5月、記者会見で「救助できなかった最終責任は私にある」と言いながら
今になって「国家責任」を否定して救済対策を立て
遺家族を二度殺して、国民を二度だますのを止めることを望む
セウォル号事故が真相究明という公的領域から、賠償あるいは補償という私的領域へ移っています。 政府は「被害救済特別法案」を用意し、与野党も国会でこの問題を議論し始めたといいます。 もちろん賠償や補償の問題は不可欠の事案ですが、事件の性格も明らかにならないうちに、したがって加害者の範囲と実状もきちんと糾明されていない状態なので少なからぬ混乱が予想されます。
言うまでもなく、この政府と官営マスコミは待ちこがれていたでしょう。 お金の問題になれば、とりあえず事件の性格は後回しにされ、被害者は泥沼の中に陥り、惨事が冷笑の対象になったり被害者の問題にすり替えられるためです。国家権力によって数千名が死んだり負傷したり、拘禁、拷問、刑罰の被害にあった「5・18虐殺」の時もそうでした。 この政権と官営マスコミが、事件の中盤からセウォル号事故の真実を糾明しようとする遺族の努力を「お金の問題」に糊塗しようとしたのはそうした理由からでした。 彼らは「死体商売」などという非人間的な言葉を使い、遺族を二度殺すことも拒みませんでした。 そのような努力のおかげで、執権勢力は実際に各種の選挙で笑うことが多かったのです。 政府の無能と無責任など総体的不作為を忘れさせて、政権に対する怒りを鎮め、惨事に対する無関心、あるいは忌避感を触発させてしまったのです。
今や真相を弥縫するのに好都合な特別法が通過したし、お金の問題が浮上せざるを得なくなりましたから過去の選挙時より環境ははるかに良くなりました。 そのためか、この政府は初めから挑発的なやりかたで問題を扱っています。 政府、すなわち国家の責任は基本的に否定して救済対策を立てているのです。 ユ・ビョンオンにすべての責任を着せようとした時、そのような意図がすでに明らかでした。
それでも国家責任を消そうと思えば消せるのでしょうか? それはかえって、あなたがこの国の大統領として再び立つ機会をつぶしてしまう結果を生むでしょう。 あなたは遺族と国民の真相究明要請を拒否し妨害することによって、崩れた信頼と敬愛を取り戻せる機会を蹴散らかしてしまいました。
そのような過ちを犯さないように、今まで多く指摘されてきた国家の責任をもう一度想起してみます。 今からでもあなたが国家の責任を認めるならば、最小限の信頼だけでも回復し、禍転じて福となす機会にできるでしょう。
1. 李明博政権は2009年にそれまで20年だった船の耐用年数を30年に延長しました。 このような規制緩和だけでも200億ウォンの費用削減効果があると自慢しました。 清海鎮(チョンヘジン)海運はそれから3年後に船齢18年が経過したセウォル号を輸入し、2年後に事故を起こしました。
2. 海洋水産部は安全運航管理業務と船舶安全検査業務を、韓国海運組合と韓国船級に移管します。 全て海洋水産部の高位官僚出身者らが掌握している機関です。 海運組合は過剰積載のために平衡水を捨てて、固縛さえいい加減な状態で出港させました。 復原性検証など、船舶の構造設備と安全を検査する韓国船級は、今年初めにセウォル号の無謀な客室増築を許可しました。 急変針によってセウォル号が沈没したとすれば、全てセウォル号の沈没に決定的な影響を及ぼした要因でした。 運命のその日、霧に覆われた中で仁川(インチョン)港からは2千トン級以上の旅客船のうち唯一セウォル号だけが出港しました。 韓国船級は昨年この政府から「大韓民国創造経済大賞」を受賞しました。
3. 脱出命令をしなかったからと船員だけを非難することはできません。乗客が船内に閉じ込められていることを知りながら、海洋警察は脱出の指示をしませんでした。
4. また、海洋警察は船員だけを救助した後、船内に閉じ込められていた乗客の救助を全く行いませんでした。 乗客たちはガラス窓を椅子や手で叩いて救助を要請しましたがそれを無視しました。
5. 海上警察は癒着した民間救助業者が現れることを待っているだけで、民間潜水士、民間船舶の救助活動を妨害したり邪魔しました。遅れて現れた民間業者は救助ではなく引き揚げ専門業者でした。救出の「ゴールデンタイム」はそんな風に過ぎ去り、船は完全に沈没しました。
6. 珍島管制所は、セウォル号が航路を離脱していることを知りながら、これをやり過ごしていました。 急変針を警告できたのに何もしませんでした。
7. この政府は事故発生から5時間が過ぎても、船内に乗客がどれくらい閉じ込められているかを知らず、また知ろうともしませんでした。
8. 大統領は午後5時15分、事故発生から8時間30分経つまで、この事実を知りませんでした。
9. 大統領府国家安保室と秘書室は、事故当日に二十回近く事故状況を大統領に報告し、午後2時半頃には失踪した乗客について報告したと言いますが、大統領は午後5時を過ぎても救助されていない乗客がライフジャケットを着て海に飛び込んだと理解していました。
そして最も重要な10番目の理由、あなたは5月19日の記者会見で「救助できなかった最終責任は私にある」と責任を認めました。「生かせたはずの生徒たちを生かせず、初動対応の未熟さで多くの混乱があり、不法過積載などですでに安全に多くの問題が予想されたのに、正すことができないことに(国民は)遺憾に思い怒ったのだと考えます」。あなたはこの政府の責任をよく知っていました。
国家責任、すなわち賠償問題で遺族を二回殺し、国民を二度だますことを止めるよう願います。