2000年に東京で開かれた「女性国際戦犯法廷」の裁判長として、慰安婦問題を国際社会で公論化した国際法の権威者であるクリスティーヌ・チンキン名誉教授(英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカルサイエンス)が、韓国の裁判所に対し、日本の賠償責任を認めてほしいとの意見書を提出した。法的拘束力のない国際民間法廷で、アジア各国の被害女性78人の証言を聞いて惨状を伝えた裁判長が、20年が経過したこの日、韓国の裁判所に「日本に司法的責任を問わなければならない」と改めて表明したのだ。
故クァク・イェナムさんら慰安婦被害者と遺族20人を代理する「民主社会のための弁護士会日本軍慰安婦問題対応タスクフォース」は10日、ソウル中央地裁民事15部(ミン・ソンチョル裁判長)に、日本の「国家免除論」主張に反論するクリスティーヌ・チンキン教授とケイナ・ヨシダ博士の意見書を提出した。日本は外国の裁判所が自国の「主権行為」を裁く権利はないという国家免除論を盾に、訴訟に応じていない。しかしチンキン教授は同意見書で「日本の性奴隷制と強制性売買は主権行為に分類され得ない」、「慰安婦は武力行使や脅迫などによって『募集』され、搾取や性奴隷の対象となった。軍事活動は主権行為に当たるが、性搾取や労働はこれに当たらない」と説明した。
チンキン教授は、もし慰安婦問題に国家免除論が適用されれば、ここ20年にわたって戦争や紛争という状況下における性暴行を最も深刻な国際犯罪として扱ってきた国際法の流れにもそぐわないと指摘した。女性国際法廷が開かれた2000年、国連安全保障理事会は、初めて「女性と少女に対する性暴行を犯した者に対する起訴の責任は、すべて国が取る」との決議を採択している。武力紛争という状況下における性暴力被害者の裁判請求と賠償要求のための国家責任を認めたのだ。これについてチンキン教授は「(慰安婦問題は)女性と少女に対するジェンダーにもとづく犯罪であり、性暴力事件だ。(他の)国家免除事件は、性暴力や性奴隷制犯罪を扱ってはいなかった」、「国際法上、性平等と性犯罪の法理が発展してきたことを考慮して、国家免除の法理を再評価しなければならない」と説明した。慰安婦被害は国家免除が適用された既存の事件とは違い、「性暴力犯罪」だということが最重要であり、国際法的に性犯罪の被害者に対する国家責任を保証する方向へと進んでいるだけに、司法もこのような声を受け入れるべきだということだ。
今回の訴訟で被害者が勝訴すれば、国家免除理論の壁を乗り越えて戦争被害者が賠償責任を問う重要な先例となると見込まれる。国家免除理論は、国家を個人より優位に置いた理論だが、その例外が認められれば、被害者が裁判を通じて賠償を受ける権利が拡大されうるということだ。慶熙大学のペク・ボムソク教授(国際法)は、「国際法的に人権の重要性が高まるにつれ、国家中心の国家免除論も次第に揺らいでいる。いっぽう被害者個々人の権利は、すべての国家が保障する趨勢へと発展している。韓国で勝訴の事例が出れば、他国の被害者が声をあげる始発点ともなりうるだろう」と述べた。
日本政府を相手取った2件の慰安婦被害者訴訟は、年内に判決を控えている。先に故ペ・チュンヒさんらが起こしていた訴訟は、来月11日が判決だ。故クァク・イェナムさんらが起こした訴訟も、11日のイ・ヨンスさんの尋問を最後に判決が言い渡される見通しだ。