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[世相を読む] 社会的災害を治療しなければならない/キム・ドンチュン

登録:2012-05-08 08:39

原文入力:2012/05/07 19:28(1720字)

←キム・ドンチュン聖公会(ソンゴンフェ)大社会科学部教授

不平等解消 スローガンだけでなく
死の‘境’に立っている人々に
先ず救いの手を差し伸べなければ

 双龍(サンヨン)自動車解雇労働者中22人が自殺・病気などの理由で死亡した。 2009年当時、双龍車解雇者中、精神健康が正常な人が7%に過ぎないという報告書が出てきた時から十分に予告されたことだった。 さらに衝撃的な報告もある。 2006年から今年4月までの6年間、KT在職・退職労働者204人が病気や各種理由で死亡したという。 癌・突然死などの病気が一次死亡原因だが、その間KTが構造調整過程で会社側が労組員を島流しにしたり、交換手として仕事をしていた50代の‘おばさん’たちを電信柱に登らせたりするなど労働者に耐えがたい苦痛とストレスを加え退社を誘導したことは広く知られた事実だ。

 自殺・病気などによる死亡はきわめて個人的なことと見る傾向がある。 もちろん死亡の要因は単純ではない。 しかし特定会社・階層の死亡率が他の労働条件や年齢帯、他階層の人々の平均的な死亡率より顕著に高いならば、そして彼らの死亡原因が類似の条件によりもたらされたことが確認されるならば自殺と病気による死亡はもはや個人的なことでないだろう。 デュルケームは<自殺論>でその社会の精神的状態が自殺の頻度を決めると話し、ウィルキンスンは不公平な社会が人々を肉体的精神的に病気にかからせると話した。 自殺と病気が社会的原因に左右されるという事実はすでに多くの学者が疫学調査を通じて立証してきた。 韓国の双龍車やKTの死亡者数の多さは、すべての資料を総合してみる時それを誘発した確実な要因が存在する。 不当解雇と解雇圧力による裏切られ感、怒り、挫折、人間的侮蔑感、信頼喪失、社会関係断絶、過度なストレスなどがそれだ。

 ところで直ちに自殺や病気で苦しんではいない韓国人の相当数も精神的に非常に深刻な状態にある。 最近1年間でわが国国民の130万人がうつ病を経験し、特に女性の場合、低所得層が中上位層より3倍もうつ病比率が高いことが分かった。 要するに競争に押し出されて失職と貧困の奈落に落ちている韓国の貧困層は当面の治療が必要な重症患者だ。 社会が彼らを死に追い込んでいるというのに手遅れの勤労監督強化などの処方に何の意味があるのか? 暴力の研究者であるギリガンは自負心や尊厳性、自尊心を失って生きていくよりは相手を殺したり身体障害者にしたり自殺する方がよりマシだという考えがあると語る。 今日の学校暴力、猟奇的犯罪は私たちの社会体が重病にかかっている証拠だ。

 ウィルキンスンの研究によれば肉体・精神健康を回復できる最高の治療剤は不平等の解消だ。 社会構成員の99%が敗北感と挫折感を感じる社会が正常に作動すると期待すること自体が話にならない。 すでに社会的災害の性格を持つようになった労働者の自殺とストレスによる病死を依然として個人的問題と考える支配談論とそれに基づく欺瞞的処方が変わらない限り、自殺と暴力はますます増えざるをえない。 家族、隣人、組織が面倒を見てくれた過去にはストレスが自殺につながる通路を塞いでいたが、今はもう世話を見てくれる組織はなくなった。 労組、市民団体も手をこまぬいている。

 社会的治療はこの憂鬱な資本主義韓国の最大の課題になった。‘病気にかかった人々の’社会、すなわち‘病気にかかった’社会で、民主主義、正義、人権の叫びは虚しいばかりだ。 社会関係が崩れているというのにどんな批判、代案が共鳴を得ることができようか? だから今や労働運動、社会運動、政界も構造改革(不平等解消)だけを声を高めて叫ぶのでなく、死の境に立っている人々にまず暖かい救いの手を差し伸べなければならない。

キム・ドンチュン聖公会(ソンゴンフェ)大社会科学部教授

原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/531641.html 訳J.S