本文に移動
全体  > 経済

斗山重工業、886億円投入されるも経営正常化は不透明…すべて脱原発のせい?

登録:2020-04-01 02:39 修正:2020-04-01 12:53
グラフィック=キム・スンミ//ハンギョレ新聞社

 産業銀行や輸出入銀行などの国策銀行は、流動性危機に見舞われている斗山(トゥサン)重工業に1兆ウォン(約886億円)の政策資金を投入することを決めた。しかし、事業の展望は依然として不透明だ。一時、世界の発電設備分野でトップに躍り出ていた斗山重工業は、どうしてこのような状態にまで没落してしまったのだろうか。危機の原因についての診断は交錯する。一部では現政権の脱原発政策のせいにしているのに対し、経営悪化の背景には、石炭火力発電の削減という世界的な流れをつかみ損ねている上、子会社の経営悪化を抱えていることによる過度な金融負担など、複合的な要因があると見るのが妥当だという指摘も出ている。

■数年前から累積していた危機

 斗山重工業の経営実績が悪化し始めたのは、文在寅(ムン・ジェイン)政権発足前の2015年だ。31日、斗山重工業の事業報告書を見ると、同社は連結財務諸表基準で2015年から当期純利益を出せていない。この5年間(2015~2019年)の累積当期純損失額は2兆6000億ウォン(約2300億円)を上回る。2015年に8兆6000億ウォン(約7620億円)だった新規受注金額は、昨年は4兆2000億ウォン(約3720億円)へと半減した。

 斗山重工業の実績の悪化は、不振の子会社に対する過度な支援も一因となっている。斗山建設は昨年までに2兆8000億ウォン(約2480億円)規模の累積純損失を出しているが、斗山重工業は有償増資や現物出資などを通じて斗山建設に2兆ウォン(約1770億円)をつぎ込んだ。しかし不振に耐え切れなくなった斗山建設は、ついに今年上場廃止となり、斗山重工業は斗山建設の株を100%取得し完全子会社とした。

 受注の激減や金融負担などで業績悪化が続くと、斗山重工業は事業再編と共に人員削減などの構造調整カードを切った。2013年には8400人あまりだった斗山重工業の従業員数は、2017年の約7600人から2018年には7300人、昨年は6700人と、わずか2年で1000人近く減っている。労組は「経営失敗の責任の回避」と反発するが、同社は「ここ数年、世界の発電市場の低迷が続き、リストラは避けられない状況」だとしている。

 斗山重工業の経営難に政府の脱原発政策はどのような影響を及ぼしたのだろうか。斗山重工業の事業に原発が占める割合は15%に過ぎない。一方、石炭火力発電の割合は70~80%を占める。15年末にパリ協定が締結されてから、世界の石炭火力発電市場は退潮基調に入り、斗山重工業はこの年を起点に受注残高が急速に減りはじめた。2015年の5兆1000億ウォン(約4520億円)台(個別基準)の売上は、昨年には3兆7000億ウォン(約3280億円)台にまで縮小した。事業全体の受注量が減ったのは、石炭火力発電の受注量が減ったために現れた結果だ。斗山重工業の不振をむやみに現政権の脱原発政策のせいにするのは無理があるということだ。

 むしろ、石炭火力の発注減少など、世界の発電産業市場が低迷期に入ったことを経営難の主な原因として挙げることができる。現政権の脱原発政策により、新ハンウル原発3、4号機をはじめとする国内の原発建設計画が中止または縮小されたのは事実だが、これによる収益減少は現在の業績を説明する主な変数ではない。斗山重工業は原子力発電設備などの主要機器を韓国水力原子力(韓水原)に納品しているが、最近の韓水原の集計によると、2017年のエネルギー転換政策後、韓水原が斗山重工業に支払った原発関連の金額は、2016年には6559億ウォン(約581億円)だったのが2017年には5877億ウォン(約521億円)へと減少したものの、2018年には7636億ウォン(約676億円)、昨年は8922億ウォン(約790億円)へと、むしろ増えている。

斗山重工業の現状=資料:金融監督院電子公示、斗山重工業//ハンギョレ新聞社

■世界のエネルギー転換の流れをつかみ損ね危機に

 市場では、今回の1兆ウォンの借り入れにより当面の足元の火は消すことができるものの、流動性問題の完全な解消には、これでは足りないという見方が優勢だ。3月末現在、同社の金融機関からの借り入れ規模は7兆ウォン(約6200億円、連結基準)に上る。このうち今年は4兆2800億ウォン(約3791億円)を返済しなければならない。同社の関係者は「4月中に戻ってくる6千億ウォン(約531億円)の外貨公募社債は、支払い保証をした輸出入銀行の融資転換で解決される見通しで、5月に満期の4千億ウォン(約354億円)規模の新株引受権付社債(BW)は、自社保有の資産と現金で返済する予定」と述べた。この関係者は「2兆3千億ウォン(約2040億円)規模の銀行圏の融資はロールオーバー(満期延長)が可能で、その他上半期に満期を迎える企業手形など5700億ウォン(約505億円)は、今回の国策銀行からの借入金で返済する予定」と付け加えた。

 しかし、政府と債権団の支援にもかかわらず、斗山重工業の経営正常化は依然として不透明だ。COVID-19事態を受け、今後の世界景気の低迷への懸念が高まっている上、受注の見通しもはっきりしないからだ。斗山重工業は強力な自主再建策をまとめ、債権団と協議する計画だ。すでに市場では斗山建設の売却説が流れているが、斗山重工業は「決まったことはない」という立場だ。

 斗山グループは、斗山建設の売却のほかにも、有償増資など流動性の追加確保策を検討しているという。これに先立ち、斗山グループはオーナー家が保有する(株)斗山と主要系列会社の株式などを1兆ウォン融資の担保にしている。産銀で企業金融部門を担当するチェ・デヒョン副頭取は「追加資金を支援するかどうかは、斗山重工業の再建努力を見てから決定する」と述べた。

 エネルギー業界では、斗山重工業の危機の原因を、市場の流れを読み切れなかった経営陣の事業判断の失敗によるものと見ている。米国のエネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)のメリッサ・ブラウン理事は最近、韓国メディアに寄稿した文章で「斗山重工業はこの3年間、発電市場の方向を読み誤り、国内外の成長潜在力を相当部分失った」とし「エネルギー転換は避けられない流れなのに、依然として石炭、ガスなどの化石燃料中心の事業ポートフォリオを維持している」と指摘した。ブラウン理事は「斗山重工業の経営陣は世界エネルギー市場の動向を真剣に注視すべき」とアドバイスした。

ホン・デソン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/935063.html韓国語原文入力:2020-03-31 18:25
訳D.K

関連記事