「記者と検事は真実を追い求め、現場を重視し、公正さと正義にすべてをかけます。記者や検事が権力に屈服すれば正義が死を迎え、力のない国民は萎縮します」。国民の力のユン・ソクヨル大統領選候補が14日、寛勲討論会で述べた言葉だ。
検事は公益の代表者だ。共同体を代表して、他の人を処罰し、審判する。検事生活が長くなると、自分が公権力だと勘違いしやすい。記者は政治家を検証して批判する。記者生活が長くなると、自分が政治家よりも影響力のある存在だと勘違いしやすい。
他人を批判して審判する者たちには「業」(カルマ)が溜まる。検事や記者としての経歴が長い人の政治家への転身が危険なのもそのためだ。
妻のキム・ゴンヒ氏の疑惑に対するユン・ソクヨル候補の態度が物議を醸している。今月17日、一応包括的に謝罪したものの、強気の姿勢を崩していない。その理由は何だろうか。
今月17日の謝罪の核心は、「理由の如何を問わず、経歴の記載が正確でなく、物議を醸したことだけでも私が強調してきた公正さと常識に合致しない。過去に私が持っていた一貫した原則と基準、それは私や家族、周りの人たちにも同じく適用されなければならない」ということだ。ユン候補は19日、記者団に対しても「民主党の主張は事実と異なる偽りも多いため、皆さんがよく判断してほしい」とし、「いちいち答えるつもりはない」と述べた。
実際、与党の共に民主党と議員たちが持ち上げている疑惑には、誤った内容も多い。ユン候補の妻のキム・ゴンヒ氏や国民の力の選挙対策委員会が説明し、対応すれば済むことだ。だが、与党の主張には事実も多い。認めるべきことは認め、謝罪しなければならない。ところが、ユン候補はそれをしようとしない。
ユン候補はなぜこんなに強気なのだろうか。プライドが許さないのだろう。追及される立場にあることを、認めたくないのだろう。検事出身の法曹人が、このようなことを言っていた。「歴代の検察総長が大統領選に出馬したり、政治をしようとしなかった理由は何か。生涯刃の柄を握ってきた人に、刃の上に立つ人の気持ちがわかるわけがない。ユン・ソクヨル候補に政治家の徳目を期待してはならない」
ユン候補はチョ・グク元法務部長官一家に対する捜査で「生きている権力に立ち向かう正義の検事」のイメージを手に入れた。国民の力の支持者だけでなく、中道層の心までつかんだ。そして大統領選候補になった。しかし、妻のキム・ゴンヒ氏の疑惑で中道層が少しずつ彼に背を向け始めている。
国民の力のキム・ジョンイン総括選対委員長は本紙とのインタビューで、「ユン・ソクヨル候補は公正さと正義を前面に押し出したため、国民を失望させることはないだろう」と語った後、「後でどうなるかは分からないが」と付け加えた。大統領当選後のことを懸念したのだ。しかし、ユン候補の「公正と正義」は、大統領選挙後ではなく、すでに揺れている。
ユン候補はどこまで強気を貫けるだろうか。支持率次第だ。最近の世論調査で、ユン候補の支持率が少し下がったことが分かった。これ以上下がれば、持ちこたえられないだろう。結局、失うものをすべて失ってから、謝罪までしなければならない事態になりかねない。
国民の力の雰囲気は意外に悪くない。野党の内部事情に詳しい関係者は「候補と党は妻に関する疑惑の影響力が限られた水準にとどまるとみている」とし、「アン・チョルス候補との一本化カードもあるため、大統領選で勝つという自信には変わりがないようだ」と伝えた。