「チョ・グク事態」で追い込まれた大統領府が、今度は冷え込んだ南北関係で頭を悩ませている。今年2月にハノイで開かれた第2回朝米首脳会談以降、順調ではなかった南北関係が、平壌(ピョンヤン)で観客なしで行われたワールドカップ・アジア予選の試合を機に浮き彫りになったことも大統領府を困惑させている。
大統領府関係者は16日、南北国家代表チームの試合が観客なしで行われたことについて「非常に残念だ」と述べた。 同関係者は記者団に対し、「スポーツを通じて平和への扉を開いたように、多くの国民が(今回も)スポーツがそのような役割を果たすことを期待していたと思う」とし、「(政府は)それなりに最善を尽くしたが、それが実を結ばなかったことを残念に思っている」と述べた。
15日に平壌で開かれた無観客試合と関連して、大統領府が特に残念がっているのは、国民的関心が大きなワールドカップの予選を通じて冷え込んだ南北関係の断面を直接“体感”したという点だ。無観客の試合は、ただでさえ足踏み状態の朝鮮半島平和プロセスの推進に欠かせない世論の支持が弱まる契機になりうるという点で、大統領府の悩みはさらに深まっている。文大統領は先月、米ニューヨークでの国連総会の演説で、非武装地帯の国際平和地帯化を提案し、ドナルド・トランプ米大統領と会談を通じて朝米実務協議の再開の口火を付けたが、依然として状況の変化は見られない。
5日にスウェーデンで開かれた朝米実務協議も、北朝鮮は決裂を宣言した状態だ。大統領府は、北朝鮮のミサイル発射や文大統領に対する北朝鮮当局の非難声明にもかかわらず、「南北の最高指導者は深い信頼関係を築いている」と強調してきたが、次第にこうした発言も説得力を失っている。
開城(ケソン)南北共同連絡事務所を含めた南北疎通、連絡チャンネルも最近、まともに作動していないという。このような状況が続けば、11月、釜山(プサン)に韓ASEAN特別首脳会議に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が訪韓する可能性が低くなり、2032年の南北共同オリンピック開催の構想への勢いも衰える可能性が高い。大統領府関係者は「(無観客試合は)非常に残念」だとし、「国民世論に及ぼす影響はかなり良くないだろう」と述べた。
このような理由で、大統領府の周辺では、より積極的な方法と形で北朝鮮を説得する努力が必要だという声もあがっている。ハノイでの第2回朝米首脳会談が物別れに終わってから、文大統領と大統領府は朝米関係において消極的な姿勢を示してきた。仲裁者や促進者の役割に言及する頻度もかなり減った。対北朝鮮制裁の緩和や南北経済協力の拡大に向けた説得も、米国の頑強な態度の中、強く進めていないという指摘だ。大統領府関係者は、「米国とともに北朝鮮も同時に説得しなければならない」とし、「もう少し創意的な案を考える時期になった」と述べた。