これは「たとえ選挙に負けるとしても、大統領選の公約を守ることのみが新しい政治」という要旨の書信を筆者に送ってきたオーストラリア シドニー在住の同胞言論人キム・ジョンヨプ先生への返信です。
キム・ジョンヨプ先生
遠くからも常に故国の日常に関心の紐を手放さずに貴重な文を書いてくださったことに感謝致します。 地方自治選挙の政党無公認問題に関するキム先生のご心配を理解します。 私はこの10年近く、地方自治が中央の大政党に振り回され、まともに定着しないことを正すために基礎自治体選挙での公認廃止運動をしてきました。 一昨年の大統領選挙運動の過程で朴槿恵(パク・クネ)、文在寅(ムン・ジェイン)、安哲秀(アン・チョルス)の3候補が共に無公認の公約をするのを見て、これで地方自治がちゃんと定着するようだ、幸いだと思ったのです。しかし朴大統領と与党セヌリ党は、一言の釈明もなく古靴を捨てるように無公認公約を投げ捨ててしまいました。 ところが、組織の負担がない安哲秀氏は、朴槿恵-セヌリ党側が公約を守らなくても野党だけでも無公認の約束を守らなければならないと、公約通り主張しました。民主党は安哲秀氏と競争する立場なので、現実の敗北を内心憂慮しながらも、彼の主張についてきました。そしてとうとう、予想より早く二つの勢力の統合が地方選前に行なわれました。 二つの勢力の接合剤の役割を果たしたのも、この無公認の共通公約でした。
しかし、現実はこうです。 基礎自治体の選挙において、与党候補は金の卵のような登録番号1番を付与されて単一候補になります。本来なら2番になるはずの新政治民主連合の候補は、無公認なので離党しなければならず、その上、無数の無所属候補の一人としてあっぷあっぷすることになったのです。 誰が誰なのか、新政治民主連合の候補が誰なのか区別も付きません。 特に、伝統的な民主党・野党支持の有権者たちの場合、候補者の名もよく知らずに2番とだけ思って投票してきた有権者たちは、区別が付かなくなって票を入れたい候補を選り分けることもできないことになってしまいました。 公約を守っていないセヌリ党の候補たちは会心の笑みを浮かべて悠々と選挙運動を行う一方で、公約を守って無公認を実施する新政治民主連合の候補たちは、どうしたらよいか分からず敗北感に沈んでいます。 公約を守らなかった側は有利になり、公約を守った側は不利になる選挙は、不公正で正義にもとる政治行為だと私は思います。 公約を守って不利になる側が不公正を正すために相手同様に公認制に復帰するのは、おかしいことではありません。 次に再度与党と無公認交渉を行なって合意した中で、公正な選挙戦を展開するのが当然なことだと思います。
保守一色の朝・中・東と総合編成放送は、公約を守らないセヌリ党と朴槿恵大統領に対しては一言も言わず、絶体絶命の不利な状況で無公認公約を考え直してほしいと懇願する新政治民主連合の候補たちばかり批判しています。このような状況のまま行けば、湖南(全羅道)を除いては全国的に野党は基礎自治体選挙で全滅することになります。 新政治民主連合所属の広域自治体長も底部組織が揺らぎ、全体が危険なことになります。
私は基礎自治体選挙の無公認も政治の多くの正当性の1つと見ています。与党側は公約をすでにゴミ箱に捨て、野党側を“正当性の陥穽”に落としておいて、長期執権のバラ色の展望を描くのに忙しいというのに、野党側は多くの兵士と一線指揮官を死地に追いやりながら“予定された敗北”に向かって突進しています。幸い、選挙まで70日ほど残っているので時間は十分です。もし今回の自治体選挙で野党が敗北した場合、新党結党の薬効は蒸発してしまいます。 選挙敗北の後遺症で安哲秀-キム・ハンギル指導部の責任追及が続くでしょう。 そして更に大きな問題は、総選挙と大統領選挙の見通しも暗欝になるということです。キム先生のご心配が大きいように思われ、お手紙を差し上げました。
イ・ブヨン