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プーチンのミサイル…復讐心を込め、「冬の不安」煽るために撃った

登録:2022-10-12 08:09 修正:2022-10-12 09:38
10日(現地時間)、ウクライナの首都キーウ。救助隊員が爆発の起きた場所で子どもを避難させている=キーウ/UPI・聯合ニュース

 「クリミア半島は常にロシアの切り離せない一部だった」

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2014年3月、クリミア半島をロシアに併合する条約に署名した際に、かの地に対する限りない執着をあらわにした。4年後の2018年5月には、この地とロシア本土を直につなぐクリミア大橋の開通式に参加し、自らトラックを運転した。帝政ロシア時代から計画されてきた宿願事業を自らの手で成し遂げたことに対する大きな自負を表わしたのだ。その後、この橋はプーチン大統領のクリミア半島併合を象徴するものとなった。

ロシアのプーチン大統領が10日(現地時間)、ロシアのサンクトペテルブルクで新たに選出された高官たちとオンライン会議を行っている=サンクトペテルブルク/タス・聯合ニュース

 それだけに、8日午前にクリミア大橋で発生した爆破事件に対する対応も迅速かつ過酷にならざるを得なかった。プーチン大統領は事件発生からわずか1日で、これを「ウクライナ特殊機関のテロ行為」と断定し、翌日の10日にはウクライナ全域に約80発のミサイルを発射する報復に出た。それによって19人が死亡し、105人が負傷した。爆破から報復までわずか2日の電光石火のような動きだった。

 加えて、ロシアとクリミア半島を直に結ぶクリミア大橋(長さ19キロ)の地政学的価値は非常に高い。この橋がなければ、ロシア本土から同半島に向かうには、今回の戦争の主要激戦地だったマリウポリを通り、アゾフ海をぐるりと回り込まなければならない。今回の爆破により南部戦線を担当するロシア軍の補給に問題が生じうるとの分析が示されているのもそのためだ。プライドが傷ついたうえ、戦争遂行に必要不可欠な橋が破壊されたわけで、報復がなされるほかなかった。プーチン大統領は10日に開催されたロシア安全保障会議で、この日のウクライナ全域に対する爆撃がクリミア大橋爆破に対する報復であることを隠さなかった。

 だが、この攻撃は「個人のプライド」の回復のためだけになされたとは言えない。英国「ガーディアン」は「プーチンの大規模攻撃はロシア軍内部の批判、侵攻が失敗しているという現実、クリミア大橋の爆発で傷ついたプライドなどに対する切迫した解答だった」と指摘した。実際にロシアの強硬派は、プーチン大統領はウクライナに対してさらに果敢な攻撃を行うべきだと主張してきた。ロシア安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長はSNSで「ウクライナ政権を完全に倒すことも目標としなければならない」とし「ナチス政権(ウォロディミル・ゼレンスキー政権)が掌握している現在のウクライナは、今後もロシアにとって永久かつ直接的で明確な脅威となるだろう」と主張した。チェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長は、攻撃が行われた後、「100%満足している」とし、ゼレンスキー大統領に向けて「ロシアは本格的に始めてもいないということを警告する」と述べた。

ウクライナのゼレンスキー大統領が10日(現地時間)、ロシアによる大規模ミサイル攻撃の後、首都キーウで会議を行っている。キーウ/UPI・聯合ニュース

 「ニューヨーク・タイムズ」の分析も同様だ。同紙は「プーチンは、残忍な武力示威はウクライナと西側だけでなく自国内の観衆にとっても必要だと信じた」と報じた。モスクワ経済学・社会科学高等学院のグリゴリー・ユージン教授(政治哲学)は「ロシアの強硬派はこのような戦略を長きにわたり支持してきた」と述べており、ロシアの政治アナリスト、セルゲイ・マルコフ氏もやはり「今回の攻撃はウクライナの基盤施設に対する1次攻撃に過ぎない」とし、さらなる攻撃が必要だとの見解を明らかにしている。

 さらに、冬を前にウクライナのエネルギー関連の主要施設を破壊し、大衆の不安をあおろうとの意図も読み取れる。今回の攻撃では、ウクライナの11の主要インフラが被害を受けた。一部の地域では電気、水道、通信が断たれ、公共交通機関が止まった。3月末のロシア軍の後退以降、日常を回復してきていたキーウは、再びパニックに陥った。市民のコンスタンティン・シュトンさんは「ニューヨーク・タイムズ」に「私たちは準備ができていなかった。人々は本当に平穏を感じていた」とし「だから空襲のサイレンが鳴った時も、誰も避難所に行かなかった」と話した。

 ロシアの攻撃は欧州全域にバタフライ効果をもたらす見通しだ。ウクライナのエネルギー省は声明で「火力発電所と変電所がミサイル攻撃を受けたため、電力輸出を中止する」と発表した。ウクライナは今年末までの欧州連合(EU)に対する電力輸出で、15億ユーロ(約2兆800億ウォン)の収入を見込んでいた。電力輸入の道が閉ざされたことで、冬を控える欧州も苦境に立たされている。

チョ・ヘヨン、シン・ギソプ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1062220.html韓国語原文入力:2022-10-11 18:02
訳D.K

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