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[特派員コラム]本当に北朝鮮のミサイル発射のためだったか

登録:2018-03-08 23:00 修正:2018-03-09 07:27
2月23日、銃撃を受けた東京千代田区の朝鮮総連中央本部の建物=チョ・ギウォン特派員//ハンギョレ新聞社

 先月27日、日本の中央日刊紙の社会面の片隅に短い記事が載った。記事のタイトルは「朝鮮総連本部銃撃男性、北朝鮮に『我慢ならない』」などだった。先月23日、東京都千代田区にある在日本朝鮮人総連合会(総連)中央本部に拳銃を発射した事件の容疑者の1人である右翼活動家、桂田智司(56)が警察で犯行理由について「北朝鮮がミサイルを発射し続けていることに対して我慢できなくなったため」と述べたという内容だ。

 犯行当時、桂田は車を運転し、彼と同行した別のヤクザ出身の容疑者がドアに向けて拳銃を撃ったことが分かった。桂田は「発砲の後、車を運転して建物に飛び込むつもりだった」とも述べた。彼らは総連の建物に拳銃5発を発射した。負傷者はいなかったが、当時総連建物の中には当直者が勤めていたので負傷者が出てもおかしくない状況だった。桂田の陳述は、日本の方向に相次いでミサイルを発射する北朝鮮が嫌いだったために、北朝鮮と関係のある総連は銃で攻撃してもかまわないという論理と見える。

 だが、桂田は最近の北朝鮮のミサイル発射のために突然行動に出た人物ではない。日本のメディアによれば、桂田は30年以上にわたり右翼として活動してきた人物で、2000年代から民族差別団体である「在特会」(在日特権を許さない市民の会)が主催した「嫌韓デモ」に参加してきた人物だ。右翼がインターネットに載せた宣伝動画では、彼が日章旗が刷られたTシャツを着て、旧日本軍が着用したものと似た帽子をかぶり、“ヘイトスピーチ”をする姿を今も見ることができる。彼の子どもの1人は、中学生だった2013年に在日同胞が多く暮らす大阪の鶴橋で「いつまでも偉そうに振る舞えば、南京大虐殺ではなく鶴橋大虐殺を実行する」と叫び、日本に衝撃を与えもした。

 ヘイトスピーチが危険なのは“ヘイトスピーチ”という表現とは異なり、実際には言葉だけで終わらないことがあるためだ。桂田の総連銃撃事件は、この点を象徴的に見せる。実際、1923年に起きた関東大震災の時、日本では「朝鮮人が井戸に毒を入れた」 「朝鮮人が放火している」というような流言が広がった後、朝鮮人虐殺が起こった。軍警と自警団が朝鮮人6000人以上を虐殺したと推定される。日本の内閣府が作成した報告書にも、朝鮮人が殺されたケースがあると記されている。日本の右翼は、大震災当時に日本政府が虐殺に対する正確な統計を出さない点を悪用し、最近6000人虐殺は偽りとして、その数字を問題にする場合が多いが、虐殺自体を正面から否定するケースはさほど多くない。

チョ・ギウォン東京特派員//ハンギョレ新聞社

 一層憂慮の恐れがある点は、総連銃撃事件に対する日本社会の冷淡な反応だ。総連銃撃事件を報道した記事につけられたインターネット・コメントを見れば「気持ちはわかる」のように、肩を持つようなコメントが多く目についた。「(総連の)自作劇ではないか」というコメントも少なくなかった。安倍晋三政権による北朝鮮脅威強調ムードで、総連は攻撃してもさほど大きな非難を受けないような空気が形成されている。総連のナム・スンウ副議長は「日本社会が総連に対する銃撃を奨励しているわけではないが、許す雰囲気はあるのではないか」と怒った。総連が嫌いだからといって、銃を撃ち誰かを負傷させてもかまわないのだろうか。社会面の片隅に載せられた短い記事を見て、恐ろしさを感じた。

チョ・ギウォン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/835255.html韓国語原文入力:2018-03-08 18:14
訳J.S

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