脱北民3万人時代を迎え、政府が北朝鮮離脱住民(脱北民)支援政策の焦点を既存の「保護・定着」から「福祉・統合」側に変えていく方針を明らかにした。これによって定着の初期段階から職業・創業教育が強化され、定着金や住居支援金も段階的に引き上げられる。また、政府など公共部門の脱北民採用も拡大し、脱北民と地域社会の連携も強化する方針だ。
統一部は27日、こうした内容を骨子とする「社会統合型」脱北民の定着支援政策の改善案を確定して発表した。韓国に入国した脱北民は、今月21日基準で3万人(これまでで30021人、今年1227人)を超えた。
これを具体的に見ると、脱北民の最初の関門となる「北朝鮮離脱住民定着支援事務所」(ハナ院)にいわゆる「長期的な人生設計」に向けた教育課程が導入される。統一部当局者は「脱北民一人ひとりの適性や教育水準など力量に合わせ、専門家の助けを借りて進学・就職・結婚・財務など人生全般にわたる進路を設計できるようにする」と話した。
政府は京畿道安城(アンソン)のハナ院本院に予算63億ウォン(約6億500万円)をかけて職業訓練館を建てることにした。ただ、12週間の日程のハナ院の基礎教育がすでに正規教育(392時間)と自主参加型の補充教育(364時間)でほぼ埋まっているため、教育課程を調整する必要があるものと見られる。
もっとも大変な時期である定着初期段階の生活安定のため、現在1人当たり700万ウォン(約67万円)の定着金と1300万ウォン(約125万円)の住居支援金も、物価上昇率などを考慮して段階的に引き上げることにした。脱北民の定着金と住居支援金はそれぞれ2013年と2007年に引き上げられて以来、そのまま据え置かれている。
統計庁などの資料によると、昨年、国民平均雇用率は60.3%に達したのに対し、脱北民の雇用率は54.6%に止まった。昨年、雇用された脱北民のうち、半分以上は単純労務(29.8%)またはサービス業(28.1%)の分野で働いていた。脱北民の月平均所得(約154万ウォン・約15万円)は、国民平均値(229万ウォン・約22万円)を大きく下回っている。政府が脱北民の職業教育機会を拡大・強化することにしたのも、このためだ。統一部当局者は「大韓商工会議所人材開発事業団の職業訓練プログラムと中小企業庁の創業支援プログラムへの参加を拡大して、より専門化された教育機会を提供する」と話した。
脱北民の社会進出機会を拡大するため、政府や地方自治体、公共機関の採用も増やしていくことにした。関係省庁と機関が脱北民に適した仕事を発掘する一方、中央行政機関が自治体を評価する際にも、脱北民の雇用率を指標に反映することにした。
これまで支援対象から除外されていた「第3国生まれの脱北青少年」についても、子どもの養育加算金や大学定員内の特例入学などの支援案が用意された。2011年に36.2%にとどまっていた第3国生まれの脱北青少年が、2015年には50.5%(1249人)を占め、北朝鮮出身(1226人)より多くなり、政策変化が必要だいう指摘が相次いだ。
このほか、ハナ院の教育期間から就職・進学初期に至るまで定着経験とアドバイスを受けることができるように「先輩脱北民」はもちろん、地域住民などとの人的ネットワークを形成できるよう支援することにした。学校に脱北学生を担当する脱北教師出身の「コーディネーター」を拡大配置する案も進められる。政府は、脱北民政策をめぐる省庁間の協力体系も「北朝鮮離脱住民対策協議会」(次官級)から「北朝鮮離脱住民社会統合委員会」(長官級)に拡大再編する方針だ。