ハンガリー・ブダペストのドナウ川で、クルーズ船バイキング・シギン号が、韓国人観光客などを乗せた遊覧船ハブレアニ号に追突した後、後進して事故地点まで戻ったが、再び前に進んだ映像が追加で公開された。バイキング・シギンの船長、乗組員が事故を認知しながらも救助などに積極的でなかったため、惨事が大きくなったという疑いを立証できる“決定的証拠”となるか関心が集まっている。
ハンガリー遊覧船業者で構成された「クルーズ・アライアンス」は1日、先月29日夜(現地時間)にハブレアニが沈没した瞬間の状況が映ったマルギット橋付近で撮影した7分22秒の長さの映像を追加で公開した。警察が先月30日に公開した映像はバイキング・シギン側から撮った様子であり、ハブレアニが隠れていたが、東の土手の監視カメラ(CCTV)で撮影したこの映像は、ハブレアニ側から当時の状況を見せている。
映像の2分24秒頃、ハブレアニが後ろからきたバイキング・シギンに追突され水中に沈み始める様子があらわれる。しかしその直後、遊覧船はカメラの視野から離れ、画面では右下段に船尾の部分が沈没する様子が見られるだけで、水に沈む全体の状況を確認することができない。
映像で目立つのは、加害船であるバイキング・シギンが追突直後に前進して画面の外に消えたが、事故地点まで後進してきてしばらく停まっている部分(3分45秒)だ。ぼやけてはいるが、戻ってきたバイキング・シギンの船尾の甲板の上で人々が慌ただしく走り回る様子が見える。ハンガリーのインターネットメディア「インデックス」は、「画面を拡大して分析した結果、事故直後5~6人が水に溺れてもがいており、バイキング・シギンの乗務員らが慌てて走り回って二つの救命胴衣を投げる姿を見ることができる」と伝えた。しかし、どういうわけかバイキング・シギンは後進してきた後、1分も経たないうちに再び前に前進(4分27秒)した。
この映像は、これまで伝えられていたのと違い、バイキング・シギンが事故を起こした後ずっと直進したのではなく、後進してしばらく停まり、再び前に進んだことを示す。この「疑わしい動き」を積極的に解釈すれば、バイキング・シギンが事故を認知していながらも遭難者の救助には乗り出さなかったという結論を出すことができる。
ただし、異なる要因はある。その後の映像をみると、バイキング・シギンが通過した橋脚の間に大型船舶一隻がついていく姿を確認することができる。バイキング・シギンはこの船舶と「2次衝突」を避けるためには、現場から離れざるを得なかったと主張するものとみられる。結局、正確な容疑立証のためには、同船舶との交信が行われたかどうか、交信があったならどのような会話が交わされたかを確認しなければならない。
一方、ハンガリー裁判所は1日、大型の海岸交通事故を起こした容疑でバイキング・シギンの船長ユリ・C.の逮捕状を発付した。裁判所は保釈の条件として1500万フォリント(約560万円)の納付、追跡装置の取り付け、ブダペスト滞留などを提示したが、検察が異議を提起して拘禁状態は維持された。
船長は依然として「事故に故意性はなかった」とし、無罪を主張しているという。AP通信は彼が「規定を破っていない上に、大雨が降り視野が制限されたため事故を避ける方法がなかった」と主張していると伝えた。彼の弁護を担当したガボール・エロ弁護士も無罪を主張し、「私の依頼人は多くの死亡者と行方不明者を生んだ大きな事故を起こしたことに激しく衝撃を受け、被害者家族に哀悼の意思を伝えてほしいとずっと話している」と述べた。保釈を許すかどうかは今週中に決まる予定だ。