続けて、ウクライナに国土の長期的な分断を意味する「朝鮮半島モデル」が適用されることはないと断言し、クリミア半島を含むウクライナ領土からのロシア軍の完全な撤退▽ウクライナ領土に対するミサイル・ドローン攻撃の中止▽特別調査委員会の稼動による戦犯の引き渡しの3大条件を提示した。
-ロシア軍が今年初めに大規模な反撃に出る可能性があるという予測が出ている。今年初めの戦況はどうなるのか。
「ロシアが約2~3回大規模な攻撃をすると予想している。それ以上攻撃を敢行する可能性は低い。ロシアはイラン製ドローンを使用してはいるが、序盤とは異なり、それほど効果的ではない。ウクライナ軍の防空網はドローン攻撃に適応し、どのように対応するか知っている。
ロシア軍は民間施設ばかりを攻撃している。彼らの主張とは違って、軍事目標に当てることができない。弾道ミサイルが不足しているからだ。特定の目標に当てるためには70個以上のロケットが必要であり、(このように大規模に発射してはじめて)効果が出る。ロシア軍は現在の水準の攻撃を続けたり、目標を正確に打撃したりできるロケットの供給を十分受けていない」
-この2カ月間、1000キロメートルにのぼる戦線で事実上ほとんど動きがない。膠着状態とみることができるのか。
「そうではない。(昨年9~11月に)ハルキウ地域のかなりの部分、そしてヘルソン地域の奪還に成功した。現在、我々にとっては『戦線安定化』が重要だ。さらなる反撃のためにより多くの砲弾・ロケットを蓄積し、兵站基地、物流供給網を実際の最前線にもっと近づけなければならない。ロシアが兵器貯蔵所と供給線を80キロ以上後方に移したため、(長距離ミサイルの確保は)非常に重要だ。現在、我々は長距離ミサイルの確保について協力国と協議している」
-戦争が10カ月以上続き、和平交渉に対するウクライナ政府の条件が一段と厳しくなった。昨年2月24日以前に状況を戻すとの条件を掲げた昨年3~4月の案(最後の交渉は昨年3月29日にイスタンブールで行われた)はもう有効ではないのか。
「もはや有効ではない。この戦争は民間人に対する戦争であり、大量虐殺だ。ロシアが我々の地で犯したすべての犯罪により、この戦争を終わらせる形は完全に変わった。もしウクライナ領土全体を解放しなかったら、我々は常にこの紛争の次の段階に直面することになるだろう。避難した市民たちが帰ってくることは不可能になる。投資を誘致できない。誰も破壊された土地に投資しないだろう。ロシアがこの戦争で敗北しなければ、彼らが犯した戦争犯罪、数千人の市民を殺害し、数千の民間インフラを破壊したことに対する処罰を受けず、賠償金も支払わないだろう」
-現実的にみてクリミア半島まで取り戻すことはできるのか。
「我々はロシアが広めた『神話』とは違うロシアを見ている。ロシア軍の戦術訓練、戦略的力量は非常に弱い。また、ロシアの士気は大きく低下した。それとは反対にウクライナ社会では『我々の領土をすべて解放しなければならない』という合意がなされた状態だ。すべての数字とデータを見て、現在『つまはじき国家』になっているロシア軍の能力を考えてみよう。彼らとは異なり、ウクライナには米国・英国・欧州連合(EU)・日本など多くの強力なパートナーがいる。戦争が6~8カ月ほど長期化するとみると、ウクライナが利用可能な資源の方がはるかに多い」
-停戦または終戦の条件は。
「この戦争を終わらせるには、3つの条件がある。(1)クリミア半島を含むウクライナ領土からロシア軍が完全に撤退し、(2)ウクライナ領土に対するミサイルおよびドローン攻撃を中止し、(3)特別調査委員会の稼動に向けての戦犯引き渡し問題について協議を始めることだ。前の2つの条件が、交渉というものを始めさせる『前提条件』だ」
-ウクライナ領土内のパトリオット防空ミサイルシステムの配備はなぜ必要なのか。パトリオットはいつ導入されるのか。
「追加の問題がなければ、配備には1カ月半から2カ月ほどかかると予想している。パトリオット配備が必要不可欠な理由は2つだ。まず、領空を完全に遮断するため。我々の協力国は当初、『(パトリオットの支援が)対立を深めるかも知れない』という懸念からかなり懐疑的だったが、哲学が変わった。ゼレンスキー大統領がよく強調するように、我々がウクライナ内でロシアを阻止して敗北させれば、この対立は地域的なものになり、ウクライナ内部に限定することができる。ロシアがこの戦争を他国に拡散させることはできない。
次に、ロシアはこの戦争で軍ではなく一般市民、主要なエネルギー基盤施設を含む民間施設に向けて戦争を繰り広げている。領空遮断を通じて、我々はロシアのミサイル、ドローン攻撃から自国を保護し、反撃により集中することができる。
そのほか、装甲車やドローン、ロケット砲のための長距離弾薬、そして通常の砲弾のさらなる能力(を高めるための方策)について、協力国と論議している。領空閉鎖は実質的にほぼ完了しており、理想的な防空網を作るのにほぼ近づいた状態だ。現在、反撃において協力国との協議は以前とは全く異なる水準にあり、我々は一部を合意する直前にある」
-現在、全面的な西側の支援が難しくなる時期が来たらどうなるのか。
「ウクライナに対する支援を拒否する憂慮は全くないと考える。我々は我々が必要とするすべての支援、むしろより多くの支援を受けられると固く信じている」
-最近、ウクライナ軍がロシア領土を攻撃したという一部の報道があった。防衛を越えてロシア領土を攻撃する計画もあるのか。
「ウクライナは公にロシア連邦の領土内で起きていることと関連はなく、責任もない。ロシアの中で起きていることは戦争の結果だ。サボタージュ(破壊行為)が増えているのであり、ロシア政府が自らの権力階級に対して統制力を失った結果だ」
-一部の外国メディアや専門家たちはウクライナが朝鮮半島の停戦モデルへと向かう可能性もあると展望している。そうなりうると思うか。
「ウクライナではそのようなモデルはありえない。戦場で誰が主導権を握っているかを考慮すれば、そのようなモデルに同意するのは愚かなことだ」
-戦争はいつ頃終わるだろうか。
「正確な日付を言えたら良いのだが。この戦争のすべての数値とデータ、状況を考慮すれば、戦争は2023年には終わると考える。今年上半期、夏が来る前か夏の間のいつかの時点でだ。我々は現在、ロシアの資源などの面で無能さが増しているのを目撃している」