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海に囲まれたオーストラリア、なぜ韓国のK9自走砲を輸入するのか(2)

登録:2021-12-16 08:40 修正:2021-12-16 13:18
ノルウェーは2017年にK9自走砲の導入を決めた。写真はノルウェー現地で試験評価中のK9自走砲の様子=ハンファディフェンスのウェブサイトよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

(1より続き)

 K9自走砲は、1989年に韓国内で研究が始まり、1999年から韓国軍が本格的に使用している。K9自走砲は口径155ミリメートルで52口径だ。1門の価格は40~50億ウォン(約3億8000万~4億8000万円)になる。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の資料によると、2000~2017年の世界の自走砲輸出市場では、K9自走砲が半分近い48%を占めた。世界最高の自走砲と呼ばれるドイツのPzh2000自走砲よりシェアが高い。K9自走砲の性能はドイツの自走砲と同等だが、価格は20~40億ウォン(約1億9000万~約3億8000円)ほど安いからだ。

 これまでにK9自走砲を輸入したトルコ、ポーランド、インド、フィンランド、ノルウェー、エストニアは、地域の安全保障上の脅威が高い国々だ。ポーランド、フィンランド、ノルウェー、エストニアは、地続きのロシアの軍事的な脅威に直面している。これらの国は、ロシアの攻撃や脅威を受けた経験がある。これらの国は、ウクライナ侵攻のようなロシアの膨張政策に安全保障上の危機感を感じ、K9自走砲に関心を示した。トルコは、クルド人の分離独立を主張する武装組織「クルド労働者党」(PKK)を最大の安全保障上の脅威とみなしている。インドはパキスタンや中国と紛争中だ。インドは6月に中国と国境紛争を行い、ヒマラヤのラダック東部地域にK9自走砲を配備している。

 これまでにK9自走砲を輸入した国は、地域内の安全保障上の脅威が高い非西洋諸国だ。韓国内の防衛業界は、米国の中心的な友好国であるオーストラリアへの輸出を機に、西側諸国への輸出拡大の可能性を期待している。

オーストラリアを国賓訪問中の文在寅大統領が13日、キャンベラの国会議事堂内の大委員会室で行われた韓国とオーストラリアの首脳による記者会見で質問に答えている。両首脳はK9自走砲の輸出など両国の防衛産業の協力を拡大することにした=キャンベラ/聯合ニュース

 オーストラリアは、なぜK9自走砲を輸入するのだろうか。オーストラリアの安全保障条件は、これまでにK9自走砲を輸入した6カ国とは異なる。海に囲まれた島国であり、大陸であるオーストラリアは、周辺に明確な敵性国はない。オーストラリアの目的は、中国牽制だという見方が多い。オーストラリアは、中国を包囲する4カ国(米国・日本・オーストラリア・インド)の連合体であるクアッド(QUAD)と、中国の脅威に対抗するオーカス(AUKUS、米国・英国・オーストラリア協議体)の構成員だ。オーストラリアのモリソン首相は13日の両国の首脳会談で、オーカスとクアッドなど中国を牽制する協議体の重要性を取りあげ、両国の共同声明には、米中間の緊張が高まる南シナ海問題に対する言及が加えられた。

 オーストラリアの2020国防構造計画(2020 Force Structure Plan)の枠組みは、中国の浮上に備えたオーストラリアのアジア太平洋地域内の安全保障の役割の拡大と、対応能力の強化だ。オーストラリアは、軍事力増強が地域内の地位を強化するために必須の要素だとみている。オーストラリアは、インドと中国、南シナ海と東シナ海での紛争の事例を反映した戦略を立てたことが知られている。

 オーストラリア政府は、昨年からの10年間に国防に2700億オーストラリアドル(約22兆円)を投資する計画だ。オーストラリアは、海空軍だけでなく陸軍能力も育成し、中国の進出を防ごうとしている。オーストラリア陸軍は、550億オーストラリアドル(約4兆5000億円)を投入し、戦車、自走砲、装甲車、機動車両およびミサイルなどの新規導入を推進している。K9自走砲の購入はその一環だ。

 オーストラリア政府は、K9自走砲の完成品を韓国から輸入せず、現地で自走砲を生産・納品しようとしている。オーストラリアは人口20万人が住むジーロングに自走砲の生産施設を建設する予定だ。ジーロングには米国のフォードの自動車工場があった。2016年にフォードが撤収し職場を失ったジーロング市民に、スコット・モリソン首相は2019年5月、「外国の自走砲工場を誘致する」という総選挙の公約を出した。カン・ウンホ防衛事業庁長は、「ジーロングを韓国の昌原(チャンウォン)のような軍需イノベーションの都市に発展させることに、努力を惜しまない」と述べた。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1023191.html韓国語原文入力:2021-12-14 10:35
訳M.S

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