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伝説のボクサーか、ドゥテルテ氏の娘か…フィリピン大統領選レース、霧の中で開幕

登録:2021-10-05 02:40 修正:2021-10-05 09:37
2019年、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領(左)が東京を訪問した際に、娘のサラ氏(右)が同行した/ロイター・聯合ニュース

 ドゥテルテ大統領の娘、フィリピンを代表する「伝説的ボクサー」、独裁者の息子、貧困地区出身のマニラ市長…。

 最近、大統領選の候補者の登録手続きを皮切りに幕の上がったフィリピン大統領選レースの有力候補の面々だ。来年5月の投票を控え、フィリピン選挙管理委員会は8日まで候補者登録を受け付けている。現在フィリピン国内で最も注目されているのは、まだ立候補の意思を明らかにしていないサラ・ドゥテルテ・カルピオ(43)氏。同氏はロドリゴ・ドゥテルテ大統領の娘でダバオ市の市長だ。

 サラ市長は昨年12月以降、大統領選候補の好感度調査で一度も1位を逃したことがない。先月6~11日に、フィリピンの世論調査機関パルスアジアが有権者2400人に対して実施した世論調査でも、支持率20%で1位を守った。サラ市長は、2日に大統領選候補登録の代わりにダバオ市長続投に向けた候補登録まで済ませているが、最後の瞬間に心変わりし、大統領選レースに飛び込む可能性があるという観測が依然として強い。フィリピンの選挙法上は大統領候補登録をしていない人も、11月15日までは辞退する他の候補者に代わるかたちで選挙に出馬できるからだ。実際に父親のドゥテルテ大統領は、2015年に辞退した候補者に代わるかたちで大統領選レースに飛び込み、当選している。ドゥテルテ大統領が2日に副大統領選挙への出馬を放棄する宣言をしたのも、娘のサラ氏の出馬に向けた布石という見方が強い。ドゥテルテ大統領は出馬放棄を宣言した際に、娘が大統領選挙に出馬する可能性をほのめかした。支持者らは「行こう、サラ」という横断幕を掲げ、大統領選挙への挑戦を求めている。

ダバオ市のサラ・ドゥテルテ市長が2011年、裁判所の公務員に殴りかかる様子=YouTube動画をキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 サラ市長は、政治スタイルやキャリアのあらゆる面で父親に似て血の気が多い。2011年、当時もダバオ市の市長だった同氏は、撤去予定の同市内にあるスラムを公に訪問した。裁判所の公務員に撤去の延期を要求して断られると、人々の眼前で裁判所の公務員に殴りかかった。2015年には、父親の大統領選出馬を求めて坊主頭にしたこともある。インスタグラムにはジャンパーを着てバイクに乗っている写真が複数枚アップされている。

 サラ市長は以前から父親の政治的後継者の役割を果たしてきた。2007年にはダバオ市の副市長に当選し、市長だった父親と共に働いた。父親が2010年に3期連続再選制限規定に抵触して市長選出馬が不可能になると、自ら出馬して当選した。2013年に父親が市長として戻ってくると、自らは副市長に降格した。その後、父親が大統領に就任した2016年に再び市長に就任した。父娘がダバオ市長を務めた年数は、合わせて31年だ。大統領6年単任制を規定する憲法のため再選の道が閉ざされているドゥテルテ大統領が、娘を立てて中央政府でも同様のやり方で権力を維持しようとしているという観測が絶えない理由がここにある。

先日、大統領選に立候補したマニー・パッキャオ上院議員/ロイター・聯合ニュース

 ドゥテルテ親子に対抗して「ダークホース」として浮上したのは、世界初の8階級制覇記録を打ち立てた伝説的ボクサーでフィリピンの英雄、マニー・パッキャオ上院議員(43)だ。同氏はドゥテルテ大統領が属する与党「フィリピン民主党・人民の力(以下「フィリピン民主党」)」所属だが、先日、大統領選挙候補として登録した。同氏は「自分はファイターだったし、リングの中と外でこれからもファイターであり続ける」とボクサーらしく出馬表明した。

 そのためか、一時は親密だったパッキャオ氏とドゥテルテ大統領の関係は最近、急速に悪化した。政権初期の2016年には、パッキャオ氏はドゥテルテ大統領が推進した政策「麻薬との戦争」の支持者であり、ドゥテルテ大統領もパッキャオ氏を「大統領になるべき人」と持ち上げていた。しかし、今年に入ってパッキャオ氏がドゥテルテ政権の腐敗疑惑を提起したり、親中国的な対外政策を批判したりしたことで、関係が急速に冷え込んでいる。ドゥテルテ大統領は今年7月、パッキャオ氏について「パンチドランク(頭に受けた衝撃が累積し、ボクサーの脳細胞が損傷を受けること)を患っている」と述べ、不快感をあらわにした。パッキャオ候補の擁立は、フィリピン民主党内のパッキャオ派が主導しており、ドゥテルテ派は支持の意思をまだ明らかにしていない。パッキャオ氏は9月の世論調査で好感度4位(12%)にとどまったが、支持率は上昇傾向にある。

 その他、フィリピンを20年間にわたって強権統治したフェルディナンド・マルコス元大統領の息子、貧困地区出身の立志伝中の人であるマニラ市長も主要候補だ。マルコス元大統領の息子のボンボン・マルコス氏(64)は、先月の世論調査で好感度2位(15%)を記録。フィリピン現地メディア「インクワイアラー」によると、同氏は先月初め、ドゥテルテ大統領の娘サラとランニングメイトとして大統領選に出馬できるかという問いに対し「あらゆることが可能だ」と述べた。ただし出馬の意思はまだ明確にしていない。首都マニラ市の市長、イスコ・モレノ・ドマゴソ氏(47)は世論調査で3位を記録し、大統領選への出馬の意思を明らかにしている。マニラの貧困地区出身である同氏は、俳優として名を馳せた後に政界入りしている。

チョ・ギウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/asiapacific/1013804.html韓国語原文入力:2021-10-04 17:34
訳D.K

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