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[世相を読む] メリトクラシー/キム・ドンチュン

登録:2012-03-27 08:44

原文入力:2012/03/26 19:17(1745字)

←金東椿(キム・ドンチュン)聖公会大社会科学部教授

学歴・学閥に集約される‘実力主義’が
全社会にろ過されずに受け入れられる
すさまじいメリトクラシー社会、韓国

 民主統合党はチョン・テイルの妹であるチョン・スンオク氏をはじめとする5人前後の労働界代表者を比例代表当選可能圏に上げた。 親労働経済民主化の意志を盛り込んだという評価がある。 しかし、これが果たして労働者の大きくなった影響力を示していると言えるだろうか? 18代国会でセヌリ党は貧民運動家出身を比例代表1番に上げたことがある。 それがセヌリ党の貧民親和性を示していると信じる人がいただろうか?

 民主党は今回36人の法曹人を公認したが、公認者215人の17%に達する。 セヌリ党の29人を合わせれば両党が公認した法曹人が全員当選すれば、我が国人口全体の0.034%に過ぎない法曹人が国会の5分の1を占め、何と588倍も過剰代表されるという。 ところで労働者はどうか? 巨大与野党の比例代表や地方区候補として公認された労働運動出身者をみな合わせても10人にもならず、彼らの履歴を見れば実際には‘良い大学’を出てきた人々が多数を占めている。 労働者が我が国人口の3分の1程度になると見れば、労働者は両党で10分の1以下に過少代表されるわけだ。 18代国会もそうだったが、今回も結局学閥がない労働活動家出身議員はほとんど探せないだろう。 野党としては地域に労働者を公認したとも適当な人物がいないと言うだろう。 もちろん地域政治の豊富な経験と知性と社会運動の履歴を持つ労働者候補がほとんど見当たらないのも事実であり、さらには現場の労働者自身が同僚労働者候補を支持しないことも事実だ。

 民主化25年はすなわち民主労組運動25年だ。‘民主労働党’が院内10議席を得たことがあり、統合進歩党・進歩新党が現在活動しているものの、その代表はほとんど‘良い大学’を出てきたエリートらで、現場で専門分野に強い労働者が進歩政党の指導者になるケースはあまりない。 このように見れば、韓国政治は‘労働者代表’であることを自任しても実際には学閥エリートの合作による支配ではないかという気がする。 保守も進歩もこの点では差がない。 労働者を権力圏から完全に排除しておいて、彼らが自ら力を育てられる条件も作らずに進歩とか改革とか叫んでいる格好だ。事実、労働者自身も司法府のきわめて偏向的な判決や退職後一年間に数十億ウォンを稼ぐ弁護士の収入に是非を論じることなく、自分の子供も判検事・弁護士にしたがっている。 頭が良くてその場に行く能力があったので、そのようにしても良くて、その程度の待遇を受けてもかまわないと考えているのだろうか?

 このように見れば韓国は本当に学歴・学閥に集約された‘実力主義’がすべての社会にろ過されずに受け入れられるすさまじいメリトクラシー社会だ。 この点で韓国社会は民主化以後、いや日帝強制占領期間と軍事独裁時期以後何も変わらなかった。 財閥の支配よりさらに恐ろしいのがメリトクラシーだ。 その実力・学歴・学閥というものは何か? 一生休むことなく働いても家の一軒も用意できない労働者が、果たして能力がないためにそんな風に生きているのか? メリトクラシーはすべての社会を競争とストレスに追い詰める私たちの社会の重病だ。 学閥の良い人が代表である‘進歩政党’が執権する社会ではない、労働者が私教育に没入しなくとも良い社会が良い社会だ。 私たちの社会の過剰教育熱と学校暴力、青少年自殺の相当部分は労働蔑視・実力主義が作り出したものだ。 最近、進歩新党が脱学閥を宣言し公認候補者の学歴を一切掲げないことにしたといううれしい便りが聞こえる。 政府と企業が高卒者をさらに多く採用し、汗を流して働く人が尊重される社会を作ろう。 それこそがこの時代の進歩の道だ。

キム・ドンチュン聖公会(ソンゴンフェ)大社会科学部教授

原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/525270.html 訳J.S