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[コラム]晩秋の蝉?中国言論の絶望

登録:2018-10-18 21:27 修正:2018-10-19 10:26
キム・ウェヒョン北京特派員//ハンギョレ新聞社

 「本質を分かっていても書くことはできない。背後は知らないふりをして外見だけを扱う。多くの場合、自己検閲をする。何年か前には政治ニュースを書けなくなり、後日には経済ニュースも書けなくなり、今は芸能ニュースすら書けない。言論は、晩秋の蝉のように何の声も出せない。あまりに絶望的だ」

 香港のあるメディアが、最近の中国内のメディア従事者との深層インタビューを報道した。中国の言論の自由が最低水準であることは周知の事実だが、当事者の説明で覗き見た実状は悲惨なものだった。

 検閲は日常だ。「報道指針」は、中央および地域の政府からファックスなどで入ってくる。各部署の担当者がそれぞれ追いかけて手で書いてくる。外部流出を防ぐため、依然として“手書き”を好む。

 国内政治の報道は当然不可能だ。一時は扱われた“死んだ虎”(大物権力層の腐敗事件)報道も今は見られない。特ダネを追いかける記者もいない。外国の政治も敬遠されるテーマだ。習近平主席の任期制限が撤廃された今年初めの憲法改定時は、“プーチンのロシア”のような独裁を示唆する外国の政治体制を報道することはできなかった。

 大きな社会的イシューも、ある瞬間から報道されなくなる。どれほど関心が高くとも、政府批判に火の粉が飛び散る前に統制する。医薬品供給管理の問題点を提起した上半期の興行映画「私は薬の神様ではない」(我不是薬神)は、上映4日目から記事を書けなくなった。ポータルサイトなどで「注目されるニュース」の上位に上がった記事も管理される。10位圏に入れば人為的に順位を落とし、追いやって“世論化”を阻む。

 経済および産業報道が統制を受ける状況もますます増えている。報道指針は米中貿易戦争の初期に強い態度を注文したが、後日には「貿易戦争」という表現も使わないよう注文した。今は「貿易摩擦」と書くが、詳細な状況は報道しない。中国のメディアで、ファクトもなく「我々は正当であり、我々は勝てる」という駄目押しの記事ばかりなのは理由があった。

 多くの報道機関は、政治・経済ニュースをあきらめて、芸能メディアに切り替えた。最も人気のある芸能人を扱おうとしたが、最近のホットなヒップホップは反抗と悪口のせいで報道できなかった。“限韓令”のせいで韓国芸能界の記事も禁止された。芸能界の裏話を扱っても、不倫などの刺激的話題は許されない。“美談”が主要ニュースになるほかはない。

 記事が完成すれば、正書法検査のように“敏感単語検索機”を通して、“敏感単語”がなくなるまで修正を繰り返す。専門の校正員が担当したりもする。それでも最終的に報道することが難しい時がある。編集者は取材記者を呼び、一時的に記事を送り出して「すぐにキャプチャーして。後では見られないから」と慰める。

 挫折した若い記者たちは離職を選ぶ。彼らの席はさらに若い記者が埋め、彼らが再び挫折して席を去れば、また新しい人が来る。若さがあるだけで、活力も経綸もない状態が続く。

 中国外交部の華春蛍報道官は8月30日、定例ブリーフィングで「日本政府は自国の報道機関を教育し取り締まらなければならない」という話で外国の記者たちを驚かせた。前日、中日政府会議代表取材団に極右の産経新聞が入ることを拒否されて起きた物議に対する対応だったが、言論の独立の観点で「政府の教育と取り締まり」は記者として受け入れられない修辞だ。

 だが中国政府は、言論を教育し、これを通じて全社会を取り締まる。ある30代の共産党員は「中国官営メディアは、中国の指導者は人民のために忙しい、それで中国人民は幸せだが、外国では災害や事件事故で大変だ、という三段論法を繰り返している」と説明した。私たちをはじめ外国が中国を正しく読み取ることがますます難しくなる理由でもあるだろう。

キム・ウェヒョン北京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/866436.html韓国語原文入力:2018-10-18 17:54
訳J.S