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地下鉄駅の1人勤務・・・乗客救助の“船員”すらいない

登録:2014-05-10 11:14 修正:2014-09-03 15:04
ソウル都市鉄道の夜間“一人勤務”発生駅

 費用を減らし利益を上げるために人の安全をなおざりにした政府と企業の貪欲さが、セウォル号の惨事を招いた。旅客船運航と関連した安全装置の欠陥が、続々と明るみに出ている。この2日にはソウル地下鉄の追突事故まで起こった。<ハンギョレ>は、大型人命被害を招きかねない各種交通・生活・産業施設にはセウォル号と同様の問題がないか、緊急点検に乗り出した。その第一は、鉄道・地下鉄である。

 もし地下鉄駅で火災が発生すれば、ソウル都市鉄道公社の駅員はわずか5分以内に、次のような20余種類の初動措置を取るようマニュアルに書かれている。

 「状況の把握及び現場出動(陽圧式空気呼吸器の着用、ランタン・携帯電話所持) →正確な災害発生位置を総合管制センター・119・112に通報 →乗換駅の場合、当該駅に通報 →消火器と消火栓を利用して初期鎮火(プラットホームで起きた火災で消火栓利用時、線路断電の有無確認) →エレベーター・エスカレーター運行停止状態および位置確認(CCTV) →市民誘導案内および救護措置(スクリーンドア開放・破砕および列車のドアの非常コック措置) →非常ゲートの開放およびゲート非常モード転換(開放) →トンネル退避時、退避誘導(移動式避難階段設置) →誘導案内(ランタン・発光誘導棒持参) →制煙設備の稼動確認及び水膜遮断壁稼働(必要時) →市民および乗り継ぎ市民の駅舎進入統制 →内部の案内放送実施 」

 しかし、都市鉄道公社が運営するソウル地下鉄5~8号線の157駅のうち、32の駅では夕方~朝の時間に駅員1人だけで勤務することが多い。 このすべての初動措置を一人でやれというのは最初から“不可能なマニュアル”なのだ。都市鉄道労組のファン・ウジン光化門(クァンファムン)支部長は「陽圧式空気呼吸器を着用するだけで5分以上かかる」と言った。これらの駅で1人勤務は1ヵ月平均少なくは5日、多くは15日以上になるものと都市鉄道労組は推算している。

 セウォル号惨事の際、乗客安全の1次的責任者である船員たちが任務を放り出したために犠牲者が多くなったとすれば、地下鉄の場合、危機状況で乗客を救う“船員”すらいない状況に置かれているわけだ。<ハンギョレ>が鉄道・地下鉄の安全管理の実態を点検した結果、施設老朽化、整備人員の縮小などとともに、このような非常時対応人員の問題が目に付いた。オ・セフン市長在任時の2010年7月、都市鉄道公社が構造調整を通して相対的に利用客が少ないと判断した駅の駅務人員を削減してから浮上し始めた1人駅務問題は、7人の機関士を自殺に追い込んだ1人乗務(運行)と共に、コスト削減のために安全を度外視した代表的事例に挙げられる。

 これについて都市鉄道公社側は「1人勤務が発生する駅は、労組側の推算より少ない。また、近くの駅から支援に行くなど、1人勤務を最小化している。有事の際には公益勤務要員もいるために事故の通報や収拾をする上で困難はない」と明らかにした。都市鉄道労組のクォン・オフン駅務本部長は「危急な状況で駅の安全に最終責任を負うのは駅員なのに、公益勤務要員とともに対応すれば良いというのは話にならない」と述べた。

ソウルメトロ老朽化車両の実態・整備人員削減の現況

 ソウル地下鉄1~4号線を運営するソウルメトロが、8駅を民間に委託していることも問題として指摘される。ソウル地下鉄労組のオ・ユンシク駅務支部長は「各種の事故や運行障害などが起きる場合“管制センター-機関士-駅員”間の有機的対応が重要だが、専門性の欠如した委託駅員たちが果たして能動的に対処できるだろうか」と憂慮した。ソウルメトロの民間委託拡大計画は、朴元淳(パク・ウォンスン)市長になってから全面中断された状態だが、既存の委託駅舎はそのまま運営している。

 危機対応人員についての無関心はKTXでも明らかだ。18両編成の高速鉄道には機関士(機長)と列車チーム長(旅客専務)、旅客乗務員2名と販売乗務員1~2名が一緒に乗っている。非常時に乗客の安全に責任を負うべき人たちだ。しかし、安全責任は全面的にKORAIL所属の機関士と専務車掌が負っている。KORAIL観光開発の所属で形式上KORAILに派遣された身分の旅客乗務員と販売乗務員は、安全業務に関与できないようになっているためだ。

 <ハンギョレ>が入手したKORAIL観光開発乗務本部の「非常時対応業務マニュアル」(2012年10月16日)を見ると、「列車火災、車両又は線路故障など異例な状況時、迅速・的確な状況把握を通じて、適切な案内放送を施行し、乗客の不安と不便を最小化する人的サービスを提供しなければならない。当社乗務員の主な任務は、正確な状況把握及び安全で適切な乗客の案内」と書かれている。

 昨年8月末、大邱(テグ)駅で発生したムグンファ号-高速鉄道の3重追突事故以後に改正された最新マニュアル(2013年9月25日)に出てくる“業務分掌”の内容も同じだ。列車の脱線や火災など非常状況においても乗務員たちは、列車チーム長と協議後、乗客の動揺による混乱を防ぐための案内放送だけをするようになっている。その反面、列車チーム長は“初期の迅速対応、人命保護、機関士との協議、電源遮断、列車防護、状況速報、乗客退避”など、すべての安全関連業務を引き受けなければならない。

 KORAIL観光開発は乗務員に対する安全教育も全く実施していない。これに先立ち、鉄道労組(委員長:金明煥(キム・ミョンファン))は去る2月27日、安全教育未実施などを問題として、KORAIL観光開発を雇用労働部に告発した。

オ・スンフン、チョン・インファン記者 vino@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/635876.html 韓国語原文入力:2014/05/07 10:42
訳A.K(2678字)

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