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[ニュース分析]北朝鮮、韓国に向けた宣伝戦再開の信号弾…“軍事緊張”に戻る可能性

登録:2020-06-23 06:38 修正:2020-06-23 07:58
北朝鮮が、2018年4月の板門店宣言によって撤去した韓国向け放送用拡声器(四角で囲んだ部分)を再び設置した。今月22日午後、SBSの取材陣が江華島の平和展望台から開豊郡遠征洞の北朝鮮軍警戒所の隣に設置された拡声器を撮影した=SBSニュースよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮が対南(対韓国)ビラ散布の意向を示したのに続き、拡声器まで再設置したことは、本格的な対南宣伝戦に乗り出すという意図と見られる。これに対し、韓国軍当局が対抗した場合、南北は互いに敵がい心を露わにし誹謗戦を繰り広げた2年前の「4・27板門店宣言」以前の時代に戻る可能性が大きくなった。

 22日、韓国軍当局によると、北朝鮮軍が韓国に向けた拡声器放送施設を設置する情況が、前日から軍事境界線(MDL)周辺の前方地域全域にわたって10カ所以上で同時に確認されたという。韓国政府が脱北団体の北朝鮮へのビラ散布を放置したことについて、全面的な対南宣伝戦で対抗するという戦略と見られる。

 北朝鮮は対南ビラ散布についても22日付の「労働新聞」を通じて、「1200万枚の各種ビラを印刷した」と伝え、「我々の対敵散布闘争計画は抑えきれない全人民的、全社会的怒りの表出だ」と強調した。また、「ビラや汚物を収拾することがどれほど頭を悩まし、どれほど気分を害するものかを一度やられて思い知れば、二度とそのようなことをしないだろう」としたうえで、「報復の時間が刻一刻と迫っている」と述べ、対南ビラ散布を強行する意志を明らかにした。

 このような態度は、北朝鮮がこれまで脱北団体の北朝鮮へのビラ散布に対して極度の反感を示してきたことから、驚くべきことではない。実際、北朝鮮軍総参謀部は17日、いわゆる「対敵軍事行動計画」を明らかにし、「人民による対南ビラ散布闘争を支援する」と公言した。

 ただし、目を引くのは、2018年の板門店宣言当時、南北間の合意によって撤去した韓国に向けた拡声器放送の装備を予告なく再設置する動きが確認されたということだ。北朝鮮は対南ビラ散布を公言しながらも、韓国に向けた拡声器設置問題については一度も言及したことがない。韓国の民間団体の北朝鮮へのビラ散布に対する北朝鮮の対応プロセスには、当初拡声器の再設置が含まれていなかった可能性が高い。この場合、拡声器の再設置は最近、北朝鮮の権力集団内部で対韓国強硬派の声が浮上し、急きょ決定された可能性がある。

 今回の措置は、これまで韓国より拡声器撤去の主張に力を入れてきた北朝鮮の従来の態度とは異なる点で予想外だ。軍当局者は「北朝鮮は過去、北朝鮮向け宣伝用の拡声器に非常に敏感に反応し、数回にわたって撤去を主張してきた。北朝鮮が拡声器を設置すればわれわれも設置することは十分予想できるのに、先に拡声器を設置したのは異例のことだ」と述べた。比例性の原則に従い、拡声器の再設置には拡声器の再設置で対抗するのがこれまで南北がとってきた軍事的慣行であるからだ。

 韓国軍当局は、北朝鮮軍の韓国向け拡声器再設置に対してどのように対応するか、苦心している模様だ。しかし、北朝鮮が実際に韓国向け拡声器放送の再開を強行する場合、韓国軍当局も何もせず手をこまねいているわけにはいかないものと見られる。韓国も拡声器の再設置や北朝鮮向け宣伝放送の再開で対抗すべきという保守メディアと保守政界の圧力が強まると予想されるからだ。

 軍事境界線付近の最前線地域に拡声器が再び設置されるのは2年ぶりだ。2018年の「4・27板門店宣言」以前は、韓国は固定式30台、移動式10台など、計40台の北朝鮮向け拡声器施設を運用し、北朝鮮も当時、同様の規模の施設を運用していたという。軍当局者は「当時、北朝鮮に向けた心理戦放送は毎日午前と午後の2回、1~2時間ずつ行われていた」とし、「我々が拡声器放送をするたびに北朝鮮も対応放送を行ってきた」と述べた。

 南北が互いに拡声器施設を設置すれば、「4・27板門店宣言」は本格的に無効化手続きに入る公算が大きい。今回の措置で、昨年2月の朝米ハノイ首脳会談が物別れに終わってからも命脈を維持してきた「軍事的緊張緩和」のための装置まで損なわれた場合、南北関係はさらに困難な状況に陥るものと見られる。

パク・ビョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/950499.html韓国語原文入力:2020-06-2 02:42
訳H.J

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