韓国社会に定着していた40代の脱北女性が、死後かなりの時間がたって発見された。政府はこの女性をこれまでに5回も危機世帯と認定していた事実が明らかになった。政府が危機世帯として認知していながらも死を防げなかった「水原三母娘事件」と類似した事件が、2カ月後に再び発生したのだ。
25日の本紙の取材を総合すると、ソウル陽川区のある賃貸マンションで遺体で発見された北朝鮮離脱住民女性のKさん(49)は、2020年12月からマンション賃貸料、管理費などを22回滞納していた。1月までにマンション賃借再契約をしなければならなかったがなされておらず、賃貸住宅の所有者であるソウル住宅都市公社(SH)は2月、Kさんがこれ以上居住できないよう明け渡し訴訟を起こして勝訴した。Kさんの遺体は今月19日、強制執行をしようとアパートのドアを強制開放したSHの関係者や裁判所の執行官などが発見した。発見当時、冬服を着た状態だったため、警察はKさんが昨冬死亡したものと推定した。警察はKさんの死因と死亡時点などを確認するために、国立科学捜査研究院に解剖を依頼した状態だ。
死去したKさんは政府の死角地帯発掘システムに捉えられていたが、実際に現場の担当者たちはKさんに会うことができなかった。政府は賃借料、管理費、通信料金滞納および断電・断水など危機兆候を示す情報を収集し、危機世帯を選別する。SHは2021年3月から10回にわたり賃借料および管理費滞納を保健福祉部に通知した。以後、保健福祉部は通信料金、健康保険料も滞納したKさんを2021年5月から今年5月まで計5回にわたり危機世帯に選定し、これを統一部にも伝達した。しかし、該当地方自治体の社会福祉担当者はKさんに会うことができなかった。住民センターの関係者は「Kさんの連絡先を把握できず、郵便で福祉申請サービス案内文を発送し、5回以上直接訪問するなど、必要な措置を取った。しかし、ドアを強制的に開けるなど具体的に介入する権限はない」と説明した。
2002年に入国したKさんは、社会福祉士資格証を取得した後、2012~2017年にソウル南部ハナセンターでカウンセラーとして働いた。「定着した成功した脱北民」としてメディアで紹介されたりもした。
危機世帯と把握されていても自治体が対象者に会えず、遺体の発見が遅れた事件は、今回が初めてではない。8月にも、健康保険料を1年以上滞納していたが、住民登録上の住所と実居住地が異なるため福祉サービス案内を十分に受けられず生活苦で亡くなった「水原三母娘事件」が発生している。
政府は長期間連絡のつかない危機世帯の所在把握をする根拠を用意し、来月中に発表する予定だ。福祉部の地域福祉課関係者は「移動通信会社が保有している危機世帯の連絡先を入手できるよう、社会保障給付法施行令を改正し、所在把握ができない危機世帯は警察と協力して同行調査をするなどの根拠を含む内容が対策に加えられる予定」だと明らかにした。