望が粉々に砕けた」

 仁川(インチョン)出入国・外国人庁の面会室で13日に取材に応じたロシア人のチンギスさん(25)とアルテムさん(40)は、不安な心情をあらわにした。ロシアのウクライナ侵略戦争に反対して彼らが出した難民認定申請が受け入れられなかったからだ。

 仁川出入国・外国人庁はこの日、2人に対して「迫害を受けることになるという『十分に根拠のある恐怖』に当たらない」として、不認定の決定を下した。15日に本紙が入手した2人の「難民不認定事由書」によると、当局は難民不認定の理由の一つとして「ロシアにおいて戦争に動員される可能性は低い」ということをあげている。事由書には「昨年10月28日にロシア国防省は動員令の終了を宣言しており、今後はさらなる動員は行わず志願者だけを受け入れると表明しているため、帰っても戦争に動員される可能性は薄いと考えられる」、「ロシア軍の部分動員令の徴集対象は軍への服務経験のある18~60歳の男性で、申請人は過去に軍への服務経験がないため、帰国時に戦争に動員されうるという主張は信憑性が低い」との内容が記されている。

 当局は2人に不法滞在の経歴があることと、難民申請の時期も問題視した。ロシアから留学してきたものの、戦争によって授業料を納付できなかったため昨年6月にビザが満了したチンギスさんの事由書には、「ロシア軍の部分動員令が下されたのは昨年9月であるにもかかわらず、昨年12月に強制退去命令処分を受けた後になってようやく難民申請しており、その真剣さには疑問がある」と書かれている。アルテムさんについても「2018年の入国後、韓国に4年以上不法滞在しており、これによる強制退去処分を受けた後に難民申請をしているため、真剣さには疑問がある」と記されている。

 難民人権団体は、ロシアの戦争状況に伴う危険性は明確であるにもかかわらず、当局は不適切な理由をあげて難民であることを認めなかったと指摘する。事由書を検討した難民人権センターのキム・ヨンジュ弁護士は本紙に対し、「現在、ロシアは具体的な動員令の対象者と範囲を発表しておらず、予備役でないにもかかわらず徴集されるケースが続出しているという外国メディアの報道も相次いでいる」とし、「明白な危険性が存在する状況であるため、不認定の事由として妥当ではないと思う」と述べた。英国「ガーディアン」は6日、ウクライナ軍事情報局のバディム・スキビツキー副局長の話を引用し、ロシア軍は今春から夏にかけてのウクライナ東南部地域に対する攻撃を目的として追加徴集を実施するだろうと報じている。

 またキム弁護士は「未登録滞在者の場合、身分の不安定さのせいで難民申請が難しい側面があるが、難民申請の時期を本人に不利にとらえるのは妥当ではない」と付け加えた。実際に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は2021年12月に「遅延または遅滞した難民申請そのものは、乱用的な、もしくは偽りの申請ではない」との意見を表明している。

13日にチンギスさん(25)が仁川出入国・外国人庁から受け取った「難民不認定事由書」=チンギスさん提供//ハンギョレ新聞社
コ・ビョンチャン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1075756.html韓国語原文入力:2023-01-15 16:57
訳D.K

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