「そんなにサード(THAAD=高高度防衛ミサイル)が好きなら国防部長官は自分の親の家に持っていけばいい」、「国防部このXXどもを捕まえて殺してしまわねば」、「サードが来る山道に横たわって入れないようにしなければならない」、「(慶尚北道)漆谷(チルゴク)といっておいて一日で星州とは何事だ!」。
13日午後3時、慶尚北道星州(ソンジュ)郡星州邑星山2里の村民会館。星州にTHAADが配備されるという知らせを聞きつけた住民12人が集まって座り込み、こうした会話を交わしていた。記者が「サードが来るという星山はどこにあるのですか」と尋ねると、住民らは一斉に、村民会館の前にある山を指した。「記者さん、見てみろ。この村の500メートル先でしかない。村のすぐ前にサードを置くなんてやつらがどこの世にいるんだ」。ある住民が後から激昂した声でこう叫んだ。
チェ・ユンソンさん(61)は「こんな家の前の山に電磁波が強いというサードを持ってきたら、お年寄りの住民はどこに行って生きていけというのか、マクワウリは誰が買って食べてくれるんだ。住民が今まで努力してこんなに住みやすい場所にしたのに、どうして私たちにこんなことをするのか分からない」と話した。
キム・スンイムさん(64)は「昨日のテレビのニュースで星州にサードが来るということを初めて知った。星州住民に今まで(THAAD配備について)何の説明もないが、突然こんなことをするのは、結局私たちを無視しているからだ。マクワウリの収穫時期だけど、腹が立って今の仕事が手につかずこうしている」と声を荒げた。
THAAD砲隊の配備が決まったとされる星州郡星州邑星山里の星山(389メートル)は、星州にある小さな山だ。乗用車を乗って星山を2分上がると、星州郡庁と大邱(テグ)地方裁判所の星州支院、学校、マンション、商店が集中する星州市内が一望できた。2分さらに上がると山の頂上に「空軍第0000部隊」とあった。住民らは、この部隊を「星山砲隊」と呼ぶ。11万6694平方メートルの面積に中距離地対空ミサイルのホークミサイルとレーダー装備などがある。ここに165人の軍人が勤務している。
この日会った星州住民らはひどく怒っていた。同日午前10時30分、慶尚北道星州郡星州邑京山里の外の森で開かれた「THAAD配備反対汎郡民決起大会」には住民5000人余りが集まった。THAAD星州配備反対汎郡民非常対策委員会(委員長、イ・ジェボク)は決起大会で「THAAD配備の元凶は北朝鮮のミサイル」と主張し、北朝鮮のミサイルの模型を持ち出し火刑式を行った。また、12日からTHAAD星州配備に抗議して断食に入ったキム・ハンゴン星州郡守、ベ・ジェマン星州郡議会議長、イジェボク非常対策委員長らは、THAAD星州配備を反対する内容の血書も書いた。住民らは「THAAD配備決死反対」、「清浄な地域へのTHAAD配備を強く阻止する」などの掛け声を一緒に叫びながら政府を批判した。
「急にインターネットのニュースで(THAAD配備地域が)星州と書かれてあったので、まさかと思いました。住民相手の説明会もなく、今日になって常駐配備確定だなんて、こんなやり方がどこにありますか?」
この日の決起大会に出席した住民のイ・イルウンさん(48、星州大家面龍興里)はこう嘆いた。イさんは星州で有機栽培のマクワウリ農を4000坪ほどで行っている。長男の彼は父親がしていたマクワウリを受け継いだ。イさんの父親はマクワウリの生産を営み、息子2人と娘1人を育てた。父親のように彼もマクワウリ農で息子1人と娘1人を育てた。
イさんは「サード配備は補償や恩恵の問題ではなく、子々孫々住んできた農民たちの土地が奪われるかどうかの問題だ。サードレーダーで強力電磁波が出されれば、住民の健康問題と地域特産物の星州マクワウリのイメージが悪くならないか、とても心配になる。いったいそんなものをどうして配置しようとするのか分からない」と話した。
マクワウリで有名な星州には4万6000人余りが暮らしている。このうち1万800人余りが農作業をする。全体の農作業の57%がマクワウリだ。星州マクワウリは、韓国のマクワウリ生産量の70%を占める。近くに川があり土地が肥沃な盆地の地形で、豪雪など自然災害も少なく、マクワウリ農をするにはいい土地柄だ。星州郡には1邑と9面があるが、THAADが配備されることになる星州邑の人口は1万4000人で最も多い。
キム・ハンゴン星州郡守は「中央政府が住民の同意も求めず一方的にこんな決定をしていいのか理解できない。惨憺たる心情で、私たちの意思が貫徹されるまで闘争していく」と明らかにした。
イ・ジェボク非常対策委員長は「同意や協議などの手続きを無視した政府の政策決定過程と行為は、郡民を愚弄する態度だ。私たちの意思が貫徹されるまで一緒に力を集めて悲壮な覚悟で最後まで闘争する」と話した。
キム郡守と住民らは同日午前11時30分に決起大会が終わると、近くでバス5台に分乗してソウル龍山区の国防部に向かった。彼らは国防部に血書を伝え、THAADの星州配備に抗議した。しかし、同日、親朴槿恵(パククネ)系のキム・グァンヨン慶尚北道知事は報道資料を出し、THAADの星州配備決定を事実上受け入れたいとの立場を示した。
キム道知事は「THAADの星州郡配備は国家安保の次元で不可欠な決定だと理解されるが、その決定過程と手続き面は納得し難い。政府は星州郡民の犠牲と不便、地域経済の厳しさを充分に理解し、郡民の要求を大幅に受け入れた納得できるレベルの安全、環境、地域発展などの対策をまとめ、これを迅速に実行していくべきだ」と明らかにした。
THAADの配備地域として知られた星州の星山から南東16キロには大邱城西一般産業団地、北20キロには慶尚北道亀尾国家産業団地がある。東8キロには洛東江が流れ、洛東江の星州大橋を渡ればすぐ大邱達城郡河浜面が現れる。大邱達城郡は朴槿恵大統領が国会議員をしていた時の地域区でもある。
韓国語原文入力:2016-07-13 22:30