「洛東江辺(ナクトンガンビョン)殺人事件」の犯人とされ21年間の屈辱の獄中生活を送った冤罪被害者と家族に対し、国が合計約72億ウォン(約7億3000万円)の賠償金を支払うよう命じる判決が出た。
ソウル中央地方裁判所民事合意23部(キム・ドンビン裁判長)が、チャン・ドンイク氏とチェ・インチョル氏および2人の家族が国家を相手取って起こした損害賠償訴訟で、原告一部勝訴の判決を下したことが29日明らかになった。この判決が確定すれば、国はチャン氏に約19億ウォン(約1億9000万円)、チェ氏に約18億ウォン(約1億8000万円)、家族14人に1人あたり4000万~6億5000万ウォン(約400万~6600万円)、合計約72億ウォンを賠償しなければならない。
裁判部は「チャン氏とチェ氏だけでなくその家族も、チャン氏とチェ氏の長期拘禁による経済的苦痛と“強盗強姦殺人犯の家族”という汚名などにより、甚大な精神的苦痛を受けた」としたうえで、「国家はこの事件の不法行為によって原告らが受けた損害を賠償する義務がある」と判示した。
洛東江辺殺人事件は、1990年1月4日、釜山(プサン)の洛東江辺で車に乗ってデートをしていた男女が怪しい男に拉致され、女性は性的暴行された後殺害され、男性は傷害を負った事件だ。警察は、チャン氏とチェ氏を不法逮捕・拘禁し、水拷問など苛酷な行為を行い偽りの陳述を要求した。結局2人は起訴された後、無期懲役を宣告され、約21年間服役し、2013年に出所した。当時この事件は、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が弁護を引き受けた。
チェ氏の妻の兄弟も「チェ氏夫婦は事件当日、自分の家にいた」と証言すると、偽証の容疑で84日間拘束捜査され、懲役刑の執行猶予を宣告された後、釈放された。チェ氏の配偶者も偽証教唆の容疑で1カ月間拘束された後、執行猶予で釈放された。
チャン氏とチェ氏は昨年、再審で31年ぶりに無罪を宣告された。チャン氏の妻の兄弟と配偶者も今年7月、再審で無罪を宣告された。警察庁は「当時は適法の手続きと人権中心の捜査原則を守ることができなかった点を非常に恥ずかしく思い、これによって大きな傷を与えてしまった点を深く反省する」と公式に謝罪した。