フンジン号の7日間は、国民の生命と安全の責任を負わなければならない政府が自国民保護にどれほど無能だったかを見せた時間だった。
38トン級ふぐ漁漁船の391フンジン号(以下フンジン号)は、東海の北朝鮮海域に入って操業し、10月21日午前1時30分、北朝鮮警備艇に拿捕された後、27日になって帰ってきた。大統領府と首相室をはじめとする政府のすべての関連機関は、27日午前、北朝鮮の朝鮮中央通信がフンジン号の送還計画を報道するまで拿捕の事実を全く知らなかった。どうしてこのようなとんでもないことが起きたのだろうか。
■船長の不法入国と元船長の嘘
政府の合同調査の結果、フンジン号は20日未明、ふぐ漁のため韓日共同漁労水域から北朝鮮海域に50マイルほど入った。フンジン号の海洋ナビゲーションのGPSプロッターの記録を見ると、フンジン号が北朝鮮海域に滞在した時間は20時間以上だった。21日午前1時30分、フンジン号は北朝鮮警備艇に拿捕された状況でも、自分たちの状況を知らせなかった。フンジン号には短波無線機や衛星電話が備えられていたが、全く使用しなかった。
彼らが拿捕されてから21時間後の21日午後10時31分、海洋警察はフンジン号が行方不明になったという事実を初めて認知した。翌日午前8時にはこのような事実をあらゆる関連機関に伝播した。大統領府と首相室、国家情報院、海軍、中央災害状況室、海洋水産部などだった。しかし22日夕方、フンジン号の元船長は「22日午前8時20分にフンジン号と電話で話し、独島の北方で操業中であり、安全に異常はない」と嘘をついた。フンジン号の元船長はフンジン号が行方不明になってから5日後の26日午後になって、「22日当時、フンジン号はロシア海域に入って操業していたものと思われ、これを隠すために嘘をついた」と海洋警察に打ち明けた。
■海洋警察、北朝鮮に拿捕された可能性を早期に排除
5日間、政府は元船長の嘘に騙されてフンジン号が北朝鮮に拿捕された可能性を早期に排除した。海洋警察は特に、元船長が伝えたフンジン号の最後の操業位置が北朝鮮海域から500キロ以上離れており、当時台風の影響で波の高さが最大6~7メートルだったという点を根拠に、フンジン号が事故に遭ったものと判断した。海洋警察は事故で座礁、沈没したと推定されるフンジン号を探すために、連日艦艇と航空機を動員して捜索し、周辺国の日本、ロシア、中国に捜索を要請した。
政府機関の対応もきわめて消極的で無能だった。海洋警察が国家情報院にフンジン号が北朝鮮に拿捕された可能性を問い合わせると、国情院は「北朝鮮に拿捕されたとは推定されない」と答えた。関連省庁の国防部と海洋水産部の長官も、北朝鮮が発表するまでフンジン号拿捕の事実を全く知らなかったと国政監査の席で明らかにした。大統領府と首相室も、海洋警察と国情院の誤った報告により、フンジン号は事故に遭ったとばかり判断し、拿捕された可能性については考えることができなかった。
■北朝鮮との連絡ルートは全くない
政府がフンジン号が北朝鮮に拿捕された可能性を念頭に置いたとしても、現在のところ北朝鮮にこれを確認できる公式ルートは全くない。かつて南北間には板門店(パンムンジョム)の電話や軍通信線9本など計10個の連絡ルートがあったが、現在は全て途絶えている。現在、南北間の連絡は板門店でマイクを利用して肉声で伝達したり、放送を通じて発表するしかない。国防部当局者は「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が7月の南北軍事会談を提案したのには、南北間の通信線を復元させようという意味も含まれている」と話した。