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[社説] ‘民主’なしで‘漢江の奇跡’だけ強調した大統領

登録:2013-02-26 17:36 修正:2013-02-26 23:14

 大統領の就任辞は新政府5年の国政目標と原則、ビジョンをまとめて盛り込んだ国政運営の青写真だ。朴槿恵大統領は昨日、第18代大統領の就任辞で経済復興、国民幸福、文化隆盛の三つをキャッチフレーズとして提示して "富強で国民皆が幸せな大韓民国を作ることに全てを捧げる" と誓った。

 頻繁に登場した言葉は国民、時代、幸福、創造などの単語だ。特に父親の朴正熙・元大統領時代を象徴する‘漢江(ハンガン)の奇跡’という表現を四回も使っている。反面、民主、統合、改革、人権などの単語は特別登場しなかった。 朴大統領の国政運営の強調点がどこに置かれているかを想像させる部分だ。

 朴大統領が念を押した‘国民幸福’は実際に朴正熙時代に生れて今日まで続いた‘国家主義’の弊害を克服する問題でもある。 "国家がいくら発展したとしても国民の暮らしが不安なら何の意味もない" という朴大統領の判断は国政運営の枠組みを国家中心から国民中心に変えなければならないという時代的な当たり前の事を反映している。しかし就任辞を見れば‘国民幸福’に到達する過程を再び朴正熙時代のやり方に頼ろうとしているのではないかという疑問を消し難い。

 朴大統領が "成せばなるという国民の強い意思と底力" などと論じ、‘第2の漢江の奇跡’をとりわけ強調したことからしてそうだ。 経済民主化公約の後退論を払拭するために、経済民主化を創造経済とともに経済復興の要素として取り上げて論じはしたが、やはり主眼点は創造経済に置かれている。父親が政府主導の突貫成長で漢江の奇跡を成し遂げたように、新設された未来創造科学部などを主軸に新しい経済跳躍を成し遂げるという強い意思を表わしたわけだ。

 新しい政治の実現は大統領選挙期間中ずっと熱い話題の一つだったが、就任辞では全く言及がなかった。‘国民大統合の集い’という就任式の名称とはうらはらに、国民統合と和解、不偏不党に向けた意志の表明もなかった。内閣と大統領府の人選などで、今更統合と言い出すのも面はゆい側面もあったのだろう。

 何より就任辞で最も残念なことは民主主義と人権などに対する言及が全くなかったという点だ。彼女は "産業化と民主化を同時に成し遂げた偉大な成就" を挙げて"ドイツの鉱山" "熱砂の中東砂漠" 等に敬意を表しただけで、民主化のために血を流した歴史に対してはその功績をたたえなかった。当然、当面の民主主義と人権向上問題に対する言及もなかった。民主は軽視され経済復興だけが強調される時代に再び対面したようで苦々しい思いがする。

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/575416.html 韓国語原文入力:2013/02/25 19:59
訳T.W(1201字)

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