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[社説] 医療営利化を黙認した医・政妥協案の限界

登録:2014-03-19 20:53 修正:2014-03-19 23:35

 集団休診を控えて大韓医師協会と政府が辛うじて妥協点を見出した。 医協会員らが交渉結果を受け入れるかどうか決定する投票手続きが残っているが、集団休診事態による市民の被害を防ぐきっかけを作ったという点で、歓迎に値する。また研修医の勤務環境を改善することにしたことも望ましいことだ。 わが国の研修医の週当たり勤務時間は最大88時間までで、48時間のヨーロッパや80時間の米国に比べても過度に劣悪だ。

 しかし、初めに医師たちがストの大義名分として掲げた“医療営利化”の問題にはどんな進展があったのかは疑問だ。 遠隔診療の場合、6ヶ月の試験事業を行なって、その結果を反映させるという内容があるだけだ。 本当に試験事業を通じて遠隔診療の安全性と有効性を検証するつもりなら、遠隔診療を許容する医療法改正案推進を6ヵ月だけでも保留すべきである。 しかし、医師協会は政府がこの法案を国会に提出することを許容してしまった。

 医療法人の営利子会社設立問題も、政府の方針通りに進められている格好だ。子会社に診療収益が流出する問題点だけを改善し、医療営利化政策は引き続き推進するという内容が合意文に盛り込まれている。付帯事業の拡大、買収合併の容認、法人薬局の許容のような医療営利化政策については何の話もない。 政府が大韓医師協会をはじめいくつかの団体と論議機構を作って意見を反映させるとしているが、政府の医療営利化政策推進に付添い役を務める機関に転落する可能性が大きいと見られる。

 医協がこのように簡単に“医療営利化”の黙認に応じた理由は、この日合意した健康保険政策審議委員会の構成にその秘密が隠されているようだ。医協と政府は、健康保険政策審議委員会の公益委員を、加入者と供給者が同数で推薦して構成する方向で“健康保険法”改正案を年内に推進することで合意した。この場合、保険点数の引き上げなどで医師側の影響力がはるかに強くなることになる。医協がこれまで医療営利化反対を名分に掲げて戦ってきたのが、結局は保険点数引き上げに帰結されるようで苦々しい思いだ。

 こうなったら、医療営利化阻止という課題は結局市民に委ねられるしかない。政府は医・政協議の枠組みを拡大すると言っているが、これは医療供給者団体だけを含めたものであって、市民を代表する団体や医療消費者団体は抜け落ちている。 医療営利化で最も被害を被るのは医師でも薬剤師でもない一般市民だ。遠隔診療の危険性を甘受しなければならないのも市民であり、営利子会社によって引き上げられる医療費を抱え込まなければならないのも市民だ。拡大される医・政協議の枠には、与野党と市民団体が参加しなければならない。

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/628580.html 韓国語原文入力:2014.03.17 18:41
訳A.K(1227字)

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