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あまりに‘リアル’で「19禁」にされた映画

登録:2014-06-25 21:23 修正:2014-09-05 14:19
都市と青(少)年を主題に映画を作ってきたキム・ギョンムク監督の4本目の長編<これが我らの行き着く先だ>。 彼は今回、コンビニで働く人々、特に少数者に焦点を当てた映画をリリースした。//ハンギョレ新聞社

非現実的なキム・ギョンムク監督の‘おかし哀しい’映画
<これが我らの行き着く先だ>

 「8館、左側に入場してください」 ‘私たちはどこかのアルバイト生だった’というメインコピーの映画を案内する映画館のアルバイト生は同じ言葉を機械的に繰り返した。 8館は入場する観客から見れば右側にあるのだが、誰もアルバイト生の言葉を聞いて左側へ行く人はいなかった。 映画のチケットに8館と鮮明に記されていたし、赤い字で大きく書かれた‘8’という数字が、絶対に道に迷わないよう案内していたからだ。 観客は誰もアルバイト生の言葉に耳を傾けていなかった。

「バイトなんかしているくせに」

 全国のコンビニが2万5千店を超えて、一日に880万人がコンビニを利用するという。 そして95%以上のコンビニが24時間営業している。 ‘コンビニエンス’という単語のように、私たちは一日にも何度もきれいに陳列された売場で便利に商品を購入している。 コンビニのアルバイト生は「いらっしゃいませ。 1万ウォンお預かりします。 お釣はいくらです」のような、規則的な仕事はしているものの、私たちの大部分は彼らに関心がないだろう。

 キム・ギョンムク監督の4本目の長編映画<これが私たちの行き着く先だ>は、映画館のアルバイト生のように、一日に何度も何気なくすれちがうコンビニ アルバイト生の話だ。 映画は労働の神聖な価値を強弁することも、最低賃金問題を語りもしない。 ただ、その視線をコンビニの商品ではなく、影のように静かに働いている若い青年たちに向けている。 映画の中のアルバイト生は、見慣れた空間を通り過ぎていく多くの人々をレジの外ではなく中から眺める。 そしてそれこそが多くの私たちの姿だと話す。

 映画の中のエギョン コンビニで働くアルバイト生8人は、同性愛者、インディミュージシャン、自主退学生、求職者、脱北者、中年失業者で、社会から‘なぜそんな風に生きるのか’と後ろ指を差される人々だ。 だが逆説的に言えば、そのアルバイト生たちは社会を最も熾烈に生きていた。 僅か1千ウォン(100円)のドリンク一つ買って、客だという理由で王の振るまいをしようとする人々に落ち着いて応対する。 次のアルバイト生が来ないので大事なオーディションに遅れても、アルバイト生はタバコを売らざるを得ない。 彼女はコンビニで自身の役割に忠実だが、数千ウォンのお金を持つお客さんは、お客さんの限度を越えてアルバイト生の日常を侵す。 そんな風に、映画はお金さえあれば好き勝手にしてもかまわなくて、金がなければ人間的なことも尊重されえない社会の規則に対して‘そんなことも知らないのか、ソウルの田舎者みたいに’と皮肉っている。

 キム・ギョンムク監督の映画<これが我らの行き着く先だ>の力はまさにその‘現実性’にある。 ミンヒ役を演じる俳優キム・セビョクは今回の映画をどのように準備したかという質問に「別に準備することはなかった。 映画館の近所のコンビニでアルバイトを長くしていたし、その時の感じをそのまま生かした」と話した。 そして、キム監督本人と共同作業をしたシナリオ作家全員がコンビニでバイトをした。 それで監督はアルバイト生とお客さんの話を時には非現実的に表現しているけれど、その非現実的な設定があまりに現実的なので、面白くて、また胸がつまる。

キム・ギョンムク監督の<これが我らの行き着く先だ>

 コンビニでアルバイト生にセクハラして、働いたバイト代を払ってやらないと脅迫する社長が威張っている、反対に加盟店契約が憲法の原則に反していても何も問題にならないおかしな世の中で、監督は現実を映画にした。 商売にならなくて店を閉めたくても社長が思いのままに閉めてはいけない社会、「エアコンをバンバンつけておいて、仕事もなくてバイトなんかしているくせに」という言葉を聞きながらも、当面の生計のためにバイトに追い立てられる現実は、時にはとても非現実的なので映画のようだ。

Hでも、暴力や悪口が多いわけでもない19禁

 だが、軍律厳しい軍隊の閲兵式のように、整然と立ち並ぶ販売台、ホコリ一つないと思った白い床のコンビニで、そこを利用したり運営する人々は全て無粋に傷ついていた。 高貴に見えるほど礼儀正しいがトイレが急な「奥様」のように、私たちはジタバタしながら生きているが、社会が強要する‘クール’さからは逃れられない。 そんな風に人々は泥沼で日常に耐えているのに、社会は相変らず洗練され公正だと言う笑わせる世の中なので、この映画は俗っぽい言葉で‘ウップン(おかし哀しい)’だ。

 誰もが行けるコンビニに関するこの映画は、映像物等級委員会で青少年観覧不可等級を受けた。 青少年観覧不可映画なので、Hで、暴力的な場面や聞いたこともない創意的な悪口を期待したが、実際の映画は非常に現実的だった。 映等委の等級判定によれば、今後全国2万5千店余りのコンビニは青少年危害施設に指定して出入りを統制しなければならないだろう。 <これが我らの行き着く先だ>に対する映等委の青少年観覧不可等級判定で、改めて私たちの社会がウップン(おかし哀しい)ことが証明された。 この映画は6月26日に封切られる。

ヤン・ホギョン青年ユニオン活動家

https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/644014.html 韓国語原文入力:2014/06/25 16:57
訳J.S(2430字)

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