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[朝の陽射し] ビッグマックセット戦争/チョン・ジェグォン

登録:2012-06-21 07:52

原文入力:2012/06/19 19:27(1738字)

←チョン・ジェグォン論説委員

 おかしい。 声が聞こえてこない。 6月なら、それも6月が10日しか残っていない時期ならば、時間当り最低賃金を巡る労働界と財界の力比べの声が騒がしくなければならないはずなのに、とても静かだ。 言論が最低賃金交渉に知らぬフリをしているのか?

 事情を調べてみるとこうだ。 民主労総と韓国労総は6月末が2013年度最低賃金を定めるデッドラインなのに交渉テーブルに座ることを拒否中だ。 政府が交渉の一つの軸である公益委員を労働界と相談せずに一方的に決めたことに対する反発だ。 ややもすれば最低賃金決定過程から排除される危険性を甘受して背水の陣を敷いたのだ。 労働界は雇用労働部長官の謝罪と再発防止などを要求している。

 労働界の‘場外闘争’にはそれ相応の理由がある。 労働界は公益委員を‘中立地帯’に置かなければ最小限の成果も期待しにくいと見ている。 労働界と財界が平行線を走る時、最低賃金決定の鍵を握る公益委員は事実上、財界要求に近い結論を下したりしてきた。 昨年、2012年度の最低賃金4580ウォンを決めた時も表決には公益委員らと財界側の使用者委員だけが参加した。

 労働界の不参加で最低賃金委員会は去る14日の6次全員会議まで空転を繰り返した。 それでも財界が急ぐ兆しは全く見られない。 労働界が例年どおり‘定額給与の50%’を基準とみなして、2012年より22.3%引き上げた5600ウォンで意見を集約したこととは違い、財界はまだ交渉カードさえ出していない状態だ。 ただし2012年度0%、2011年度0%、2010年度-5.0%などを提案した先例から推し量って、最低賃金凍結を出発点とするものと見られる。 それに経済も難しいのに2桁の引上げ率とは、最低賃金未満の労働者が200万人もいるのに低賃金労働者がさらに量産されるとかいう古いレパートリーを歌いまくることが明らかだ。

 だが、我が国の最低賃金は絶対的にも相対的にもあまりに低い。最低賃金委員会が調査した昨年の単身勤労者の月平均生計費は141万748ウォンだ。 今年の最低賃金だけ稼いだとすれば308時間も仕事しなければならない金額だ。単純に計算すれば、休日すらなしで毎日10時間ずつ仕事をしてこそ手にすることができる。最低賃金だけで月平均生計費を充当できないわけでわが国の水準がその程度だという話だ。

 外国と比べてもみすぼらしいばかりだ。 わかりやすく最低賃金でマクドナルドのビッグマック ハンバーガーをいくつ買えるか調べてみよう。 最低賃金の購買力水準を間接比較できる。 英国<エコノミスト>が去る1月、ビッグマック指数を発表する際に提示した価格を見れば、韓国では4580ウォンでビッグマック(1個当り3700ウォン)を1.2個購入できる。 ところがコーラ一杯とポテトが付いたビッグマック セット(5200ウォン)は不可能だ。 反面、米国では最低賃金7.25ドルでビッグマック(1個当り4.20ドル) 1.7個を、日本では731円でビッグマック(1個当り320円) 2.3個が買える。 フランスの場合には9.22ユーロでビッグマック(1個当り3.49ユーロ) 2.6個を買える。

 最低賃金交渉は労働界の生存権争いだ。 最低賃金制は‘勤労者に対して賃金の最低水準を保障し、生活安定と労働力の質的向上を試みる’(最低賃金法第1条)ことが目的であっても、労働界では‘最小限の生存’が目標になって久しい。 時間当り4580ウォンの賃金で生活安定や労働力の質的向上を云々するのは面はゆいことだ。 一時間仕事をしたら他国のように最小限コーラ、ポテトと共にビッグマック一個は買って食べられなければおかしくないのか? 今回の最低賃金交渉を個人的に‘ビッグマック セット戦争’と呼んで見守る理由だ。

チョン・ジェグォン論説委員 jjk@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/538528.html 訳J.S