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[なぜならば] 私の名前はクロムビ、クロムビ/ムン・キュヒョン

登録:2012-03-15 07:31

原文入力:2012/03/14 19:35(4305字)

←ムン・キュヒョン神父が去る9日クロムビ岩発破現場に進入して連行されている。 済州(チェジュ)/パク・スンファ<ハンギョレ21>記者

 私の名前はクロムビ、クロムビ。警察が尋ねた。 名前は? また尋ねた。 名前は? 一緒に連行された英国の平和運動家 エンジ ジェルターは黙秘権を行使しながらも名前を問う質問にはきちんとそうやって答えた。 私の名前はクロムビ! 済州国際平和大会に参加して江汀に一家月間留まり住民たちの苦痛と願いに共にすることを約束した彼は徹底してその言葉通りに生きている。 業者職員らと警察が振るう暴力を全て体験し連行されて留置場に収監されることを繰り返している。

 エンジ・ジェルターは2012年ノーベル平和賞候補に上がっている。 戦争と核兵器拡散び反対する活動をずっと続けてきた彼は逮捕と収監経歴だけでも100回を越え、済州江汀で今も経歴を上積みしているところだ。 彼は地球が描かれた青いマントを常に持ち歩き、自身を‘世界市民’と呼ぶ。 だからクロムビを殺すことは自身を殺すことであり、済州が戦争基地になることはすなわち英国にある自身の村が戦場になることと違うところのない痛みであり悲劇だとっ語る。 だからこそさらに多くの人々が江汀にきてクロムビに上がって地球市民として行動しなければなければならないと促す。 地球上すべての生命が互いに連結されているためだ。 私たち皆が一つに連結された神様の被造物で、神様のDNAを分け合った地球生命体であるためだ。 私たちの名前がクロムビ、クロムビだ。

 私たちは単に数十数万年かかって形成された溶岩団塊の平らな岩クロムビとその近海を守るために戦っているわけではない。 それだけでも充分であふれるほどに正当な理由となるだろうが、クロムビを守らなければならない理由は数え切れないほど多い。 平和により戦争と武力に勝つこと、反民主的手続きに抵抗して民主主義を守ること、対決と戦争の歴史を乗り越えて傷を治癒すること、少数地域民の共同体の歴史と文化、権利と尊厳を守ること、等々私たちが立てようと思う神の国の義に徹した価値の全てが、あまりにも残忍に暴圧的に否定されているためだ。 クロムビはその全てのものがこめられた時代の兆候で象徴、私たち皆の名前になったのだ。

 まもなく4月3日、3万人余りの良民が虐殺された済州4・3悲劇の日をむかえる。彼らが流した血と死でも、更にまだ渇望するというのか。 これでも足りずに64年の歳月が流れた今、更に多くの済州住民たちを戦争基地の人質、銃弾避けに追いたてようというのか。 永い歳月、済州の人々は‘記憶闘争’をしてきた。 4・3悲劇はアカの暴動として罵倒されたために恐怖に真っ青になった地域民はあたかも何事もなかった風に、関係ないという風に記憶喪失を選んだし、虐殺の主犯と従犯は自分たちの過ちがばれることを恐れ権力を振り回して痕跡を消して隠すことに没頭した。捏造して歪曲して‘官製の記憶’を作り出した。 そうしたために生き残った人々は必死に自分たちの本当の記憶を縛りつけてきた。 流れる歳月、消える人々の中でも死力を尽くして忘れないこと、それが無力な人々の最後の抵抗、新たに始めた闘争だった。 そのすさまじい記憶闘争が、ついに2005年に済州を‘平和の島’として宣言させた。

 私は江汀の村を訪れる人に、なぜこちらに海軍基地を作ってはいけなくて、平和の島として守らなければならないかを説明するために江汀マウルから近い西帰浦市(ソギポシ)、大静邑(テジョンウプ)にあるアルトゥル飛行場を案内したりする。 日帝が作った戦争基地だ。 済州のあちこちにこのような跡が残っている。 島だからと言って済州が日帝の植民侵奪を避けたわけではなく、むしろ日本と近かったせいでより一層苛酷だった。 日帝は第2次世界大戦末期になると日本本土が陥落する場合、最終抵抗地として済州道を設定して済州全域を要塞化する計画を立てた。 4・3平和博物館にあるその作戦地図にはぞっとした。そのような日帝植民地の歴史を経験した済州は解放後には米軍政統治下で彼らの黙認と同調、指揮の下に4・3良民大虐殺まで体験しなければならなかった。 オルレ道を歩く時、自然景観と共にこのような済州の歴史もまた、目に焼き付けて省察することを望む。

 日帝と米軍政に続いて、今度は済州の歴史に中国が登場した。 総選挙政局だと見ると今一度思想論争カードとして江汀平和運動を叩いて‘北風’が効果が無いと見ると今度は‘中風’で大騒ぎだ。 済州近海に出現する中国海軍に対抗するために江汀海軍基地が必ず必要だという論理だ。 率直に言えば韓国と中国が相手になるのか? 中国が軍備を拡張すればわが国も軍備を増やし続けなければならない。 このような無限軍備競争に韓国が耐えられるのか? 税金を絶えずかき集め国民には窮乏を強要して、国家財政の全てを軍備にはたき入れたとしても底の抜けた瓶に水を注ぐようなものであろう。 その上、経済交流が最も多くなされる中国と対決して戦争をして、いったい何を得ることができるのか? 脳に中風でも入らなければ考えられない論理だ。江汀海軍基地建設の論理はソ連没落後の新しい対決国家として中国を最も意識している米国の海軍基地だということを、その戦争の銃弾避けとして済州を前面に出すことだと告白することに他ならない。

 悪い。 本当に悪い。 悪の悪だ。 すさまじく苦痛な歴史を歩んできて、少しずつ治癒を始めた済州道民に再び戦争基地を押し付けて火薬庫を作るために没頭する彼ら、済州近海を紛争地域にする代価として権力と物欲、貪欲を満たそうとしている彼ら、その悲しくてつらい歴史の中でも屈することなく美しく村共同体を守ってきた優しい人々を陸地の鎮圧警察を呼び入れて今一度このように無慈悲にメッタ切りにして踏みにじる彼ら、本当に残忍ではないか。

 海軍基地フェンスに穴をあけた。 ‘生命の門’の絵をかけて、そこを突き抜けてクロムビに入った。 昨年9月2日、海軍が電撃的に住民たちを鎮圧し、村からクロムビへ至るすべての道をフェンスで塞ぎ、住民たちは深刻にクロムビの痛みを感じてきた。 彼らの目標は‘全てが終わった’というあきらめと自暴自棄、心理的降伏であっただろう。 心が崩れれば全てが崩れることを知っているからだ。しかしとんでもない!

 ‘生命の門’が開かれる象徴意識を通じてクロムビへ入った私たちは海軍基地中断、クロムビ発破中断を叫び、折られて踏まれて、ずるずると引きずられて出てきた。 結局キム・ジョンウク神父とイ・ジョンフン牧師が‘財物損壊罪’と‘再犯憂慮’を挙げて拘束される初めての事態が発生した。 お二人の後に続くぞと宣言した牧師が今日もフェンスに穴をあけたが、彼らは訓戒措置をされた。 こちら江汀の公権力は初めから今まで一貫して好き勝手に‘法なしで生きる’。江汀は彼らの王国、無法天下の軍政治下だ。

 それでも江汀は江汀を越えた。 ‘記憶闘争’は新しい歴史を作り出している。 悲劇の歴史を絶対反復させないという決意、江汀の平和とこの国の平和を守るために、全世界の平和を守るために、数多くの人々が入って行動していることをはっきりと見よ。 おばあさんが孫を負ぶって戦闘警察官を捕まえて訴えて、シワだらけのおじいさんが体一つで抗議して連行されていく。 枯れ葉のように小さなカヤックに乗ってクロムビに向かう。 海上警察がカヤックを阻んで立つと身一つで海に飛び込みクロムビに向かう。

 フェンスは突き抜けて、鉄条網は切って、車の前に横たわる。 爆破を監視するために吹雪のクロムビで夜を明かし、掘削機にのぼり、命を賭けることも辞さない。 すべての公権力が一丸となって陵辱し殴りまくるが屈しない。屈することはできない。 明け方からいつも鳴りひびくサイレンの音と連日の示威で疲れ果てても、罰金を出して閉じ込められて病院への搬送を繰り返しても止まないこの涙ぐましい行列を見ていていたら、三歩一拜・五体倒地がかわいく見える。 ヤン・ユンモ先生、獄中ハンスト40日に向かう。 クロムビと私は一体だとして発破が始まった以後は塩と水まで断った。 断食を止めて下さい…。 この言葉さえかけることはできない。 彼の真心を知っているから。

 どんな政権でも見られなかった連行事態を体験して多くの困難も共にする修道女から聖母さまのかたい意志と大きい心を読む。 特に拘束されたキム・ジョンウク神父をはじめとして長時間こちらで献身しているイ・ヨンチャン神父、パク・トヒョン修道士、キム・ソンファン神父などイエズス会神父の皆様に心から感謝する。 すでに何回も警察署留置場ツアーをし、懲役刑・罰金刑を受けたこれらの神父の皆様は発破を阻むために火薬がさく烈する現場に直接身を投じもされた。 映画<ミッション>で最後まで原住民たちと共にして最期をむかえたガブリエル神父の後輩だ。 原住民を保護して守ろうとするイエズス会神父に対して否定的意見を作って追放させるために法王庁が派遣した主教は報告書にこのように書いた。 「神父たちは死んだが永遠に生きるだろうし、生きてはいるが死んだのは私自身だ。」

 ‘私の名前はクロムビ’を叫んだエンジ ジェルターは昨日も先頭に立って鉄条網を切り留置場に行った。 彼は1999年6月、他の活動家二人と共にスコットランドの核潜水艦内の実験室に潜入し、各種什器を湖に投げてしまった。 裁判所は彼に無罪を宣告した。 ‘未来のより大きな害悪を予防しようとする行動’であることが考慮されたという。

 生真面目な人で、その方と共にする四旬節だ。 キリストの受難、キリストの死、キリストの愛、キリストの平和…、江汀にこのすべてのものがある。 闇は光に勝てない。 偽りは真実に勝てない。 平和のために働き迫害を受ける人は幸せだ。 悪人、悪い人々が草のように芽生えて咲いたとしても、結局は滅びる定めになっている。 生命であるキリストの復活がすぐに目の前だ。 江汀、君はこの国で一番小さな村だが君から世の中の全世界の平和がすでに来つつある。

ムン・キュヒョン神父

原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/523504.html 訳J.S