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[ニュース分析] ISは撃退されているのか?

登録:2015-02-27 21:57 修正:2015-02-28 08:23
昨年10月、イスラム国(IS)組織員がクルド軍のために空中投下された米軍補給品を手に入れたとして、これを示している。イスラム国がユーチューブで公開した写真だ。 AFP連合ニュース

 イスラム国(IS)との戦争が岐路に立たされている。

 最近米軍側はイスラム国に占領されたモスル奪還作戦を4~5月頃に行うと明らかにして論議を呼んだ。 セキュリティーが必要な軍事作戦の概要を2カ月前にあらかじめ明らかにしたのは、これによりイスラム国内の動揺を煽る意図と解釈された。 これは昨年9月から始まった連合軍の空襲によりイスラム国家が萎縮したと判断したためだ。

 事実、イスラム国は国際社会の関心を集めたトルコ境界隣接地のシリアの国境都市コバニ戦闘で今年に入ってクルド民兵隊に敗退した。米国が主導する連合軍はこれまで計3000回に及ぶ空襲でIS隊員約6000人を除去したと自評している。 イスラム国が掌握した領域5万5000平方キロメートルのうち、少ないとは言え700平方キロメートルを奪還したという。 イスラム国の威嚇を受けた首都バグダットとその周辺は、今は安全になった。 バイジ、サマラなど都市でもイスラム国の勢力は退潮した。 モスルにつながるイスラム国の補給路を遮断し包囲中だという。 6~18カ月以内にイスラム国はイラク領土から追放されるというのが米軍側の展望だ。

 イスラム国が根拠地であるシリアとイラクでの勢力拡散が阻止されたという点は共通した評価だ。 問題はこれを政治的成果に引き上げることができるかだ。 戦闘の優勢が戦争の行方を有利に変えられるか、岐路に立ったと言える。

 イスラム国撃退の要諦は、スンニ派住民と武装勢力を引き離すことだ。 そしてスンニ派とシーア派の政治的和解を引き出さなければならない。 事前にこのような政治的な整地作業がなされていない状況で、イスラム国を軍事的手段のみで除去しようとする戦術は一層大きな災難を産むだろう。 依然としてシーア派が圧倒的なイラク政府軍とクルド民兵隊を動員したイスラム国撃退作戦は、イスラム国領域内にあるスンニ派住民の恐怖を招来することが明らかだ。 スンニ派の住民たちは、イラク政府軍とクルド民兵隊、シーア派民兵隊を解放軍ではなく占領軍として受けとめるだろう。 スンニ派住民たちの反感は高まり、スンニ派武装勢力を一層イスラム国側に押込む効果が予想される。

 現在、米国とイラク政府がスンニ派部族勢力との政治的和解を模索する作業を始める様子は見られない。 むしろイラク政府内で声が大きいシーア派強硬派は、スンニ派を代表して協議にはいる勢力と人物がいないなどの様々な理由を挙げて、スンニ派との妥協を強く拒否している。 米軍が予告する4~5月攻勢は、「災難的な勝利」に帰結する恐れがあるとケネス・ポラック ブルッキングス研究所研究員は米ニューヨークタイムズ紙で指摘した。 もちろんその時までにイラク政府軍がイスラム国家を制圧する能力を備えるかも疑問だ。

 イスラム国がシリアとイラクで停滞しているのは事実でも、今年に入ってから外からの同調勢力を増やし拡張している姿が見える。 エジプトのシナイ半島とリビアは代表的なところだ。イスラム圏各国でイスラム国を支持するという団体は多かったが、それらの団体が現地情勢に重要な変数となる勢力としては大きくなかった。 だが、エジプト政府軍と武装闘争を繰り広げたシナイ半島のイスラム主義武装勢力の相当部分は、現在イスラム国の旗の下に統合されている。 特に1700の武装団体が乱立し春秋戦国時代を彷彿させる程の内戦を行うリビアは、イスラム国家が跋扈するには最適な空間だ。 イスラム国というブランドはイスラム主義武装勢力統合の旗印になっている。

 バラク・オバマ大統領はイスラム国との戦争に米地上軍を制限的に投じる権限を議会に要請した。 米地上軍の投入を頑として拒否してきたオバマ行政府が立場を変えたのは、それだけの戦況の変化を反映している。 今春がイスラム国との戦争の転機になるだろう。 問題はその転機がイスラム国家を決定的に萎縮させることも、再び飛躍させることもありうるという点だ。

チョン・ウイギル国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015/02/27 20:09

https://www.hani.co.kr/arti/international/arabafrica/680136.html
訳J.S(1933字)

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