競技場を熱狂させた幻想的演技
合計71.699…ボールを除き18点以上
2位 トウ森悦を1.367点差で上回り
強行軍日程にも関わらず体力的限界を克服
ボールが空中を舞って正確に指先に落ちるとソン・ヨンジェ(20)の表情には後悔と確信が交錯した。 唯一のミスが出たものの、すでにライバルが追随できないだけの点数を確保した状態だった。 緊張した表情で“キスアンドクライゾーン”(選手待機席)に座っていたソン・ヨンジェ。電光掲示板には17.330点が点灯した。 韓国新体操にとってアジア大会初の金メダルが事実上確定した瞬間だった。 圧倒的な美を誇示したソン・ヨンジェに、審査委員たちはボールを除くすべての種目に18点台の点数を付けた。 世界の頂点レベルの技量を象徴する点数だ。 あたかもソン・ヨンジェのための祭典のような競技であった。
2日、仁川南東体育館で開かれた新体操個人総合決選で、ソン・ヨンジェが合計71.699点で優勝した。 ソン・ヨンジェは前日の団体戦で、韓国のアジア大会初の銀メダルに決定的な役割を果たしたのに続き、この日は自身の金メダルを追加した。 韓国がアジア大会の新体操で優勝したのは今回が初めてだ。 こん棒(18.100点)、リボン(18.083点)、フープ(18.216点)の三種目で参加選手中で最高点数をたたき出す程に優れた技量を初公開した。 アジアの頂点を競う中国のトウ森悦(2位・合計70.332点)との点数差は1.367点だった。
疲れた様子も伺えたが、顔には明るい笑みがこぼれていた。 前日の団体戦決勝を兼ねた個人総合予選で、完ぺきに近い演技(合計71.732点)でライバルのトウ森悦(70.183点)を上回り1位を占めたことが自信を吹き込んだように見えた。 この日最も高い点数を得たフープでは幻想的な演技を見せた。 音楽のテンポに合わせて躍動的な動きを披露したし、ピボットとジャンプ回転の時の脚の角度が完ぺきに近かった。 落ちて来るフープを受けからだを三回転させた後、再び身体を回してフィニッシュに至る場面は、線と円が描き出す美を演出した。 1分30秒の演技には一瞬の誤差もなかった。 ソン・ヨンジェの演技に合わせて観衆も拍手と歓声で力を吹き込んだ。 ソン・ヨンジェは完ぺきな演技の後、観衆の歓呼に何度も手を振る姿で審査委員に向かって強い自信を示した。 リボンではバレー曲「ドンキホーテ」に合わせて力と技巧が絶妙なコンビネーションを見せた。 リボンが躍動的な円を描く間、ソン・ヨンジェのダンス ステップとポイント ピボットが幻想的だった。 こん棒でも特有の愛らしい表情と弾力あふれる律動がよくマッチしていた。
強靭な精神力で体力的な負担に勝ち抜いた競技であったため、より一層引き立って見えた。 ソン・ヨンジェは今回の大会直前にトルコで開かれた世界選手権大会に参加し、先月28日に帰国したばかりだった。 当時ソン・ヨンジェは「大変な(世界選手権)日程だった」と吐露したが、仁川に入城して三日目に団体戦と個人総合競技を二日連続で行った。 疲労の蓄積で個人総合決選を控えて胃痙攣の症状が出るほどに苦し気な姿も見せた。 ソン・ヨンジェは実際に競技に入ると最後のボール演技が終るまで一糸乱れぬ演技で優勝を確定した。