「メガボックスがある種の圧力を受けて、何かを隠さなければならない切迫した状況で嘘をついていると考えざるをえません。」 7日夜、ソウル世宗路(セジョンノ)のあるカフェで会ったチョン・ジヨン(写真)監督は断固として語った。 彼は前日夜、自身が企画・製作した<天安(チョナン)艦プロジェクト>(5日封切・演出ペク・スンウ)に対して、劇場チェーン メガボックスから突然上映を中断するという‘通知’を受け取った状態であった。 メガボックスはこの通知の3時間余り後の7日0時から26ヶの封切館で<天安艦プロジェクト>を上映スケジュールからいっせいに下した。
"保守団体の脅しのせいと推定するが
警察に保護要請もせずに…
常識的なことではない
非正常的な圧力を受けたに違いない"
チョン監督は 「メガボックスは保守団体の脅しのせいだと主張しているが、警察に保護要請もせずに一方的に上映を中断するというのは常識的に考えられない。 異常な圧力を受けたに違いない」として、外圧の可能性を提起した。 彼はまた「現政権がいくら愚かでも、こうした無謀なことをしたとは考え難い。 <天安艦プロジェクト>に観客が多く入るというので、メガボックス周辺にいる力の強い誰かが腹を立てたようで、それに恐れをなした劇場側が‘自ら屈服して’こうなったようだ」と話した。 実際、メガボックスを除いては<天安艦プロジェクト>を上映中の他の劇場で‘保守団体の脅迫’を受けたところはないと言う。
これに先立ってメガボックスは、自社ホームページに "一部団体の強い抗議および示威に関する予告で、現場衝突が予想され観客の安全のために6日付でやむをえず配給会社との協議の下に<天安艦プロジェクト>の上映を取り消すことになった" と明らかにした経緯がある。
"メガボックス周辺にいる力の強い誰かが
腹を立てたようで、それに恐れをなした
劇場側が自ら屈服してこうなった"
<天安艦プロジェクト>は2010年に発生した天安艦沈没事件に対して‘北韓による爆沈’という政府合同調査団の最終結論に疑惑を提起して、わが国社会の‘疎通’を強調したドキュメンタリー映画。 封切前から国防部関係者が上映禁止仮処分申請を出すなど迂余曲折を体験した。 当初、国内3大劇場チェーンの中で唯一メガボックスだけが26上映館を開けてくれた中で封切り二日目の6日には一日観客数で封切映画全体ボックスオフィス12位、多様性映画興行1位に上がり突風を予告した状態であった。
チョン監督は<南営洞(ナミョンドン)1985>や<折れた矢>等の数々の問題的映画を演出してきた。 だが「劇場が外圧を受けて一方的に特定映画をスケジュールから外すのは韓国映画史上初のことであり、あってはならないこと」と語った。 また、チョン監督は「製作・配給会社と協議を経た」というメガボックスの主張とは違い、映画の突然の上映中断に対して最小限の相談すらなかったと話した。 「当初<天安艦プロジェクト>を上映することにしたメガボックスの決断に感謝の気持ちを持っているが、劇場が一方的通知だけで上映を中断したことは猛烈な波紋を招く事件であり、私たちと協議してさらに慎重に判断しなければならないことでした。」
"映画が劇場にかけられないという
最悪状況になっても必ず映画を見せる"
警察に捜査も依頼するつもり
チョン監督は今回の事態に対して警察に捜査を依頼し、メガボックス側の誤りが明らかになれば、損害賠償も請求する方針だ。 また、文化体育観光部に劇場側の一方的横暴を防ぐための制度準備を要求する一方、再発防止のために映画界とともに対応していく計画だ。 まずチョン監督は9日ソウル光化門(クァンファムン)プレスセンターで韓国映画監督組合、韓国映画祭作家協会、韓国映画プロデューサー組合、韓国独立映画協会、全国映画産業労働組合など8ヶの映画団体と共に<天安艦プロジェクト>上映中断に対する声明と対応方針を明らかにする計画だ。 これとは別にネチズンたちはツイッターなどを中心に上映館の拡大を要求し映画を応援している。
<天安艦プロジェクト>は現在、ソウル アートナイン、インディスペース、アートハウスなどをはじめ独立・芸術映画館を中心に全国10館余りの劇場で上映されている。 8日には複数の上映館で売切行列が続きもした。 チョン監督は「マルチプレックス上映館がなく、封切館数も大幅に減ったが、今回の事態がより一層多くの観客を劇場に引き込む大きな刺激剤になるだろう」としつつ「もし映画が劇場にかけられない最悪の状況になろうとも、観たい人々には必ず映画を見せる。 私たちは観客の力を信じる」と話した。
文・写真 ホン・ソクチェ記者 forchis@hani.co.kr