正義記憶連帯(正義連)が運営する日本軍「慰安婦」被害者女性の住処「平和のウリチプ(わが家)」(憩いの場)のソン・ヨンミ所長が京畿道坡州(パジュ)の自宅で死亡した状態で発見された。
坡州警察署の説明によると、今月6日、ソンさんの知人の通報で出動した警察は夜10時35分ごろ、自宅で死亡しているソンさんを発見した。警察関係者は「外部から侵入した痕跡がないなど、今のところは他殺の疑いはないものとみられる」と述べた。警察は、まだ遺書も見つかっていないと伝えた。警察は8日、ソンさんの遺体を解剖し、携帯電話に対するデジタル・フォレンジック作業を行うことにした。
正義連などの説明によると、ソンさんは2004年当時、ユン・ミヒャン韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)代表(現・共に民主党議員)に頼まれて、「平和のウリチプ」の管理を担当してきた。「慰安婦」被害者ハルモニ(おばあさん)の故キム・ボクトンさんとキル・ウォノクさんが外国を訪問した時も同行し、ハルモニたちの世話をしたという。「見えないところでハルモニたちの手となり足となった活動家」として知られている。正義連は同日、訃報声明を発表し、「ソン所長は自分のことは後回しにし、いつもハルモニたちの健康と安全を優先して、一緒に過ごしてきた。うれしい日にはハルモニたちと一緒に笑い、悲しい日にはハルモニたちを慰め、そうやってハルモニたちの同志であり友であり、また娘となって16年間を過ごしてきた」と述べた。
■ソンさん「検察の捜査、マスコミの取材競争でつらい思いをしている」
ソンさんは正義連の会計に直接関与する立場にいないため、まだ検察の取り調べを受けていない。検察は最近、正義連の不正確な会計とユン・ミヒャン議員の個人口座などに捜査の焦点を合わせ、会計関連者を相次いで召喚して調べている。検察は同日、「ソンさんを取り調べたこともないし、事情聴取のために出頭を求めたこともない」と述べた。ソンさんが自ら命を絶ったと見られる中、「検察捜査に対する圧迫感」が取りざたされることを警戒したのだ。
しかし、ソンさんは自分が管理する憩いの場が検察の家宅捜索の対象になったことに大きな衝撃を受けたという。ソンさんの知人らは同日、警察に「ソンさんが最近、検察の家宅捜索でつらい思いをしていると言っていた」と供述したという。正義連も「ソンさんが検察の(憩いの場に対する)家宅捜索以降、自分の人生が根こそぎ否定されているようだとし、苦しい胸中を語った」と伝えた。検察は先月21日、憩いの場を家宅捜索する過程で、正義連側と対立した。正義連側は当時、憩いの場に住んでいるキル・ウォノクさんの健康を理由に、憩いの場に保管されている資料を任意提出することで検察と合意したと明らかにした。しかし検察は「(任意提出の合意は)正義連側の一方的な主張だ」と反論した。当時、ソンさんが家宅捜索の現場で何らかの圧力を受けたのではないかという疑惑に対し、西部地検は同日、「地下室で実際に家宅捜索を行った当時、故人は現場にいなかったと捜査チームから聞いている」と述べた。
マスコミの過度な取材競争もソンさんを苦しめたという。正義連は「ソンさんは最近、正義連をめぐって起きている状況をなかなか受け入れられなかった。何より、マスコミの過度な取材競争で鳴りやまない電話と呼び鈴の音やカメラのフラッシュで不安な毎日を過ごしていた。いつも明るく笑っていた故人は、憩いの場の外に出ることもできない状況だった」と明らかにした。最近、オンラインに正義連を非難する書き込みが多く掲載されたのも影響したものと見られる。
■検察捜査への影響は?
検察は先月20~21日、正義連の事務所と憩いの場などに対する家宅捜索で確保した資料を分析し、先月26日から会計担当者らを呼んで会計処理と後援金使用問題などを調べた。検察は今月5日、京畿道安城(アンソン)のヒーリングセンターに対する家宅捜索を行うなど、捜査に拍車をかけようとしていたところだった。しかし、ソンさんの死亡で、検察捜査への支障は避けられないものと見られる。ソンさんが周囲に検察捜査に対する圧迫感を打ち明けたことが知られ、検察捜査に対する反発世論が高まる可能性があるからだ。