原文入力:2012/05/08 19:38(1928字)
←イ・ジョンソク前統一部長官
私たちは南北間に常に発生する葛藤と軍事的紛争に疲れている。 最近数年間、北韓軍の延坪島(ヨンピョンド)砲撃、核実験、ロケット発射などを体験しながら多くの怒りがある。それで南北が他人同士のように最初から気を遣わずに生きるのが良いのではないかと話す人々も多い。 いっそ相手方を統一や和解の対象と思わずに別々に生きれば良いのではないかということだ。 これよりはやや穏やかだが、北韓が南韓に対して友好的な立場になるまで、北韓を静かに無視して生きれば良いという人々も結構いる。 実際、国際政治学にはなんらかの問題が解決される条件が造成されるまで、静かに相手方を無視する方法という意味である善意の無視(benign neglect)という言葉がある。 これは相手方の失敗と没落を待って無視作戦を展開する悪意の無視とは異なる。
それでは南北関係で善意の無視政策が可能だろうか? 不可能だ。 北韓が南韓に対して同じように善意の無視政策を用いない限りは成功できない。 北韓の人々は南韓よりはるかに統一指向的な文化と規範の中で生きてきた。 彼らの頭の中で南韓は‘他人’ではない。 彼らはたとえ南韓よりはるかに貧しくとも南側の全てのものに対して競争心理、あるいは統一の相手としての特別な関心を持っている。 だから統一を主導する能力を喪失した後には南韓の吸収統一意図を絶えず疑っている。 このような北韓の対南関心と憂慮は南北関係で挑発、対話、支援要請など多様な形態で現れる。 私たちが北韓を無視して関係なく生きようと考えても、それはできない相談だ。
事実、北韓に対する善意の無視政策は南韓の立場からも実現が難しい。そうするならば北韓と対話・協力をしないだけでなく、正当な名分があっても北韓を刺激して挑発を誘発しかねない行動を自制しなければならない。 例えば北韓の攻撃に備えて実施する韓-米連合軍事訓練も中断しなければならない。 そうでなければ北韓が南韓に対して好戦的に反応するだろうし、そうなれば善意の無視政策が失敗したという意味になる。
外国人の目にも南と北は切り離すことのできない存在として認識されている。 大韓貿易投資振興公社が2011年11月に‘韓流および国家ブランド’に関するヨーロッパの若者たちの認識を調べてみるために‘韓国と言えば一番最初に思い浮かべるイメージはが何ですか’と尋ねる世論調査を実施した。 北韓という答が全体の9.1%で最も多く、戦争が5.4%にもなった。 2位のK-POPが6.9%であった。 冷戦を経験していないヨーロッパ新世代の韓国に対するイメージの中にも北韓がこのように深く溶け込んでいる。 推測してみれば多くのヨーロッパ人が韓国を思い浮かべる時、概して何番目かには北韓を連想すると見なければならない。
2004年にサンフランシスコ駐在韓国総領事館がカリフォルニア州民を対象に世論調査を行った。 韓国に対する全般的な認識を尋ねる項目に対して27%が‘否定的’と答えたが、その理由を尋ねると1位が‘核兵器開発および独裁体制’(20%)であり、2位が‘韓国の周辺情勢不安定’(14%)だった。 多くの米国人が南韓と北韓を混同していて、敵対的な南北関係が醸し出す情勢の不安定のために韓国を嫌っているという話だ。
このように私たちは南北韓は違うと強調しているが、第三者の目に南韓、北韓は区別しにくい一つの実体、あるいは連結体として認識されている。 実際にも北韓が私たちを‘他人’としては見ていないが、私たちも北韓を無視して生きる立場にはなりえない。 強硬策で北韓の習癖を直すこともできない。 これは南北関係を最悪に陥れ韓半島情勢を不安にさせた李明博政府の対北韓政策を通じて立証された。
それなら方法は一つだ。 積極的に北韓と関係を結んで行くことだ。 さらに今後は北韓と協力して韓半島経済時代を切り開くことが国運開拓の道になる。 地下資源協力一つでも南北は数百億ドルの富を創り出すことができる。 南韓がそれを拒否すれば中国が代ることになっている。 そうだから北韓との対話と協力を追求し、南北対決状態を終息させ共同繁栄の時代に出て行かなければならない。 南北が別々に生きられないならば難しくとも一緒に暮らす道を模索することが当然の道理だ。
イ・ジョンソク前統一部長官
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/531856.html 訳J.S